第1話 女の恋は時に怨みになる


「烏間様。奥様に遥。夕御飯が出来ましたよ。」


「えぇ。わざわざ有り難うございます。」


「ごはん!ごはん~ッ!」


凪子さんが、わざわざ呼びに来てくれたが何故だか先程まで優しい笑顔をしていた遥ちゃんは急に暗い表情をする。


「私は…良い…自分の部屋で食べるから、お母さん持ってきて…」


「…そう。」


凪子さんは素っ気なく遥ちゃんに返した後に俺と斑は遥ちゃんの部屋から出て居間へと戻っていく。


「ごめんなさい。烏間様。遥は、ここ1ヶ月ほどずっと私達を避けているのです…でも…」


「知っていますよ。遥ちゃんは娘さんは、とてもお利口で何処にでも居る普通の女の子ですよ。」


「はい…」


「あの奥さん。」


「何でしょうか?」


「食事の後に家の中にある部屋を全部写真を撮りたいのですが宜しいでしょうか?」


「えぇ。私は構いませんが…」


「写真を撮ることで普段から見えない物を写し出して、写真に写る物から何か掴める事も少なくはありませんので。」


「分かりましたわ。後ほど主人にも私からお話をしておきます。」


「有り難うございます。」


俺が言いたいのは心霊写真と言う奴だ写真やビデオカメラは録画によって視覚的な記録をしてくれる。


だから俺や斑がどんなに霊感を持っていて感知しようと人間には視覚的な死角があるんだ。


心霊写真に写る物はバラバラだ。何かが写り込んだり、自分の身体の一部が消えたりするのが大きなパターンだ。


だけど、そのパターンを分ければ、それは膨大な数だ。それを見極めて幽霊の種類や危険度、写真を撮ったり撮られたりした人間の吉凶になる手掛かりになる。




俺と斑は荒井さん夫婦と4人で凪子さんの手作りを振る舞って貰い、美味しく頂いた後にご主人の政夫から写真の許可を得て、今は玄関の外で食後の一服だ。


「ん~。可笑しいのぉ。」



「確かにな。あの竹櫛からは確かに俺の霊感が感知したんだけどな。」


「いや。あの揚げ出し豆腐に使っていた醤油がかなり、さっぱりしてての。」


「そっちかよ。」


相変わらず500年も生きていれば楽しみが食事しかない食い意地の張った化け猫だ。


「揚げ出し豆腐も気になるが確かに私からも竹櫛から霊の気を感じた。感じたのに、あっという間に消えて写真にも何も写らないし、あの娘の身体の一部が消えてもいない。」


「揚げ出し豆腐は気にしなくて良いからな。取り敢えず。まずは家の外から写真撮るぞ。」


「うむ。そうじゃな。」


俺は煙草の吸い殻を携帯灰皿に入れて俺と斑で二手に別れて、家の周りをお互いに反対方向からデジカメに撮っていく。


まずは家の全体が写る様にシャッターを押す。そして俺は東と南斑は西と北の位置から家の全体が写る様にシャッターを押す。


「どうだ斑?」


「ん~…撮った後も調べて見たが特に何も写らないし何も感じられんな。」


「同意見だな。次は家の中を撮ろう。俺は1階で斑は遥ちゃん以外の部屋の2階を頼む。」


「分かった。」


そして家の中に戻り俺は1階、斑は2階とまた二手に別れて写真を撮る。


玄関から廊下に階段。そして一部屋、一部屋に四方向に撮って行くとご主人の政夫さんと鉢合う。


「あぁ。ご主人ですか。」


「いやぁ。ここまで娘の為にしてくれるとは、やはり烏間様に依頼した甲斐が有りました。」


「いえいえ。コレも仕事の内ですから。」


「烏間様。何か分かりましたでしょうか?」


「そうですね。まだ確信は持てる訳ではありませんが言うなら…」


「言うなら?」


「尻尾が出てきて、その尻尾を掴めそうな所ですね。」


「おぉ!なんと。もう、そんな所まで辿り着きましたか!」


「いえいえ。自分の腕が無いのかもしれませんが予想以上に捗らず。」




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る