美術

高校の芸術科目は、音楽・美術・書道の3教科の中から、1つを選択して、それを3年間勉強することになっていた。

ボクは楓ちゃんといっしょに美術にした。

美術の授業は、副担任の結衣先生。

はじめて油彩画を習った。

キャンバスの上に油彩の絵の具を塗りかさねていける。

めっちゃ迫力のある重厚な絵も描くことできる。


部活でも楓ちゃんといっしょに美術部に入った。

毎日放課後、美術の教室で絵を描いている。

楓ちゃんは、めちゃめちゃ幻想的な独特な絵を描いている。めっちゃオリジナリティある絵を描く。

ボクは、可愛い女の子のキャラクターの絵をひたすら描いている。


体育は担任の紬先生。

今日はバスケをやった。

バスケをやってて、ボクにボールまわってきて、ガシッとつかんで、パパッと走って、エイッてジャンプして、トリャーってシュートして、ボールから手を離した瞬間に、誰かしらボクにいつも抱きついてくる。

だから、いつもボクは、バスケって、シュートのためにジャンプして、ボールから手を離したら、その相手に抱きついても良いっていうルールなんかな~って思っている。


日曜日、アイドルグループの「マジカルわーるど」の新曲のリリイベをやっていたので、楓ちゃんといっしょに観にいってみた。

最初にミニライブをやっていた。

ボクはピンクのサイリウムをフリフリしながら、いっしょに踊ったりコールしたりして観ていた。

ソラッチもボクのこと見てくれている。


ライブのあと特典会でソラッチのところに行った。

「きゃあああ、あやめっち、こんにちは~」

「ソラッチ、こんにちは~!また

来たよ~!ユーナちゃん、どう?」

「いつも、めっちゃ嬉しそうにしてるよ」

「それは良かったわ」

「あやめっちも高校生になったんやったっけ?」

「そうだよ~!ソラッチも高校生だもんねっ」

「うんっ!あやめっちとうちはいっしょだ」

「そうだよ~!」

握手してツーショットチェキをいっしょに撮った。


楓ちゃんは、自分で描いた絵を推しにプレゼントしていた。推しの子も、めっちゃ喜んでいて

「きゃあああ!ありがとうーっ!めっちゃきれいで幻想的な絵だー!飾っとくねー」

って、大きな声で騒いでいたから、まわりのみんなも

「なんだなんだ?何をもらったんや?」

って思いながら笑って見ている。

ボクも、こんど、何かソラッチに描いて、持って行こうかな~って思った。


英語の授業の始まった時、奥麻琴先生は、みんなのことをじっと眺めていた。

ボクは

「麻琴先生、何をそんなに眺めてるんや?」

って思った。

誰を、あてようかな~って感じだった。

なんか、あやしい!って思っていた。

そしたらボクを見て

「そしたら、あやめっち!教科書読んで!」

って言った。

「はいっ!」

ってボクはイスから立ち上がった。

麻琴先生は、なんか、ニヤニヤしているから、何をたくらんでいるんや~って思いながらも、先生に言われた箇所を英語で読み始めた。


しばらく何行か読んでいたら、麻琴先生は突然

「ちがうっ!」

って言ってた。

そう言いながらも、先生は、なんか、嬉しそうっていうか、なんか、ニタニタしている。


ボクは、ちがうのどこだろうなーっ?どの単語なんやろなーっ?って思いながらも

「あっ!そうかっ!」

って思わず声に出してしまった。

「まんまと麻琴先生の罠にはまってしまったわ~!」

って思いながら、energyっていう単語を、最初のeにアクセントを強く置いて

「エネルギー」

って発音し直した。

最初に読んだ時は、2番目のeのところにアクセントを置いて、普通に

「エネルギー」

って発音したから間違ってたんやなって思って、頭のeのエをめっちゃ強いアクセントを持ってきて

「エネルギー」

って発音し直した。

「そうかっ!そうだったのか~!麻琴先生、それでニタニタしてたのか~!まんまと、ひっかかってもうた」

って思ってたら、ボクの

「エネルギー」

って言い直した発音を聞いて、みんな大爆笑している。麻琴先生もめっちゃ嬉しそうに笑っている。


ボクは

「なんで、そんなに、おかしいんやろな~?」

って思っていた。

でも、英語でみんなの笑いをとっていたから、なんかボクも嬉しかった。


そしたら麻琴先生に

「エナジーやっ!」

ってドヤ顔で言われた。

「えっ?...エナジー?」

ってボクは麻琴先生に聞き返した。

「そうや!正しくはエナジーって発音する!エネルギーはドイツ語やっ!」

って先生に言われた。


「あーっ!そいいえば...エナジーって、なんか、街中でも聞いたことあるわーっ!なんか、商品名でも聞いたことあるわーっ!」

って思って

「麻琴先生は、それでニタニタしてはったんやなーっ」

て、わかった!


