第四話 暇つぶしって言わないで

 目覚ましの音で目覚めた、7時30分。ここから稲荷神社までは30分ほどかかるのでちょうど良い時間だ。それにしても寒いな。今日はコートを着ていこう、凍え死んでしまう。

 すると、襖越しに

「司や、もう起きたのかい?」

 祖母の声が聞こえてきた

「うん、出かけるからね」

 司はコートをハンガーから外しながら言った。

「それなら朝ごはん、食べていくかい?」

「え?いいの?」

 司は何故か戸惑いながら言った

「いいんだよ。さ居間に出ておいで。」

「わかった!支度したらすぐ行く!」

 司は、急いで支度を再開した。


 司が居間に行くと、朝食はおろか祖母は起きてすらいなかった。

「何が起きてるんだ...」

 考えてみたらおかしい、俺は昨日何時に起きるか伝えていないし祖母は明日遅めに起きると言っていた。狐の悪戯か?いやまさかそんな訳ないか。寝ぼけていただけだろう。別に予定通りコンビニで買うだけなので問題はない。さっさと出発しよう。

 司は荷物を持って、玄関に向かうのだった。


 田舎の朝というのは静かだ、と言いたかったのだが8時になってくると人もちらほら増えてくる、車もまばらだがいない訳ではない。コンビニでおにぎりを買って稲荷神社に向かった。

 向かっている途中、部活に向かうであろう同世代の集団とすれ違ったバットを持っていたのでおそらく野球部だろう朝からご苦労なこった。

 その内の一人が俺の事をじっと見ていたが顔に海苔がついているのかと思って慌てて口を拭った、案の定付いていた恥ずかしい振り返るとまだ見ていた。いつまで見ているんだほんとに恥ずかしい。


 稲荷神社の前に着いた。時刻は9時00分、予定通りだ、あいつはまだ来ていなかった。10分経ってもまだ来ない。

「もしかして、夢だったのかな、、、」

 そんな事を俯きながら呟くと、目の前から

「夢じゃないよ」

 優しい声が聞こえてきた。

 顔を上げると白い髪を持った美少女、エリカが立っていた。

 エリカは、ニヤつきながら

「私が来なくて、寂しかったの?可愛いね!」

 司は顔を赤くしながら

「寂しかった訳じゃねーよ!あと何だ可愛いってバカにするな!」

「え〜バカにしてないよ〜、そんな事より今日ちゃんと起きれてえらいね!」

 エリカは嬉しそうに言った。そして、更に嬉しそうに

「やっぱり楽しみだった?私は楽しみだった!」

 すると、司は落ち着きを取り戻し

「まぁ、楽しみではあったぞ」

 エリカは司の手を引っ張りながら

「よし!じゃあ早速行こう!今日も忙しいよ!」

 司は少し笑いながら

「よし、行くか!」

 と言ってエリカと共に走り出した


程なくして歩き初めたエリカに司が尋ねた

「そういえば勢いで走り出したけど、何処に向かってるんだ?」

少し先を行くエリカに司は尋ねた、するとエリカは白い髪をなびかせながら振り向いて

「あ、ごめん!言ってなかったね。今日は菊池さんの駄菓子屋さんのお手伝いだよ!」

「駄菓子屋の手伝い⁈何をするんだ?」

司は驚いた様子で聞いたが、それとは別にエリカは落ち着いた様子で説明をした。

「ええとね、品出しして、店番して、子供たちの相手するの」

「それだけ?めちゃくちゃ暇じゃないか!暇つぶしにもならない。」

司は凄く嫌な顔をしていた、しかしそれ以上に不快感を露わにしていたのはエリカだった。

「なんだよ」

司が尋ねるとエリカは立ち止まり悲しそうな顔をしながら口を開いた。

「暇つぶしなんて言わないで欲しいな私は楽しんでやってるんだし、それに菊池さんが仕事でやってる事なんだしそれって凄い失礼じゃない?」

司はそう言われてはっとした。確かに自分が言った事は失礼だったのかもしれない。だが他の人がそう言ってもそう思わないエリカだからこそ納得してしまう。

「その通りだな、気分を害したのなら謝るごめん。」

司が謝罪するとエリカにいつもの笑顔が戻った。司はほっとした。

「いいよ、じゃあすぐ行こ、司?」

エリカは再び歩きだした。

「うん、行こう」

司はそう言ってエリカを追いかけるのだった。












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