文化祭

楓ちゃんとは神戸や大阪や京都の美術館でやっている絵画の展覧会に、ふたりでよく行っている。

ふたりで並んで絵画を観ていると

「そういえば占いで、ボクは絵画をいっしょに観てる相手と結婚するって言われたな~」

って想い出したりする。


美術部の新入生歓迎会で、琵琶湖にある高校の宿舎に合宿に行った。

1日、宿舎に泊まって、琵琶湖とかの景色を風景画に描いた。

美術部のみんなとも仲良くなった。

結衣先生もいっしょに来た。

みんなで結衣先生にモデルになってもらって、絵を描いた。

結衣先生を見つめながら絵を描いていると、どうしても、西表島での結衣先生の裸を想い出してしまって、紅くなりながら、結衣先生の絵を描いていた。

楓ちゃんも、そんなボクを見て

「あやめっち、めっちゃ顔、紅いよー!結衣先生のこと好きなのー?」

って聞いてきた。

「西表島で見た結衣先生の裸のことをどうしても想い出してしまうねんなーっ!」

って言って、ごまかした。


夜、みんなと晩御飯を食べて、お風呂にも入ってから、楓ちゃんとふたりで宿舎を抜け出して、琵琶湖のほとりを歩いた。

スケッチブックも持ってきてたから、ふたりでササッと湖畔の風景も描いた。

琵琶湖のきれいな自然の中で楓ちゃんとチュッてキスした。


「結衣先生の裸って、そんなにきれいやったん?」

って、いきなり楓ちゃんに聞かれた。

「えっ?...うんっ、まあ...そうやなあ...なんか、めっちゃきれいやったなあ...日焼けもしててセクシーで可愛くて...」

「そうやったんやあ...」


それから、宿舎に戻ったら、結衣先生と廊下で出会った。

「ふたりでどこ行ってたん?」

って聞かれて

「ちょっと湖畔の幻想的な風景を描いてきましたー」

って答えた。

そのあと楓ちゃんは誰もいない部屋へとボクの手をギュッと握って連れて行った。


ドアを閉めて、ふたりっきりになったら、楓ちゃんは服を脱ぎだした。

「わたしの裸も描いてええでーっ」

って言ってきた。

ボクはスケッチブックに楓ちゃんの裸を描きはじめた。

めっちゃドキドキしてしまった。

楓ちゃんの裸めっちゃ可愛くて。

そのあと、お風呂場に行ってみたら、誰も入っていなかったから、ふたりでダーッと、お風呂にもう1回入った。結構広い大浴場やから、ふたりで泳げた。

お風呂の中に入りながら、ふたりでチュッてキスした。


高校も夏休みになった。

夏休みになったばかりの、ある日。ママに

「仕事で秋からサンフランシスコに引っ越すことになったの」

って言われた。

「ええーっ?なにそれー?」

「で、おばあちゃまとおじいちゃま、神戸に住んでるから、あやめっちは神戸で暮らしなさいっ」

「ええーっ?神戸でー?」

「神戸だと、高校に通うのも近くなるし、良いでしょ...」

「うんっ、まあ、高校に通うのには便利になるけども」

「それで良いわね」

「空里はどうするん?」

「空里に聞いたら、いっしょにサンフランシスコに行きたいって!」

「ええーっ?空里はサンフランシスコに行くんや!」

「まだ中2やからサンフランシスコの中学に行ってみたいって言ってる」

「まあ、空里やったら、サンフランシスコに行くって言いそうやな~」


そうして、ボクは、自分の荷物を神戸の家に送った。

ママとパパと空里はサンフランシスコにまもなく旅立つ。

「あやめっちとわかれるのも、めっちゃさびしいけども、サンフランシスコで暮らしてみたいんだっ!」

って空里も言っている。

「まあ空里やったら、サンフランシスコで暮らすのも、好きな海も近いし、ビーチで泳げるやろうから、良いかもな~」

「そうやろ~。わたしもそう思ってサンフランシスコに行くことにしてん」

「ええなーっ!ディズニーにも近いやろし...」

「えへへ、そうやな~」

「まあ、空里の泳ぎやったら、どこ行っても通用するやろっ!サンフランシスコもええとこやから...」

「そやな~。サンフランシスコも暮らしやすそうやもんなっ」

「うんっ!アメリカの中でもサンフランシスコって結構ええとこなんちゃうかー?」

「そうやと思うわ」

