第1話 女の恋は時に怨みになる

コレは…随分と古い櫛かと思ったけど竹櫛じゃないか。


今の櫛の主流はプラスチックの櫛だけどプラスチック以前の櫛は竹を職人の手で丁寧に作られていた竹櫛だ。


この一本一本の櫛に職人の全神経を研ぎ澄まして丹精込めて作られ皿に素材が自然の物だから、地肌に優しい為に今では高級品だ。


だけど…何か引っ掛かるな。


「「…ッ?!」」


「どうしたの?オジチャンにお姉さん。」


「いや、何でもないよ。随分と価値のありそうな竹櫛だなって。」


「う、うむ。コレは中々の拾い物をしたのぉ。」


俺は取り敢えず斑とアイコンタクトを取ると斑も軽く頷く。


間違いない。俺がこの竹櫛を月明かりに照らした瞬間に寒気が走った。それは間違いなく斑もだ。


だけど竹櫛はほんの一瞬しか幽霊の気を感じなかった。


試しに少し尻尾でも掴んでやるか…


「なぁ。遥ちゃん。良かったらこの星空をバックにして写真を何枚か撮らせてくれないか?」


「えっ?別に良いけど。」


「そうだな。この辺が良いかな?」


「ここ?」


「そうそう。この辺だ。」


俺は遥ちゃんの立ち位置を指示する。俺が狙うのはデジカメであの竹櫛から何か写るか写らないかだ。


俺はデジカメのフラッシュをオンにして一枚。そしてもう一枚だ。


「オジチャン。ポーズ変えて良い?」


「あぁ。構わないよ。」


そして遥ちゃんは可愛くピースしてから俺はデジカメのシャッターを2回押す。


俺と斑は何か写ってないか見てみるが特に何も写らない。クソて確かに微かに幽霊の気を感じたのに何故?


「オジチャン。どう?」


「ん?あぁ。ほらよく撮れてるだろ?」


「本当だ!有り難うオジチャン!!」


ちきしょう…コレは俺と斑が思ってる以上に厄介な依頼になりそうだな…


すると遥ちゃんの部屋の襖から、ゆっくりと誰かが開けてくる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る