高校受験

由菜ちゃんといっしょに同じ高校を受験することにした。

神戸の女子大学の付属女子高。


受験する前に、女子高の説明会に出席して、話をしたら、受験しても良いと言われた。


ある土曜日。由菜ちゃんは家に遊びに来てくれた。

「あやめっち、こんにちはー」

「こんにちはー、由菜ちゃん」


部屋で、いっしょに中学の宿題をやり始めた。

「数学、むずいな~」

って由菜ちゃん。

「ボクはもともと小学生の頃とか、算数好きやったで~」

「えーっ?そうなんやー」

「小学生の算数って、なぞなぞっていうか、パズルっていうか、クイズっていうか、なんか数字の問題を解く感じで、わりと好きやったでー」

「えーっ、ほんまかー!」

「ほんまほんま!」

「ええなー!」

「そうかー?でな、算数の時、黒板に先生、問題を書いて、できた子から先生のところにノート持って行って見せんねん」

「ああ、そうそう、あったなあ」

「そやろ?で、あってたら先生、赤丸くれるやんか」

「うんうん」

「それを1番でもらおうって思ってな、今日も早く解いたるでーって思って、なんか楽しかった」

「10番くらいまでは先生、赤丸の横に何番って書いてくれてたよね」

「そうやねん!それで早く解いて先生のところに持って行ってたわ」

「あははは、わかる」


「でもな、今の大阪の中学って、3年生で習う最初の部分を、もう2年生でやってたやんか」

「そうやねん!数学の先生、そういうとこあるからなー」

「そやからな、ボク、中3の数学の教科書の最初のほう習ってないんやでー」

「うわー!それは、ひどいなー」

「まだ数学わりと好きやから、ええけども、それでも、習ってないとこあるのは受験でちょっと、そこ出たらどうすんねんって思てまうよ」

「ほんまやな」

「だからな、それ以来、ボクは中3で数学の道よりも美術の道のほうを選ぶことにしたような感じやねん」

「そうなんやー!あやめっちは美術、好きそうやし向いてそうやし、実際、絵とかデッサンとか、めっちゃうまいもんなー」

「いや、ほんまに!そやから中3の初めに自分は学問の道ではなくて芸術の道に進もう!って思ったんやもんっ」

「えーっ!そうやったんやー」


「そしたら今の中学でも、美術の先生、めっちゃボクのこと気に入ってくれてて、ボクの描いてる絵やデッサンをいつも嬉しそうに見てくれてるねん」

「あー、なんか、わかるわ!」

「美術の先生、ほんまにボクの描く作品、めっちゃ好きみたいに感じるからなー」

「それな」

「それやし、もともと、美術は好きやから...中学でいちばん好きなん美術やわ...あとは音楽とか体育で...」

「あやめっちらしい」

「そうやろ」


「あっ!そうだ!あやめっち!」

「なに?由菜ちゃん」

「わたしな、家族で沖縄に移住することになってん...」

「えーっ!沖縄にー!」

「そやねん...高校も沖縄の高校に進学することになるわ」

「えーっ!まじかー!沖縄の高校に行くのかー?」

「あやめっちと同じ高校に行きたかったんやけどなっ」

「ほんまやわー!ボクも由菜ちゃんと同じ高校に行くもんやと思ってたもん」

「沖縄の高校に工芸科あるとこあって、そこに行こうかなって思ってる」

「うわっ!知ってるよ!ボクも中2の時、沖縄にいたから...ボクも高校は工芸科に行きたいな~って思ってたからなー」

「えーっ!知ってたんやー」

「中2やったから、高校のこととかも考えてたよっ」

「そやなー」

「ええなー!沖縄!中2の時の友達も、ようけおるでー」

「あったかくて、ええやろなー」

「ほんまに、ええでー!クリスマスやお正月もトレーナー1枚やったもんなー」

「うわっ!ええなー」


年内にも、由菜ちゃんは家族で沖縄に移住することになった。


空港に由菜ちゃんのお見送りに行った。

「沖縄の工芸科で、しっかり学ぶんやでー」

「わかってるー!あやめっちも、美術の道にしっかり進んで行くんやでー」

「うんっ!わかってるよー!」