「サンフランシスコの中学でも、水泳でいちばんとったれ!」

「そやなー」

「あと、笑いもとったれ!」

「あははは」


関西国際空港から3人は飛行機に乗ってサンフランシスコへと向かった。


神戸のおばあちゃまとおじいちゃまの家で暮らしはじめて、大阪の家のボクの部屋にいた霊の女の子のことを考えていた。

毎晩、ボクのことを優しく抱きしめて愛撫してくれてたから、その女の子と、わかれてしまうのも、なんだか、めっちゃさびしい気もしていた。


そして何日か経って、ある日の晩、部屋で寝てたら、なんとなく、優しくギュッと誰かに抱きしめられてるような感覚になってきた。

「えーっ?」

しばらく、抱きしめられてる感覚のまま、寝ていたら、こんどは顔にキスされてるような感覚になってきた。

「うわっ!大阪のボクの部屋の時と同じ感じだあああ」


それから毎晩、また、今の部屋でも、夜、寝てると、優しく抱きしめられてる感覚を感じるようになった。

「いっしょに大阪の家から神戸まで、着いて来てくれたのかなーっ?」


夏休みも終わって、高校もまた始まった。

「文化祭は、クラスで何をやりましょうかー?」

って学級委員の子は、みんなに聞いている。


「えーっ!どうしようかーっ?」

みんなしばらくの間、いろいろ考えているみたいだったけど

「はいっ!」

って、挙手する子ひとり、あらわれて

「あっ!どうぞ!」

って学級委員も、その子の意見を聞いている。

「えっと...絵画をみんなで模写したいです...」「絵画の模写ですか?」

「あ、はいっ!」

「どういうことでしょうか?もうちょっと具体的にお願いします」

「あの...何かみんなの好きな絵画を1枚選んでですねっ...それで、文化祭までにクラス全員で、放課後や休み時間や、いつでも、その子の好きな時に、好きな箇所に筆を入れて、最終的に1枚の絵をみんなで完成させたいです~」

「なるほど...わかりました...あと、他には、何かやりたいことある人いますか~?」


しばらく、また、ちょっとの間、みんな考えてるみたいだったけど、結局は、他の意見は出なかった。

それで、絵画をみんなで模写して展示するっていうことに決まった。


ボクも楓ちゃんも美術をめっちゃ好きだから、絵画をみんなで模写するっていうアイデアに賛成やった。

絵画って、だいたい、ひとりで完成させるか、師匠と弟子とで完成させるか、それくらいやと思っていたから、クラス全員の筆で1枚の絵を完成させるのって、なんか斬新やな~って思った。

アイデアを出した子は美術部ではないけど、絵も好きで、自分で絵を描くのも、めっちゃ好きな子だった。

なんか、みんなで文化祭のために1枚の絵を描いて完成させるのって、めっちゃ想い出にもなるかもしれないな~。


それから、文化祭のために、教室の壁1面に大きな紙を貼って、みんなで絵を描いていくことになった。


そして、何の絵を描くのかって話になった。

みんなひとりづつ描きたい絵を紙に記入して提出することにした。


そして放課後、学級委員の子は、投票箱を開けて、中に入ってある、みんなの希望の絵画名を黒板に書きだした。


みんな結構ばらばらやったから笑えた。

最初は、なんとなく、何かの名画に集まるのかな~って思っていたけども。


面白いことに、アングルの「泉」に3票。

ボッティチェルリの「ヴィーナスの誕生」に3票。

フェルメールの「牛乳を注ぐ女」に3票。

そして日本の「風神雷神図」に3票。

あとは1票か2票づつで、ばらばらやった。


それで、こんどは、この4作品の中で、どれを推すかをみんなに書いて投票箱に入れてもらった。


そして投票箱を開けて開票。

そしたら、「風神雷神図」22票で、いちばん多かった。

日本の名画「風神雷神図屏風」(俵屋宗達の)をみんなで模写していくことになった。





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女子みたいな体の、ちっちゃな恋のあやめっち ヤッキムン @yakkimn

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