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 当然ながら「使い魔」は生物に取り憑かせてない状態では目も耳も無い。「使い魔」達の感覚を「魔法使い」じゃない奴でも判る言葉で表現すると「気配」だ。

 なので、生物に取り憑かせてない状態の「使い魔」が「認識している」モノから現実世界で何が起きているかを推測するには……コツが要る。

 「力の量」だけは天才的なのに、一生修行しても、この「コツ」を身に付けられない同業者魔法使いも居るらしい。

 「力の量」だけなら、一族の歴史の中で、ここ百年で最高の天才だった俺の従兄弟は、この「コツ」を中々身に付けられず……修行中に命を落した。どうやら、本人は操っていた「死霊」が現世こっちに居ると思ってたのに、実は冥界あっちに居たままで……冥界あっち剣呑ヤバい「何か」と使っていた死霊どもが接触してしまったらしい。その従兄弟が死んだ場所は、冥界あっちに繋る剣呑ヤバい心霊スポットと化した。

 だが、俺は、「力の量」に関しては一族の歴史の中では「中の下」と「中の中」の間ぐらいだが……この「コツ」は「死霊使い」の修行を始めて、1年かそこらで身に付ける事が出来た。この「コツ」に関しては、一族の歴史の中では「上の下」ぐらいだ。

 早い話が……俺は、使い魔の居場所と物理空間上の場所を対応付けるのが得意だって事だ。

 「魔法使い」以外には、大した事じゃないように思えるだろうが、真っ向勝負では俺を瞬殺出来るほどの化物級の「魔法使い」でも、これが出来ない奴は結構居る。

 その場所では……死体が5つに、死体になりかけてるのが1人。

 4人のチンピラの命を奪いパワーアップした、俺の「使い魔」達は、あっと言う間に魑魅魍魎どもも食い尽し、操っていた術者も「呪詛返し」で死んでしまった。

 正直、こいつが使っていた「魑魅魍魎」どもは……真っ向勝負すれば負けはしないが、こっちも結構なダメージを受けてただろうが……使ってる奴に経験と小ズルさが不足してたようだ。多分、同業者魔法使いと戦った事が、ほとんど無かったのだろう。

「○×△……」

 使い魔の死霊どもが「公安崩れ」を殺したがってるようだ。

「あのな……死んでるお前らと違って、俺には『浮世の義理』ってものが有るんだ。やるな。俺がいいと云うまで絶対にやるな」

 俺は手袋をはめて、帽子を被りながら、そう言った。

「∴∵◎◇……?」

「いや、だからさ……俺も、こいつ大嫌いだけど、ここで殺す訳にはいかね〜んだよ」

「こ……殺すって何だ?」

「機会が有ったら、後で話す。本当に殺す事は無いから、安心しろ」

 公安崩れは地面に倒れ伏していたが……意識はまだ有るようだ。

「あたりまえ……だ……。あ……あと……そのチンピラに財布を奪われたんで……」

「ちょっと待て……何だ、この分厚いサイフは?」

「有り金全部、銀行からおろした」

 潜入捜査である以上、足が付く可能性が有るクレジット・カードや電子マネーは使えないし、銀行預金は、一端、全部おろしてるが……。

「おい、この財布を、このチンピラどもに見せちまったのか……」

「あ……あ……ああ」

 何か……嫌な予感がする。

「どこで、チンピラどもは、この財布を見たんだ?」

 俺は死霊達に命じて、公安崩れに「恐怖」の感情を起こさせる。

「ががががが……」

「言え……」

「……ま……まさか……これは……あんたが……」

 最大の恐怖……それは、自分でも、何故、恐怖しているか判らない恐怖……。そんな恐怖は、対処のやりようが無い。

「『まさか』ね。こっちも『まさか』と言いたい事が有る。おい、シャブ中野郎、こいつら覚醒剤シャブの売人か……」

「は……は……は……はい……」

「馬鹿か……てめえは……」

「で……でも……何か……変だ……変なんだ……」

「何がだ?」

「じ……重要な情報かも知れない……」

「もったいぶってないで言え」

覚醒剤シャブがバカ高価たかいんだ……」

「へっ?」

「何故か、東京あたりよりも……覚醒剤シャブの値段が1桁ぐらい高価たかいんだ」

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