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 そして、山能組の組長は俺の立てたプランで見事に爆死した。

 俺達、暗殺チームは広島市内の居酒屋を借り切って打ち上げ。

 居酒屋は居酒屋だが、値段はそれなり、メニューも和洋中揃ってるが妙にお洒落系のモノが多く、割烹料理店みたいに客席から板前が調理してるところが見える。

 はっきり言って、ヤー公が来ていいようなとこじゃない「上の下」ぐらいの高級店だ。

「おい、落としたり、パァっと使ったりするんじゃね〜ぞ」

 『阿弥陀様』からメンバー各自に分厚い封筒に入ったボーナスが手渡される。

 電子マネー全盛の時代に、銀行振り込みもせず、電子マネーでもなく、現金ゲンナマを直接手渡しってのは……要はそう云う事だ。

 現金ゲンナマが、一番、金の動きを追いにくい。

「あ、そうだ『チビすけ』。一次会が終ったら、新人歓迎会だ。主役が酔い潰れてたらアレなんで、すまないが、一次会では、ほどほどにしてもらえるかな?」

 嫌な予感しかしないが……ここは馬鹿のフリ。

「あ……わかりました。手荒な事は勘弁して下さいよ」

 そして、一次会が終ると……路面電車その他の公共交通機関の終電は、まだ先の筈なのに、何故か近くの駐車場に御案内。

 嫌な予感が増すが、微酔ほろよい気分のフリをして……おい……。

 車酔いか、酒のせいで、ゲロ吐きそうになったフリして車の外に出て逃げるか?

 だが、決断が遅れた。

 車は、どんどん山奥の……人通りも人家も稀な場所に入って行き……え?

 着いた場所に有ったのは……養豚場の看板。

 今時、LEDじゃなくて、白熱電球で照らされた物置まで連れてこられ……。

 あ〜あ……。

 我ながら、冷静だった。

 心のどこかで、こんなオチになる気がしてたんだよ。

 物置の中に居たのは……潜入捜査仲間のシャブ中の公安崩れと、広域組対マル暴の不良警官。

 2人とも、顔中痣だらけの傷だらけ。服は血だらけ。椅子に縛り付けられている。

「おい、チビすけ……採用試験の最終だ」

「へっ?」

「この2人、殺せ」

 ええっと……馬鹿のフリ……。

「いや……と言っても、これ……俺が使ってた情報屋と……あと、誰です、これ?」

「ああ、ウチと山能組の両方に情報を流してた組対マル暴不良警官くされデコスケだ。二重スパイは、敵が居なくなったら不要になる事を知らなかったほどのマヌケだ。もう要らん」

「あ……で……こいつの方は?」

「ウチも『上』から、コンプラだかテンプラだかをうるさく言われてな……有能でもシャブ中は論外だ」

 ああ……そう云う事か……。

 だから……こいつのコードネームが「アイス」だったのか……。

 最初からシャブ中だと気付いてたので……覚醒剤シャブの別名をコードネームにしたのか?

「お……おい……待て……」

 広域組対マル暴の不良警官が、小便を漏らしながら、たどたどしい口調で、そう言い出した。

「ん?」

「そ……そいつは……潜入捜査官だ……」

 ところが……えっ? マジで気付かれてなかったのか? それとも芝居か?

 その場に居たヤー公達、全員がポカ〜ン。

「あ……あのな……あんた……」

 俺は頭を押さえながら、説明をしてやった。

「仮に、あんたの言ってる事が本当だとしても……俺が、あんたの言ってる事が嘘だってフリをする為には、あんたを殺すしかねえ。逆に、あんたの言ってる事が嘘なら……俺はあんたを平然と殺す」

「へっ?……うぎゃあッ⁉」

 俺が呼び出した死霊は……あっさり広域組対マル暴の不良警官の「命」を吸い尽す。

「お……おい……待て……俺まで……」

悪いわりい。俺の『使い魔』どもは、あんたの事嫌いみたいなんだわ」

「えっ? おい、待て……うぎゃあ……」

 だが……「使い魔」どもの機嫌は悪そうだった。

 おい、お前らだって、この公安崩れを嫌ってたくせに、殺したら殺したで、何が「美味しくない」だ?

「まぁ、いいや、合格だ」

 「阿弥陀様」は、本当に仏のような顔……ただし、内心は知れたモノじゃないが……で、そう俺に告げた。

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