第1話 女の恋は時に怨みになる
何が言いたいのかと言うとだ。夜と言うのは孤独や悲しみや嫌悪を助長させるが為に悪霊や怨霊の負の感情が大きくなるのさ。
「なぁ、悠希。」
「今回の幽霊は悪霊や怨霊かのぉ?」
「どうだろうな…もし悪霊や怨霊なら取り憑かれた人はとっくに幽霊の餌食になってると思うな。だけど…」
「依頼の手紙を読んだが、あんまりノンビリとしていると、ただの憑き霊が悪霊や怨霊になりそうだの。」
「そうだな…出来るだけ早く成仏をさせるのが利口だな。」
そう言った後に俺はギアをチェンジしてアクセルを踏み荒井さん宅へ車を急がせる。
そして車を走らせて約4時間弱。カーナビを頼りに荒井さんの住所を検索して荒井さん宅へ到着。
俺と斑は車を降りると荒井さんの家から初老の夫婦が玄関先から出迎えてくれたのが分かった。
「お昼頃。お電話を致しました。烏間心霊探偵事務所の烏間悠希です。依頼主の荒井政夫さんと奥さんの荒井凪子さんですね?」
「はい。僕達夫婦が依頼主でございます。娘を救ってください。」
「烏間さん。どうか…どうか娘を!」
荒井さん夫婦は俺にすがる様に助けを求める。かなり顔がやつれている。無理もないか…ここ1ヶ月で大事な1人娘が激変したんだからな。
「荒井さん。ここ1ヶ月はとても大変だったでしょう。でも私が来たからには安心です。娘さんを必ず救い出します。」
「な、なんて心強い。烏間様がきっと遥をどうにかしてくれるぞ。」
「えぇ、貴方。きっと心優しい遥に戻してくれますわ。」
2人は安心しきったのか強張った表情が消えて何処にでも居そうな夫婦の顔になった。
恐らく普段はこんなに仲の良い夫婦なんだな。
この家族の笑顔を取り戻せるなら俺は…
すると誰からか知らないけど、かなり大きな腹の虫が居るようだな。まぁ、だいたい見当はつくけどな。
「アハハハハ…済まぬ済まぬ。腹が減ってしまった様だ。」
「おい斑。お前ねぇ。仮にもな…」
「良いんですよ烏間様。こんな田舎に何時間も掛けていらっしゃたのですから、お腹が空いて当然ですよ。」
「め、面目無いです。」
「さぁさぁ。古くさい家ですが僕達の家に上がってください烏間様。それと…烏間様の奥様も。」
「いや、コイツは妻ではなくて…」
「良いんですよ。そんなに照れなくても。こんな可愛らしい奥さんですから。」
「いや…だから…」
荒井さん夫婦は何を勘違いしているのか俺と斑が夫婦に見えたらしい。ってか実際に夫婦だったら、とんでもない年齢差結婚だな。
「ごっはん~ごっはん~」
「はぁ…」
俺と斑は取り敢えず荒井さんの家に上がらせて貰う。それにしても荒井さんの旦那さんは古くさい家って言ってたけど、とても古風な家だよな。
田舎で土地が安くて広いのか、かなり大きいし駐車場のスペースも広い。
見渡す限り田んぼとか畑ばっかりだけどな。
俺と斑は荒井さんの家の玄関で靴を脱ぐと、やはり娘さんの遥さんは相当夜中に暴れているのが分かる。
障子は全て破られ床もちょいちょい比較的最近なのか擦れている。何よりも雨戸が全て締め切られている。
壁にも殴った後なのか穴も空いているし部屋の扉も壁と同じ様に穴が開けられている。
そして俺と斑は案内をされるがままに畳の居間に案内されて適当に座る。
「どうぞ。烏間様。夕御飯が出来上がるまで暫く時間が掛かりますので、お茶でも飲んでいて下さい。」
荒井さんの奥さん凪子さんは俺と斑と旦那さんの政夫さんにお茶をテーブルに置く。
「そうですか。あの私とアシスタントで娘さんの様子が見たいのですが宜しいでしょうか?」
「構いませんよ。僕が娘の部屋に案内しよう。」
「有り難うございます。行くぞ斑。」
「うむ。」
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