第1話 女の恋は時に怨みになる

でも、その呑気な考えを一瞬にして消し飛ばすキッカケが起きた。


『ウフフフ、ウフフフ。』


何か女の人の笑い声が聞こえてきたから振り向くけど誰も居ない。


何だろうな?って思いながら気にしないで家に帰ろうとするけど。


『ウフフフウフフフ、ウフフフ!』


まただ。また女の人の笑い声だ。それにさっきと同じ人の笑い声。振り向くけど当然誰も居ないし少し不気味に思った俺は少し早足で歩く。だけど…


『ウフフフ、ウフフフウフフフ、ウフフフウフフフウフフフ。』


まだ声は聞こえてくる。まるで俺を嘲笑うかの様に笑っている女の人の声。


さすがの俺もイラつきはじめてきたから振り向く。当然だけど誰も居ない。だけど。


「ねぇ!!さっきから何?!なんで笑ってるの?!気持ち悪い!!!」


誰も居ないのに怒鳴る俺は周りから見れば頭の痛い子供なのかも知れないけど、幸い周りに人は居なかった。


俺は向き直って家路に急ぐだけど。


『ウフフフ、坊や。あなた私の声が聞こえるのね……』


女の声は不気味に更に寒気を促すように冷たい声になった。だから俺は振り向かずに足を早める。


『私ね。ずっと1人だったの。呼んでも、呼んでも誰も気付いてくれないの。』


そして俺は確信したんだ。この女の人は幽霊だって、そして俺は気付いた。この女の人は悪霊だと言うことを。


『ねぇ、待って坊や。私ね死んでから、ずっと寂しかったの……でね。やっと私に気付いてくれた人が坊やなの?だからねッ!!』


その瞬間に俺の本能が直結に身体を動かしだ逃走゙って言う本能に。


『待って。私を1人にしないで、寂しいの。寂しくて寂しくて堪らないのッ!!』


「ウワァァァアアアッ!!ハァ……ハァ……」


俺は走る。ただ…ひたすら走る。すると俺を追いかける足音が聞こえてくる。


本当は振り向いちゃイケない。そんなのは頭では分かっていたが興味が勝り俺は振り向いてしまった。


そこには女の人が俺を追いかけている。いや、性別が分からないくらいに顔はペシャンコに潰れている。


片目がなく、まるで眼球を抉り取られているし、髪もボサボサで頭の一部は白骨化していてる。


ましてや人間だったのかも怪しい。そして俺は振り向いた事に今更ながら後悔している。興味で振り向いた事に…


そのオゾマシイ光景を目にする俺は自然と更に足を早めて全力疾走したのは言うまでもない。


俺の心臓の鼓動はバクバクと鎮まる事も無ければ悪寒による冷や汗も止まる事もない。


恐怖によって身体全身が震え上がりそして俺の頭によぎるのば死゙だ。間違いなく確実に足を止めれば俺は死ぬと思った。


だから自分の家まで休む事なく走り続ける。あの曲がり角を曲がれば家に着くというところで俺は躓いて、転んでしまった…


全身が震え上がり、腰が抜けて身体に力が入らず立つことは叶わない。


『坊や…追い掛けっこは終わり?…ウフフフ。ウフフフウフフフ…フフフ…アハハハハハッ!!!』


この醜い女の悪霊は俺に近付きながら、何か頭のネジが全部ブッ飛んだ様に笑い出す。それはケタタマシク、狂いに狂ったワライゴエ…


『これで、私は1人じゃない!ヒトリジャア、ナクナルンダァァアアッ!!』


すると女の身体から何かウゴメク触手が何本も何本も身体を突き破り現れる。


俺は頭で理解したくはなかったけど状況的に理解する他が無かった。


アァ、オレワ、コロサレルンダ。コノ、ミニクイ、アクリョウニ。


生きる希望を何もかも捨てると、もう考える事を止める。全てを諦めて俺は目を閉じる。


「霊魔獣禁呪(れいまじゅうきんじゅ)……霊縛鎖(れいばくさ)ッ!」


『ウッ!!う、動けない!だとッ!!ガアッ!!』


何か、あの醜い女の悪霊の様子が変だ。俺を殺そうとしているはずなのに、いつまで経っても殺そうとしない。


それに何か苦しんでる?

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