9日目 お出かけ

電車の出来事から数分経った今は僕と美久は目的地であるショッピングモールに着いた。さっきまでの出来事が嘘だったみたいな感じがしてしまう。今の状況を説明するとショッピングモールに着いた途端、美久が僕の手を引き女子物しか扱っていないお店に連れていかれた。僕は、美久が服を選んでいる際ずっと周りの事だけを気にしていた。僕はただただ突っ立っているこの状況に困っていた。そんな中、服を選んでいる美久が話しかけてきた。


「光希君、私から離れないでね。こっち来て。」


「分かったよ。」


僕は美久の方に近づいていき、手を握られた。


「これでよーし。これでもう逃げられないよ。」


「べべべつにげないよ。」


僕は数時間、美久の服選びに付き合わされた。「どっちの服がいいとか光希君ならどっちが良いと思う」とかいっぱい聞かれた。僕は、正直に全部答えた。僕の意見が何の意味があるのか分からないけど答えられることは答えてあげたいと思った。数時間が経ち、美久が気に入った服を手に持ってレジに行ったのでお店を出てベンチで座って待っていた。服を選んでいる美久は本当に楽しそうで見ているこっちも楽しくなってしまった。こんなの初めてだった。一人で服を買いに行ってもこんなに楽しくなることはない。だから、いい経験をした。そう思っていたら美久が帰ってきた。


「光希君、お持たせ! じゃあ、次はカフェに行こう!」


僕は返事をすることなくカフェに行くことになった。


一休みがてらにカフェに来たものの、目の前の状況を説明してほしかった。目の前では美久がパフェをスプーンで取って僕の目の前に持ってきていた。


「光希君、今日付き合ってくれたお礼だよ。はい、あーん。」


「いっいよ。自分のスプーンで食べるよ。」


「恥ずかしいだけでしょ?」


「美久だって耳真っ赤だよ。」


「そんなことないもん。」


「そんなことあるって。ちゃんと見てみてよ。」


「うるさいなぁ。ほら、あーん。」


口が開いた瞬間に入れられた。


「どう美味しい?」


「美味しいです。」


僕は下を向いた。とても恥ずかしかった。こんなことをしたことがなかったため耐性がなくどう対応したらいいのか分からずに下を向いてしまった。美久には笑われていると思う。美久の方をチラッと見た。予想外にも美久も下を向いていた。どちらも下を向き、沈黙が続く中美久が話し出した。


「今日は本当にありがとう。明日からも名前で呼んでね。」


「僕も楽しかったよ。名前で呼ぶのは考えとく。」


2人して笑いあい、落ち着いたところでカフェを出た。


「それじゃ、帰ろっか。明日学校だしね。」


「うん。帰ろう。」


2人で並んで駅を目指した。その際に美久に手を握られた。今日はだいたい手を握っていたなぁ。もうこれが最後だと思う僕であった。



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