第1話 女の恋は時に怨みになる
まぁ、今は数年前に人通りの少ない山のふもとに事務所を立ち上げて細々と心霊探偵事務所をしているんだよね。
土地は母方の祖父母の所有地だから家賃はタダ。建物の外装は避暑地に訪れる別荘みたいな感じか?
2階建てに電気を引いて家の中は現代の最先端のオール電化だ。更に風呂はエコキュートだからボタン1つで風呂が沸くんだよね。
正直、言って除霊師の仕事は1つ1つの依頼の報酬はピンキリで中には、その月に仕事が入ってこない時もあるから副業も兼用で、それなりに衣食住には困らない生活かな。
主な出費は食費と色々な維持費だからさ。貯金は仕事の入る量によるけど、平均だと月に4~5万が良いところだな。
貯金が出来ない時は本当に出来ないし、むしろ貯金を切り崩して1ヶ月を乗り切る事もあるくらいに除霊師の仕事はピンキリ。
まぁ、副業で最低でも1ヶ月20万は入る見込みだけどね。
やっぱり自立して1人で経営して仕事をしながら自分で生活するのって親の偉大さと背中が大きいのが身に染みる。
つまり俺が何が言いたいのかと言うと大人は本当に大変なんだよ。
学生の頃は授業が面倒くさいとか言うけど6時間だけ机と向き合い更に椅子に座って時間ぴったり定時に帰れるだけでも有り難いんだって事さ。
済まない。話が逸れたな。俺は何をしていると言うとだ。午後の陽気に出窓を少しだけ開けて心地良い風に身体を当てられ、薄い毛布を被ってソファーの上でお昼寝だ。
いやいやいやいや。俺はニートじゃないからな。ちゃんと徐霊師だからな。今はアレだよ。さっきも言ったけど除霊師の仕事の依頼が、有ったり無かったりなんだよ。
それに…昨日は徹夜で副業の仕事をパソコンと睨めっこでカタカタと慣れないキーを押してたんだよ。
だから落ち着いた頃にはもう日の出でだ…今に至るんだよ。
つまり何が言いたいのかとだ…うん。昼寝レベルじゃないのは確かだ。
すると俺が仰向けで寝ていると俺の腹に何か重いものがドッシリとのし掛かるが分かる。無茶苦茶なくらい重い…
「おい、悠希。腹が減ったぞ。」
「ん~…」
俺は知っている声に無理矢理起こされて目を覚ます。目を開けていると1匹の猫が乗っかっている。猫って言うより狸みたいな大きさだけど。
「悠希。アタイは腹が減ったぞ。飯を作れ。」
「何だよ?斑(まだら)。猫はキャットフードでも食ってろよ。」
この喋る身体の大きなブタ猫の名前は斑(まだら)。俺が除霊師になったと同時に母親から数珠と経文と一緒に受け継がれたメスの化け猫だ。
どうやら軽く500年は生きているとか。ってか500年とか普通にババアじゃねかって突っ込みたいけど斑もやはり女なのか歳を気にしている様子。
「キャットフードは飽きたのだ。何か飯を作ってくれ悠希。」
「ん~…もう少し寝かせてくれ…」
「おい。今すぐ起きろ。今すぐ飯を作れ。魚を私に提供しろ。」
「痛っ。痛てて!痛いって!!分かったよ!今すぐ作るから重い身体で飛び跳ねるなよ!」
「最初から作れば良いじゃないか。」
「ったく。少し待ってろ。」
俺は渋々だが寝起きの不機嫌全開で起き上がり冷蔵庫を開けて中を覗く。
「悠希。私は鯛が食べたい。」
「あいにく今、冷蔵庫には鯛と言う贅沢な食い物はない。」
「全く。鯛くらい買っておけよ。」
「あのねぇ…鯛は無いけど昨日、釣ったニジマスならあるぞ?」
「そうか。仕方がない。今日はニジマスで我慢しよう。」
「ニジマスをどんな風に食いたいんだ?」
「うむ。シンプルに焼き魚で食べるかな。」
「あっそ。」
俺はニジマスを1匹だけ持ち出し自動のグリルの中にニジマスを入れてボタン1つで自動グリルで出来上がりを待つ。
「それにしても悠希。」
「何だよ?」
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