第1話 女の恋は時に怨みになる
俺は冷蔵庫からアイスコーヒーと牛乳を取り出してコップに入れながら煙草を口にくわえる。
「今月の除霊の依頼は何件かの?」
「……」
コイツ。痛い所を突いてきやがった。さっきも言ったけど除霊の依頼はまちまちで有るときは本当にあるけど、無いときは全く無いんだ。
「ふぅ…全く。あの古くからの生業にしてる゙烏間゙の名が泣いてしまうな悠希。」
「うっ…」
俺は口にくわえた煙草を不覚にも落としてしまう。斑は悪意に満ちたニヤニヤと笑いながら俺を見てくる。
「全く。先月も除霊の依頼が無かったのに今月も除霊の依頼が無ければ来月も節約生活か。」
「まだ半月はあるだろ?別に半月もあれば1件くらい除霊の依頼がある…」
「って先月もその台詞を言っていただろ?」
「…」
たかが猫1匹に言い負かされてしまった。うん。今月の除霊の依頼は半月を過ぎて1件も来ていない。
「それに悠希。お前はもう四捨五入すれば三十路だろう?全く。葉子(ようこ)は悠希の年にはお前を産んで育てていたぞ。」
「べ、別に俺は男なんだし少しくらい遅くても問題ないだろ?」
俺は床に落ちた煙草を拾い上げ再び口にくわえて煙草に火を付ける。因みに葉子(ようこ)って母さんの名前な。
「しっかし。葉子も気の毒じゃの。1人息子が三十路も近いのに結婚もせず、愛を育む相手もおらず、ましてやオナゴの気もないとは。きっと葉子は孫と一緒に遊ぶのを待ち望んでるぞ。」
「はいはい。俺は親に苦労を掛ける親不孝ものですよ。」
クソ…現にこの前に実家に帰ったら母さんに結婚と孫の催促を…
俺は煙草を一服しながらアイスコーヒーを一口飲みながら特に何をするわけでもなく、ましてや考え事もしない。ただボーッと突っ立てるだけだ。
「ん~…やっぱり猫の姿だと絵が詰まらんな。えい!」
すると斑は何処かのアニメに出てきそうな爆煙を放つ。
「あのね。」
「なんじゃ?悠希。」
「別に周りに人が居なきゃ別に人間の姿になっても良いけどさ。」
そう。斑は猫の姿から人間の女の子の姿になった。目はクリクリっとして、髪は白地に片方の前髪が黒く、撫で肩の豊満な胸に腹も程よい肉付きの良さに尻もプクッとした美尻に、膝枕したら気持ち良さそうな太もも。
なんで俺が何でこんなに細かく言えるかと言うとだ。読者サービスでも無ければ文字で特徴を伝える訳でもない。
「取り敢えず服は着ろ斑。」
「えぇ~…」
「゙えぇ~…゙じゃない素っ裸はさすがにマズイだろ?」
「マズイも何もここは山の中だしご近所も何もないじゃろ?」
「あのねぇ…お前には少しは羞恥心が無いのかよ?」
「羞恥心も何も猫の姿の時から私は服は着ないぞ?」
「とにかく。なんか適当に服は着ろよ。服を着ないと魚はお預けだ。」
「うっ…全く悠希も昔と比べて可愛げが無くなったの。昔は私の裸を見てアタフタして下半身を…」
「誤解を招く言い方はするな。本当に魚をお預けにするぞ。」
「むっ…仕方がない。やっぱり人間の姿はしっくり来るが服という窮屈な物を着なければならないのが難点じゃ。」
斑はブツクサと文句を言いながら服を取りに行ってくる。何で俺が端から見れば斑の人間姿の可愛らしい顔をした女の子の裸を見ても冷静だとったのかと言うとだな。
俺は昔ってか俺が思春期の頃から斑の悪戯でよく目の前で猫の姿から、いきなり人間の素っ裸の姿で抱き着かれたりとか色んな悪意の塊の悪戯をされて、いつの間にか免疫が着いたんだよ。
おい。俺がボンッ、キュッ、ボンッの女の子の裸を見て興奮しないのは、俺がガチムチのオッサンが趣味だと思った奴は正直に手を挙げろ。
今なら3/4殺しで勘弁してやる。
「ふぅ…一応、服は着たぞ悠希。」
「そうか。って……」
「なんじゃ?まだ文句があるのか?私はちゃんと服を着たぞ。」
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