6日目

僕は今、自分の席で授業を受けている。だが、隣の美久がずっと僕の方を見てくる。

なんで一番前で授業に集中せずにこっちを見ていられるの不思議で仕方がなかった。

なぜこうなったのか。時間を少しさかのぼってみよう。


数十分前、1限である数学の授業が始まった。最初は、授業が始まって黒板に書かれた公式をノートに書いて、先生が公式の説明をし始めた。僕は、この時思った。なんで教科書に書いてあることをそのまま読んで説明しているんだろうと。だって、教科書に書いてあることなんだから自分たちで読めばいいのではと思ってしまった。


僕は、先生の長ったらい説明を無視して隣の方を見てみた。隣を見てみたら、美久も僕の方を見ていた。僕は気になって声を掛けた。


「東さん、なんでこっち見てるの?」


「光希君が何かつまらなそう顔していたから面白くて見てただけ。」


「いや、見てなくていいから。授業に集中して。」


「えーーなんで。光希君だってこっち見てたじゃん。」


「僕は何か視線を感じたから見てみただけだよ。」


「でも、気になって私のことを見たってことでしょ。」


「そうだけど。」


なぜか美久がにやにやしている。僕は分からなかった。この後、美久が何を言ってくるのか全く分からない。そんなことを思っていると美久が手招きをしてボソボソと何かを呟いている。僕は何を言っているのか気になって近づいてみた。


「それって、私の事が好きってことじゃん!!」


僕は驚いて何も言えなくなっていた。僕は今の状況が全く分からなかった。僕が美久の事を好き?いやいやいやいや。そんなこと思った事もないはず。僕は改めて、今までの事を振り返った。振り返るたびに顔が徐々に赤くなっていた。僕は恥ずかしくなって思わず席を立ってしまった。音が出かかったため、すぐに先生が声を掛けてきた。


「江口、急に立ってどうした?」


「ちょちょっとトイレに行ってきてもいいですか。」


「授業始まる前に行っとけよ。今日は許す。行ってこい。」


僕はトイレに駆け込んだ。僕はあの場に居たくなくてトイレに逃げた。僕は、美久がきっと笑っているんだろうと思った。この時の美久は、笑ってなどいなかった。むしろ恥ずかしくなって顔を机に伏せていた。


「なんであんなこと言っちゃたんだろう。恥ずかしいよ。」


机に顔を伏せながら足をバタバタしていた。このことを僕が知ることはない。

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