「ほんまは、あやめっちといっしょに高校生活を送りたかったなー」

「ボクもやー」

「高校生でも、あやめっちの側で、あやめっちのこと、ずっと見て...見守って...うわ~ん」

由菜ちゃんはボクに抱きついてきた。ギュッと優しく抱きしめてくれた。


「また会えるよー!ボクも沖縄行ったり、由菜ちゃんもまた大阪に来たりすればええんやから...」

「そやなー!沖縄にも来てなー」

「うんっ!行くよー!由菜ちゃんもまた大阪にも来てなー」

「うんっ!また来るわー!あやめっちにこれあげる」

由菜ちゃんはカバンの中からプーさんのぬいぐるみを取り出した。

「わたしだと思って、話しかけてきてねー」

って言って、プーさんをボクに渡してくれた。

「みきゃんとシーサーの間に置いといてねー」

「うんっ、わかった!ボクも由菜ちゃんに...」

ミニーちゃんのぬいぐるみを由菜ちゃんに渡した。

「うわ~ん、ありがとう~!あやめっちだと思って、いつもチューしちゃおっ!」

って言いながら、ミニーちゃんにチュッてしてた。

そして、その勢いで、ボクにもチュッてしてくれた。


それから由菜ちゃんのママ、ボクのところにやって来た。

「あやめっちさんのお家は、いろんな霊の方々に見守られてる立派なお家ですよ!由緒ある場所のようです...」

って、言いに来てくれた。

「あっ!ありがとうございます」

「見たところ、あやめっちさんのお部屋も、とても優しい雰囲気に包まれていました」

「そうなんですか...」

「はいっ!優しくもあり、きびしくもあり...」

「あ~、なんとなく、わかります...」

「そうでしょ...きびしいっていうのは、どういうことか、わかりますか?」

「芸術的なきびしさでしょうか...」

「まさに、その通り...芸術的な精神の広がりを説いていらっしゃるようですね!あやめっちさんのお部屋のお方は...」

「あっ!なんか、よくわかります!ボクも、そんな感じをしていますから...あっ、そうだ!」

「なんでしょうか?」

「ひとつ、お聞きしたいのですけど...」

「はいっ...」

「あの...ボクは、共存すべきだって思ってるんですけど、当たってますか?それで、よろしいんでしょうか?」

「そうですね!そういう場所なんだと思います...」

「ありがとうございます」

「なんか、とってもきびしいけど優しい...そんな強力な方々に守られているお家のようですね...いろんな方々のお集まりになる場所のようです...」


「あやめっちバイバ~イ!またね~!」

「バイバ~イ!またね~!由菜ち~ゃん」


飛行機は那覇に向かって飛び立って行った。



高校受験当日は、受験する女子高の先生方や先輩方みんな応援してくれていて、めっちゃ落ち着いて受験することできた。

中学の先生やクラスのみんなも、ボクの受験を応援してくれた。


合格したら、中学のみんな、めっちゃ喜んでくれた。

ボクの合格に関しては、みんな半信半疑だったみたいで、どうなるんやろうな~って感じで見守ってくれてたけど、見事合格できたら、学校に行っても、まわりのみんな

「良かったねーっ!」

「すごいやんっ!」

ってめっちゃ喜んでくれてる。


高校に書類を提出しに行ったら、春からの副担任になられる女の先生、前にどこかで会ったことあるような気するな~って思った。

そしたら、先生のほうから

「あらっ、もしかして、あやめっちちゃう?西表島の時の...」

ってボクに言ってきた。

「あーっ、西表島の時のお姉さん!」


西表島で出会った女子高生のお姉さんだった。

「久しぶり~。また会えたわね~」

「よろしくお願いします~」


そのあと、中之島美術館に行った。

色んな絵を見てまわった。


部屋の霊の女の子も、高校生になって、喜んでくれているように感じている。






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