と同時に

「なんで、みんな知ってるねんっ?...ボク、めっちゃあほな高校生やんっ」

って思ったけど

「英語の授業で、みんなから、あんなに大爆笑をとれるなんて、ボクってすごいわーっ!」

って、めっちゃ嬉しくなった。

「麻琴先生、ありがとうーっ!」

って、ほんまに思ってしまった。

「ボクをあててくれたおかげやーっ!」

って。


先生は毎年、このenergyって単語で、ひっかかるの誰やろな~って感じで、いつも授業をしてはったんやろなーっ!

それで今日の授業の初めに、ニタニタしながら、みんなのことを眺めていたんやなーっ!て、わかった。


楓ちゃんのこともチラッと見たら、めっちゃ嬉しそうにボクのことを見て、笑ってくれていたから、ボクは楓ちゃんに

「よっしゃ!やってやったでーっ!」

ってガッツポーズを見せた。


「でも麻琴先生も、なんでそんなに嬉しいねんなっ!energyって単語で、ひっかかることを!」

って思ったけど

「たぶん先生も毎年、このenergyって単語を誰に読ますかで、めっちゃ楽しんでるんやろな~」

って思って

「ボクのことをあてて、麻琴先生も良かったな!energyって単語でクラスで笑いをとれて!」

って思って、ボクも、こんなん好きやから、想い出となる麻琴先生の英語の授業やった。


古文の授業で、百人一首の伊勢さんの話も出てきた。

授業を聞きながら

「そういえば、ボクの部屋にいる女流芸術家の女の子は、伊勢さんのお弟子さんやとか、そんなこと言ってたな~」

って思い出した。

休み時間に楓ちゃんに

「ボクの部屋にいる霊の女の子って、なんか、伊勢さんのお弟子さんらしいんやでー」

って言ってみた。

「あっ!そいいえば由菜ちゃんに、そんなこと聞いたことあるわ」

「えーっ?由菜ちゃんに聞いてたんやー」

「うんっ!なんか、そんなこと言ってたなー。あやめっちの部屋には、芸術論を説くような芸術家の女の子の霊いるんやでって...」

「ほんま、そうやねん」


「あやめっちの部屋に行ってみよかな?」

「えーっ?ええよーっ!来てみるー?」

「うんっ、行ってみたい」


高校の授業も終わって、放課後、美術部に行かないで、楓ちゃんとボクの家に帰った。

「ただいま~」

「おかえり~!」

「高校で同じクラスの楓ちゃん」

ってママに楓ちゃんを紹介した。


「あっ!あの、中学の時からいっしょやった楓ちゃん?」

「あっ、そうです」

「あやめっちのこと、これからもよろしくね~」

「あ、はい。こちらこそ、よろしくですー」


それから、2Fのボクの部屋にあがった。

「うわっ!なんだか、めっちゃ可愛らしい雰囲気の霊の存在をやっぱり感じるわー!」

って楓ちゃんも言っている。

「そうやろ~。霊感のないボクでも感じるんやから...」

「ほんまや!うちかて霊感ないのに、入った瞬間に、なにか感じたからな~」

「やっぱり強い霊なんやな~」


部屋で高校の宿題をいっしょにやり始めた。

そしたら楓ちゃんは

「あやめっちの部屋にいると、めっちゃ絵を描きたくなってくる~」

って言って、ノートに絵を描きだした。

「ほんま、それな」

ボクも楓ちゃんといっしょにノートに絵を描きはじめた。

「なんだか、めっちゃうまく描ける気するわー」

って、描きながら楓ちゃんも喜んでる。

「そやろ!わかるわっ!ほんま、そうやねん」


それから夜になっても、その日はふたりでずっと絵を描いていた。


ふとんを並べて寝てたら

「あーっ!だれかに優しく抱きしめられてるでー」

って、楓ちゃんも感じている。

「そやろっ!そうやねん!そのうち顔にキスもしてくるでー」

って言ってたら

「あっ!ほんまや!顔にキスしてくれてるような気するわ...」

って、楓ちゃん。

「うわーっ!なんやなんやーっ!」

って楓ちゃんもびっくりしながらも

「でも、なんか、ええなーっ!」

って言ってるから

「そう?」

って聞いてみたら

「うんっ!なんか、めっちゃ愛されてるような感じするわっ」

「ほんま、それな」









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