第3話 妹聖女とお別れ
俺は司書のミオカさんと別れて、家へ帰った。
下級貴族の俺は、王都の端っこにある小さな屋敷に住んでいる。
妹とメイドと俺の3人暮らしだ。
裏口から中庭へ入った。
正面から入るとメイドのサリアが「おかえりなさいませ!アリババ様!」と出迎えてくるから、こっそり入る。
真面目に仕えてくれているのだが、大げさな感じが苦手だった。
「おかえりなさいませ!!アリババ様」
母屋からサリアがすっ飛んできた。
キレイに45度、折り目正しくお辞儀する。
長いおさげ髪に、丸メガネをかけている。健康的な褐色の肌で、砂漠の異民族の出身だ。俺より2歳年上。
……あと、誰にも言ってないけど、胸が大きいんだ。
「アリババ様、どうして裏口からお屋敷へ入れるのですか?正門から堂々と入ればよろしいのに……」
「裏口から入るほうが楽だから」
あんたが苦手だから、と本音はとてもいない。
「楽だから……?」
「俺って変わり者ですから。ははは」
「今やアリババ様はサイード家の当主なのですから、自覚を持っていただかないと!サラ様のご婚約に何かあったら……」
はあ……。
口を開けば、「アリババ様はサイード家の当主ですから」とお小言が始まる。
今日も長くなりそうだ。
「アリババ様!!聞いていらっしゃるのですか!!」
「ごめんごめん。ちゃんと聞いてたよ」
「まったく……。それで、今日の儀式はどうでしたか?」
「ああ、スキルは
「……わたくしの聞き間違いでしょうか?そのスキルは――」
「お兄様!!」
妹のサラが帰ってきた。
「おかえり!」
俺の妹、サラ・サイードだ。
サラは聖女見習いで、今は王都の修道院に通っている。
母上譲りの金色の髪と青い瞳。俺より2歳下の15歳だ。
聖女らしく、修道服に裾が広い頭巾を被っている。首にかけた銀のロザリオが輝く。
最近、急に大人ぽっくなったな。
特に胸とか尻とか……。
ヤバいヤバい。
聖女の妹に欲情するなんて、俺は罪深い。
「お兄様、今日はスキルを授かる日よね。どんなスキルを授かったの?火焔弾?水龍剣?それとも幻獣召喚とか?」
「その……授かったスキルは、
「えええええええええええええええええええ!!!」
サラはでっかい声を上げて、庭にひっくり返った。
「お兄様みたいな天才が、そんなスキルを授かるなんて!とても信じられませんわ!!あり得ない……」
実の妹にここまで失望されると、普段は家族とかめんどくさいと思っている俺も、少し傷つく。
サラとサリアを失望させたが、さらに失望されることを、俺は言わなければならない。
「……俺は国外追放された。皇帝陛下から直々にな」
サラとサリアは、言葉を失った。
あまりにもぶっ飛んだことを言われて、現実を受け入れられないと言った感じだ。
「そんな!貴族で天才のお兄様を追放するなんて……。絶対に間違ってます。お兄様は将来、帝国に貢献できる人間なのに」
「皇帝陛下に直談判へ行きましょう!ちゃんと話せばきっとわかっていただけますわ」
2人とも泣きそうな顔をしていた。
当然だ。自分の兄と主人が、いきなり国外追放されたんだから。
人の心に興味なかった俺だが、この2人に泣かれると胸が苦しい。
「これからどうすれば……」
サラは庭に倒れそうになった。
「サラ様!!」
素早い動きで、サリアがサラを受け止める。
「明日の朝、サンドリアへ行くよ。そこに親父がいるかもしれない」
サンドリアは、砂漠の辺境の街だ。
砂漠の真ん中にあるオアシスで、はっきり言えば、住みたくない街ナンバー1だ。
噂では、この街に帝政に反対するレジスタンスたちが隠れているらしい。
治安は極めて悪く、盗賊や追い剥ぎがたくさん潜む無法地帯だ。
「そんな危険なところに行くなんて……。お兄様が心配です。わたしも一緒に行きます」
「アリババ様がいなくなれば、サラ様がひとりぼっちになってしまいます……」
サラが1人なってしまうのは心配だ。
親父が革命側に寝返ったせいで、母上はメンタルを病んで入院中だ。
母上がいなくなってから、俺とサラは2人でなんとかやってきた。
しかし、追放された俺がサラの近くにいたら、サラに迷惑がかかってしまう。
バレンシュタイン公爵との婚約も、破棄されてしまうかもしれない。
「一緒には行けない。お前はここに残って、公爵と結婚するんだ。サリア、サラを頼んだぞ」
うわあああああああああああああああああああああああああああんん!!
サラが泣き始めてしまった。
さすがの俺も、つられて泣きそうだ。
サンドリアで、なんとか逆転のチャンスを探らないとな……。
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