第1話 女の恋は時に怨みになる


「とんでもございません!あの烏間様。何か僕達夫婦が手伝える様な事があるなら何でも構いません。是非とも烏間様のお力になりたいのです。」


正直言って除霊の仕事に関しては手伝える様な事がないのが、現状なんだけどな…


あっ……やっぱりあったわ。うん、折角だし聞いてみるとするか。


「では、お言葉に甘えて、ご主人に1つ聞きたい事が。」


「何でしょうか?」


「この地に゙アイゾウ湖゙と言う湖は知っていますか?」


「はい。知っているも何も、ここの地元では誰もが知っている桜の花見の隠れた名所ですから。」


さっき遥ちゃんが言っていたアイゾウ湖ってのは桜の花見の隠れた名所の様だな。


「なるほど。しかし、アイゾウ湖とは変わった名前ですな。そのアイゾウ湖とは漢字で書くと、どんな漢字ですか?」


「はい。アイゾウ湖とば愛゙ど憎しみ゙を取って愛憎湖と呼ばれています。」


「何故に愛と憎しみ何ですか?ご主人。」


何かが俺の頭で引っ掛かり始める。もしかしたら…



そして愛憎湖の話を俺に聞かせてくれた。


その昔。団子屋の看板娘は1人の侍に恋に焦がれていた何処にでも居る町娘。しかし、時代は江戸時代で身分の違いもあり、それは夫婦(めおと)にはなれない事は分かりきっていた。


しかし偶然なのか運命の悪戯なのか、団子屋の看板娘が恋に焦がれていた侍もまた、団子屋の看板娘に恋をしていた。


もし時代が時代なら、このまま夫婦になれていたのかかもしれないが…


しかし侍には両親の強い進めによる許嫁が居た。侍の許嫁は、侍にベタ惚れだったが当の本人は全く興味がない。


そして侍の許嫁はいつしか団子屋の娘を憎む様になった…


コイツさえ居なければと…


しかし、ある日のこと事件が起きた。侍は地位も名誉も職も全てを、なげうつ様に団子屋の看板娘と駆け落ちをしたと言う。


侍の許嫁は血眼になりながら言ったそうだ。



『あの女だ。あの女が私を愛する人を唆し駆け落ちをさせたんだ』と…


そして許嫁は家来を総出で侍と町娘を探し出せと命令した。


そして侍と町娘を探すのは容易く見付かり許嫁は家来を連れて、お縄にした侍と町娘の元に向かった。


そして許嫁は即座に侍の縄を解かせたが町娘だけは違った。許嫁は町娘に対して日頃から恨み、憎しみ、妬んでいたのか町娘に酷い暴言を吐き捨てる。


『卑しい女狐。この泥棒猫。ゲセンな色欲。』


そして数々の暴言を吐いた後に許嫁は家来の脇差しを抜き町娘を刺し殺そうとした時に…


許嫁が刺さしていたのは…


愛する侍だった…


侍は町娘が刺されようとした瞬間に割って入り町娘を庇い許嫁に刺されてしまった。


許嫁の顔や着物には愛する侍の鮮血を浴び許嫁は狂った様に泣き叫ぶ。


そして侍は致命傷を負い死亡。町娘は、その後。許嫁の家来達によって孕まされ、侍の後を追う様に湖に投げ込み水死。


その後。許嫁の精神はまともでは無くなり突然、家を飛び出し行方を眩ましてしまう。


そして数日後。町娘が飛び込んだ湖に侍の許嫁の水死体が発見され、湖の名前は愛に生きた女と憎しみに生きた女が死んだ場所として『愛憎湖』と呼ばれた。


「って訳なんですが…」


「そうですか。有り難うございます。助かりました。」


「いえいえ。では僕は失礼します。」


そう言った後に俺は家の中では大事な3ヶ所に足を運ぶ。大事な3ヶ所は『トイレ』『風呂場』『洗面所』だ。


それは何故かと言うと幽霊と言うのは水のある場所によく集まるからだ。


特に風呂場と洗面所はな。だから除霊師は念入りにこのトイレ、風呂場、洗面所は写真をどの場所より撮るんだ。


だいたい一部屋に4枚取るとするならこの3ヶ所は倍の写真を撮る。それくらいに幽霊が集まり易いんだが……



俺は今、荒井さん夫婦が用意してくれた部屋に斑と一緒にデジカメを見てるが…



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る