第6話 無法の都と女騎士

 俺たちはサンドリアの門の前に降りた。

 周囲が崩れ落ちた壁に囲まれた街の、唯一の門だ。

 門の前に、やる気のなさそうな騎士がひとり立っていた。

 

「あれが門番さんですかね」


「たぶんな……」


 あくびをしながら、空をぼうっと見ている。

 俺たちがこのまま門を通っても気づかないだろう。


「このまま通るか」


 ゆっくり音を立てないように、俺たちは静かに門を通ろうとした。


「待て」


 騎士が俺たちに気づいた。

 やっぱりタダでは通れないか。


「この門を通りたいか?」


 暗く低い声で、俺たちに問いかけてくる。

 虚ろな目をして生気がない。幽霊みたいなやつだ。

 

「はい!!街に入りたいのです!!」


 影の薄い騎士と対照的に、ミオカさんがめちゃくちゃ元気な声で返事をする。

 だが、まったくこの騎士は動じなかった。


「なら500ルピー払え」


 いきなり賄賂の要求。

 さすが無法の街だ。


「払わないと、どーなるんですかあ??」


 笑顔で騎士を煽るミオカさん。

 おいおい、街に入る前にもう戦闘かよ……。


「てめえの首を掻っ切って、血をゴポゴポさせながらケツ穴を犯してやるぜ。へへへ……」


 やばいな。このモブぽっい悪役感。

 しかしこの騎士の言うとおり、ミオカさんの汗ばんだお尻がドレスにはりついて、丸いラインがくっきりと見ている。

 男ならどうしても「ケツ」に目がいってしまう。


「お尻を犯したいんですか?ならどうぞやってみてください」


 あろうことか、ミオカさんはお尻を突き出して、ふりふり振り始めた。


「ほらほら~。早く犯してくださいよ!」


「このおクソおんんああ!ころすうううううううううううう!!」


 騎士は剣を抜いて、襲いかかってきた。


「まえてえ!!」


 甲高い声が響き渡った。

 門の中から、もうひとり騎士が出てきた。

 海のような水色の髪を結い上げた、女騎士だ。

 薄い唇に涼しげな瞳。

 いかにもクールそうな女性だ。


「この方々は、我々の仲間だ」


「へえ?こいつらがですかい?」


 騎士は剣を下げて、しげしげと俺たちを見た。


「無礼者!司令官の客人だ」


「は!失礼しました!」


 騎士は俺たちの前に膝まづいた。

 さっきの態度と大違いだ。


「サイード様、ついてきてください」


 女騎士が背を向けて歩き出した。

 

「どうします?アリババさん」


 どうせ手がかりは何もないしな……。

 ここはついていくしかないか。

 なぜ俺たちのことを知ってるのか、気になるしな。


「着いていこう。面白そうじゃないか」



 

 

 


 


  

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