シュウシン
UNKNOWN
第一章 走馬灯
『カン!カン!』
そんな音で僕は目を覚ました。
隣には半分くらいまで飲んだラムネが置いてある。
どうやらこの人気のない寂れた公園で寝てしまっていたらしい。
道をはさんだ向こう側では足場を解体していてその音で目覚めたのだろう。
しかしなぜ僕がこんなところで寝ていたのか全く覚えがなかった。
唯一覚えているのはこの公園はよく遊んでいた公園で、向かいにはおばあちゃんがやっていた古い駄菓子屋がある事だけだ。
しかし、そこのおばあちゃんは先日亡くなってしまいその店を継ぐ人がいなかったため、親戚が土地を売ってしまったらしい。とてもやさしくて心地のいい声のおばあちゃんだった。
周りが暗くなってきた。そろそろ帰ろうとした時、聞き慣れた声が聞こえてきた。
「○○(名前を呼んでいるのだろうけどなぜか聞こえない)どこにいるの?」
そう言っていたのは幼馴染の広瀬守だった。重度の人見知りな奴だがとてもやさしい奴だ。そして、僕は探されていたことに気づいた。
声のする方に行くと守は安心したかのように、ひざから崩れ落ち赤ちゃんのように泣き叫んだ。
話を聞くと地域の夏祭りに参加していたところ急に僕がいなくなったらしい。人見知りな守は誰にも助けを言えずに一人で探していたみたいだ。
「なんで○○はここにいるの?お母さんたちにここへ近づいちゃダメって言われてるじゃん。やっぱここ怖いよ。」
そうだ、向かいのおばあちゃんは殺されたんだ。まだ犯人が捕まってないから、ここは立ち入り禁止だったんだ。
「ごめん。ごめん。」
僕はそう言い家に帰ることにした。
家に帰りご飯を食べて、お風呂に入り僕はベットに入った。何故自分があんなとこにいたのか、なんでそれより前の記憶が全くないのか、分からなかった。
考えていたら夜が明けていた。
「もう朝よ!起きなさい!」
そう母親の声が聞こえた。朝食を済ませて僕は学校へと向かった。
「○○!」
振り向くと守がいた。相変わらず傷だらけのランドセルを背負って。
「昨日のミステリー特集見た?すっごく面白かったんだよ!」
まるで子犬のようにはしゃぐ守に
「ごめん見てないや」
と笑いながら答える。
「え〜もったいない。じゃあ頭のいい○○に問題ね!」
ー走馬灯って知ってるー
「何それソーマートー?」
「○○も知らなかったんだ!走馬灯ってのはね、
人が死にかけている時とかに人生でやり残したこととか、悔しかったこと、一番の思い出とかが頭によぎるんだって!」
「そんなことただの迷信だよ。信じない方がいい。」
「分からないじゃん!そんなこと。俺はどんなのを見るのかなー?」
守は笑顔になりながら考えていた。
「どうせいじめられているところしか思い出さないよ。」
僕がそうバカにすると守は
「そんなことないもん!」
と大きな声で起こり、校門へと走っていった。
「ジョーダンだって。ごめんよー。」
そう言いながら僕は守を追いかけた。ずーっと拗ねていた守は給食を食べると元に戻っていた。守は
「ねー○○はどんな走馬灯を見ると思う。」
と聞いてきた
「どうだろうね。何も見ないんじゃない。」
自分という存在に意味を持っていなかった僕はそう答えると
「じゃあさ、死ぬ時にいい思い出を思い出せるように二人でいろんなとこ行って思い出つくろうよ!」
「男二人でか?暑苦しいしつまんなそうだな。」
そう言い笑うと守は
「そんなことないって!絶対いい思い出になるから!」
とまた子犬のような笑顔でそう言った。こんなバカな話をしているのが走馬灯にでもなりそうなくらい楽しかった。
チャイムがなり5時間目が始まった。
辺りは急に暗くなり、ポツポツと雨が降り始めた。夜寝れなかった僕は眠気に襲われ授業中だったがそのまま寝てしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます