第4話 押しかけ女房の司書さん

「お兄様……。本当にお一人で行くつもりですか?」


 朝、屋敷の門の前だ。

 サラとダリアが、追放される俺を見送りにきた。


「ああ。俺がここにいるとみんな破滅だ」


 後ろ髪を引かれるが、仕方ない。

 俺がここにいるわけにはいかないんだ。

 

「サラ様はわたくしがしっかりお守りします」


「ありがとう。また必ず会おう。じゃあな」


 俺は振り返らずに歩き出した。

 振り返ると未練が残ってしまう。

 かわいい妹と美人なメイドと一緒に暮らすのは、正直ハーレムみたいなものだった。

 ばいばい。俺のハーレムライフ。

 

 

 ◇◇◇



 王都の東門に来た。

 ここから砂漠の辺境、サンドリアへ向かう。

 歩いてどれだけかかるだろう。数ヶ月はかかるな。

 俺の家は下級貴族なのに貧乏だから、馬さえ持っていなかった。

 砂漠を歩くのは大変だろうな……。

 王都を出る前から欝になってしまうぜ。


「アリババさん!」


 すっごく元気な女の子の声が聞こえる。


「ミオカさん!」


 まるで山登りに行くような重装備だ。大きなリュックから溢れるくらい荷物がパンパンに詰められている。

 夜逃げでもするつもりか?


「アリババさんと一緒に辺境に行こうと思いまして」


「ええ!?」


 俺は心底驚いた。


「きっとサンドリアへ行かれるんでしょう?あそこには珍しい古代魔術の本がたくさんあると聞きます。アリババさんと一緒に発掘したいのです!」


「いやいや、そんな気楽な旅行じゃないから……」

 

 子どもみたいに目を輝かさているミオカさんを見て、俺は呆れてしまう。


「アリババさんは自称高機能社会不適合者ハイスペック・アウトサイダーなんですから、きっとKYな行動を連発して住民を怒らせて、チンピラに路地裏へ連れ込まれ撲殺されてしまいます。ゴミ捨て場で野垂れ死ます。わたしが一緒にいてコミュ障のアリババと住民の橋渡しになりますから。てへっ!」


 相変わらず、笑顔でグサグサ来ることを連発してくるな。

 見た目は地味な司書なのに、意外とコミュ力があるし、それに実はけっこう毒舌でもある。

 学園で腫れもの扱いされる俺にも、こうやって容赦なく言ってくれるから仲良なれたのかもしれない。

 ミオカさんと一緒に旅ができるなら、きっと楽しいだろう。

 ただ、危険な旅になるからな。

 司書は戦闘力0のジョブだからどうすれば……。


「あ、わたしのこと、足手まといだと思っているんですか?アリババさんはすぐに顔に出るからバレバレですよ。わたしは学園で唯一のアリババさんのフレンドだったんですから、何でもお見通しですからね!」


「そんなこと思ってないって!」


 俺は思わず自分の頬を触れた。


「嘘ですね。まあいいですよ。わたしの力を見せてあげます!」


 パンパンのリュックの中から、古ぼけた絨毯を取り出して、地面に広げた。

 唐草模様の大きな絨毯だ。

 たぶん、砂漠の異民族が作ったものだろう。

 ミオカさんが絨毯に両手を置いた。

 目をつぶって、じっと集中している。

 絨毯が光を放ち始めた。古いボロボロの絨毯が、みるみるうちにキレイになっていく。

 

「すごいな……」


 天才魔術師の俺でも、こんな魔術は見たことなかった。


「わたしのスキル【修復リストア】です。壊れた魔法具を直すことができます」


「へえ……。便利だな」


「ふふ。じゃあ、これで空を飛んで行きましょう!」


 どうやらこれは、いわゆる魔法の絨毯と呼ばれる移動アイテムだ。

 かなりレアアイテムのはずだが、いったいどこで手に入れたんだろう?


「学園の宝物庫から拝借してきました」


「盗んだのかよ!」


「盗んだなんて、人聞きが悪いですね!誰も使ってないからバレませんよ。冒険が終わったらちゃんと返しますから」


 思い切りがよすぎる。

 ある意味、頼もしいとも言えるな……。

 でもこれで、熱い砂漠を歩いて野垂れ死ぬことがないな。

 どうせ追放された身だ。あんまり気にしないことにしよう。










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