第5話 図書館へ行きたい司書さん

「わあ!風が気持ちいいですね」


 学園から盗んできた魔法の絨毯に乗って、俺とミオカさんは砂漠の辺境サンドリアを目指した。

 王都を出て、森の上を魔法の絨毯で飛んでいる。

 

「かなり早いな……。飛ばすぎじゃないか?」


「ふふん。怖いんですかあ~?」


 ミオカさんが俺をからかう。


「いやいや、怖くはないが……」


 正直言うとめちゃくちゃ怖い。

 しっかり絨毯に捕まってないと落ちて死んでしまう。


「怖いなら、わたしに捕まっていいんですよ?」


「絶対、捕まらない!」


 怖くて女の子に捕まるなんて、そんな恥ずかしいことできるか。


「素直じゃないんですからー」


 無邪気にはしゃぐミオカさん。

 図書館にいる時と全然テンションが違うな。

 こんな元気な女の子だったのか。

 追放されて危険な砂漠の街へ行くのに、女の子をつれて大丈夫かと思ったが、一緒に来てくれてよかった。


「見てください!砂漠です!」


 どこまでも続く黄色い景色。

 砂ぼこりが目に入ってきた。俺とミオカさんは目を覆った。

 ラクダに乗ったキャラバンの頭上を通りすぎる。

 

 ――おい!魔法の絨毯だ!


 ――すげえ!あいつら空飛んでるよ!


 俺たちは砂漠を歩くキャラバンに手を振った。

 楽しい遠足みたいじゃないか。

 追放されたことを忘れてしまいそうだ。


「地図によるとこの近くだな」


 サントリアの街が見えてきた。

 辺境の砂漠にあるが、意外と大きな街だった。

 砂漠の真ん中に、忽然と現れた都市。

 いくつも尖塔が乱雑に生えている。遠くから見ても無秩序な街だとわかる。


「アリババさん、着きましたね!」


「ああ、そうだな……」


「どうしました?深刻な顔して」


「どうやって親父を見つけようかと思ってな。親父は帝国を裏切った人間だ。当然、親父も隠れて暮らしているに違いない」


 しかも、親父がこの街にいるかもわからない。

 正直、ノーヒントすぎる。

 勢いでここまで来てしまったから、街に着いてからどうするか考えてなかったぜ。

 

「なら、街の図書館へ行きましょう!情報収集ならお任せください!」

 

「こんな無法地帯に、図書館なんかあるのか?」


「世界最古の図書館があるんです。きっと何かヒントがありますよ」


「いやいや、図書館にレジスタンスの情報があるとは思えんが……」


 情報を集めるなら、住民に聞き込みがいいはずだ。

 もっとも、この街の荒れくれた住民が教えてくれるとは思えないが……。


「せっかくここまで来たんですよ。図書館に行かないと損です」


「……もしかして、ただ図書館に行きたいだけか?」


「はい……」


 やれやれ、ミオカさんは呑気だなあ。

 しかし、どうせ手がかりもないから、世界最古の図書館とやらに行くも悪くないな。

 案外、いい情報があるかもしれないし。


「じゃあ、図書館行こうか」


「やたあああああああああああああああああああ!」


 ミオカさんが抱きついたきた。

 柔らかい胸が腕に当たる!


「あああああああ!落ちるって!」


 

 






 

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