第三話 あなたはだぁれ?

 稲荷神社に到着した。境内は管理が行き届いているようで、とても綺麗だった。

 さすがは伝説の狐と言ったところか。それにしても妙だな、入り口の狐が一匹しか居ない、なぜだ?普通は二匹いるものでは無いのか?

この地域の変な風習か?

まさか神?そんな訳ないか。

 そんな事を考えながら狐が本来居るであろうはずの台を見ていると、後ろから

「なんかよう?」

 後ろから声が聞こえてきた。司が振り向くとそこには同い年位の髪が白く長い、目が黄色の少女が立っていた。なんというか、一言で表すなら美少女と表すのにふさわしい風貌をしていた。

すると、またその少女は司に問いかけてきた。

「あなたはだぁれ?」

 司は戸惑いながらも

「俺は、司。本間司。君は?」

 すると彼女は、怪訝そうに

「あなた、私のことしらないの?外から来たの?」

 司はムッとしつつも

「知らないね。冬休みで昨日から来てる。」

 すると少女は、悲しそうに

「そう、私はエリカ。この町で色んな人の手助けや問題を解決してるの。」

 エリカ?あぁ行く時にそんな名前を耳にした気がする。これが、あの

「そんなにジロジロ見てどうしたの?もしかして好きになっちゃった?w」

 エリカは、ニヤニヤしながら言ってきた

「そんな訳ないだろう!第一俺は恋愛に興味なんかない!」

「ふーん、でも顔赤いよ?」

「え?」

「嘘だよ」

 エリカはまたニヤニヤしている

「ふん、くだらない」

 全くなんなんだこの女は、人をおちょくって。でも何だか懐かしい気もする。

「あ、そうだ!司、明日って暇?」

 エリカは、司に尋ねた。

「暇だな。なんならずっと暇だ。」

 すると、エリカは顔を輝かせながら

「じゃあ、私と一緒に人助けしてよ!」

「いいぞ。」

「やったぁ!じゃあ明日9時にここに集合ね!私は、堀川さん家の手伝いに

 行かなきゃ!じゃあね!」

「あ、ちょと」

 行ってしまった。

 それにしても驚いた、まさか速攻で了承してしまうとは。自分の気持ちがわからない。ただまぁいい暇つぶしにはなるし、とりあえずお参りだけして帰るか。


 帰り道、歩いていると。山の奥の方に狐が見えた。野生の狐なんて初めて見たが思ったよりも可愛く見えた。前、動物園で見た時はそうは思えなかったのに。

 野生は可愛いのか?そうなのかもしれないな。

 家に帰る頃にはすっかり日が暮れてしまっていた。すごく濃い1日だったしかし、不思議と気持ちが明るくなった。きっと、あの明るい奴のせいだろう。

 夕食の後、今日会った事を話すと、父と祖母に稲荷神社に行った事を喜ばれた。いや、もっと反応する事があるだろうに。やっぱり、この親子はちょっとずれている。もしや、俺もズレているのか?そんな、談笑もそこそこに、俺は明日に備えて寝ることにした。

「さぁ、明日からどんな1日になるかな?」

 期待を胸に司は、目を閉じるのであった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る