9日目 お出かけ(改札からホームの中へ)
僕は、早く目的地に着いてほしいと思った。何故って思う人もいるだろう。この状況が早く終わって欲しいから。今の状況を説明すると美久と手を繋いで目的地を目指すことになったんだけど、その目的地が地元にないってことになって少し離れたショッピングモールまで行かないといけなくなってしまった。手を繋ぐことを今日知った僕には手を繋ぐ時間がすごく緊張するから、一度離れたら手を繋がないようにしようと思う。そう心に誓って駅の改札を通ろうとした時に僕は美久に声をかけた。
『あずまさん、流石に改札を通る時ぐらいは手を離そうよ。』
『光希君、離したいだけでしょ。ダメダメ。手を離したら罰ゲームだよ。』
『違くてポケットの中にICカードがあるから一度手を離して取りたいんだ。』
『それなら仕方ないかな。じゃ、ほらいいよ。』
僕は、ここで『やった!!』と心の中でガッツポーズをした。これでもう手を繋ぐ必要はなくなったと。でも、ここで美久は僕の考えがわかっているかのようなことを言ってきた。
『改札通ったらすぐ繋ぐよ。いいね?』
美久の圧が凄かった。僕はその圧に負けて返事をした。
『はい。』
僕たちは、改札を通った。通った後、すぐに美久が手を出してきた。でも僕は、手をポケットに入れた。美久がこっちを見てきた。若干不機嫌そうに見えたがすぐに悪い顔をしてきた。僕はこの後起こることに想像がつかなかった。
『光希君、そういう事するんだ。いいもん。私にも考えがあるから。』
『?』
『じゃ罰ゲーム開始ね! 今日だけ私のこと美久って呼んでね。これも守れなかったら罰ゲーム増やしてくからね。』
美久は左手の人差し指を立て、右手は腰に手をあて、体は少し前に出してきて言ってきた。僕は、この時こう思った。『可愛ぃ』っと思ってしまった。無意識に思ったから声に出ていたかもしれない。でも、そんなことより、今日一日だけ名前で呼ばらなくちゃいけなくなってしまった。しかもそれに加えて手を繋ぐのも忘れてはいけない。
僕はここで罰ゲームがどれだけ恐ろしいものなのかが分かった。こうなってしまった以上、乗り切って見せると心に誓う僕であった。まだ、改札通ってホームの中でのやりとりなんだと思うと今日1日は長くなりそうだな。
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