伊勢さん

その日は、由菜ちゃんと空里と3人で、ボクの部屋で過ごしている。

空里は、ボクの部屋に存在している霊の女の子の甘くて優しい雰囲気をめっちゃ気に入っている。

夜、11時になったから、ふとんを並べて、由菜ちゃんと空里といっしょに3人並んで寝ることにした。


「あっ、来た!」

って由菜ちゃん。

時間を見たら、やっぱり11:11


「うわ~、抱きしめられてるみたいやわ~」

「そうやろ~。いつも優しく愛撫してくるんやで~」


「なんとなく顔にキスされてるのも感じる~」

「そうやねん!キスの好きな女の子みたいやねんな~」


空里は、どうしてるのかなーって思ってみてみたら、めっちゃ安心しきった顔をして、スースーと気持ち良さそうに眠っている。


「絵の好きな女の子やわ~。伊勢さんの弟子って言ってる」

「伊勢さん?」

「百人一首とかの伊勢さん。その伊勢さんをめっちゃ慕っている女の子みたい...」


「なんで、いつも、あらわれるんやろな~?」

「この部屋に住んでるみたいやね。この場所を愛してるみたい。だから、今この部屋にいるあやめっちを毎晩愛撫してるみたいやな」

「え~、そうなんや~?ボクは霊の女の子のことは、毎晩抱きしめられてキスされてるような感覚でしか感じることないから、由菜ちゃんみたいに詳しくはわからへんからな~」

「そうか~」

「あとは部屋にいると、なんだかめっちゃ絵を描きたくなってくるから、もしかしたら、霊の女の子は女流画家みたいな芸術家なのかな~って思うくらいで...」

「あやめっちのお役に立てて良かったわ」

「ほんまそうやわ!ありがとう!なんとなく甘くて優しい雰囲気からして女の子なのかな~っていう感じと、あとはなんとなく芸術論をボクに説いてくれてるように感じるから芸術家なのかな~って思うくらいで...」

「うん!なんとなく『芸術にもっともっと意識を高く持つように』って説いてるね」

「やっぱ、そうやろ~?それはほんまにめっちゃ感じるねんなー」

「わかるわかる!『宇宙へと広がっていくような高い意識を芸術に対して持ってほしい』って説いてくれてはるように感じるね」

「ほんまそれな!由菜ちゃんにも、わかってもらえて嬉しいわ」

「あやめっちのお師匠さんみたいな女の子やな~」

「えーっ?由菜ちゃんも、やっぱりそう思う?」

「うん!思う!あやめっちは、女の子のお弟子さんなのかもしれへんな~」

「そうなんかな~」

「そんな感じしてくるわ~」

「あははは、同じように感じてもらえて、めっちゃ嬉しいわ」


「あっ、存在感なくなってもた」

って由菜ちゃん言うから、時間を見たら、ちょうど0時だった。

「そうやねん。いつも0時にいなくなる」


それから、その日は朝まで3人で寝ていた。

チュンチュンっていう可愛いトリさんの声で目覚めた。


由菜ちゃんは横で絵を描いている。

「あっ、おはよう。由菜ちゃん」

「あやめっち、おはよう~」

「なに描いてるの?」

「はいっ」

って言って由菜ちゃんはボクに描いてる絵を見せてくれた。

「あーっ!女の子やな~」

「うん!着物姿の女の子」

「霊の女の子なん?」

「たぶん、なんとなく、そんな感じかな」

「へぇー、こんな感じの女の子なのか~。なんか可愛い」

「あやめっちの部屋にいると寝てても絵を描きたくなってまうわ~」

「そやろ~。ほんまに寝ても覚めてもって感じやもんな」

「あははは、ほんまそれなー」


「空里はめっちゃ寝てるし...」

「ほんまやな~可愛いな~」

「空里は水泳めっちゃ得意やねん」

「へぇー、そうなんや」

「うんっ!水泳では空里には勝たれへん」

「めっちゃ泳げるんや」

「うんっ!しかも飛び込みもきれいやからな~」

「ええな~」

「そやな~...まだ寝てるわ」

「あははは」


なんとなく、由菜ちゃんとキスしたくなってきた。

由菜ちゃんも、ボクと同じような感じやった。

由菜ちゃんの側にいってチュッてした。


「う~ん...」

って言って、空里はふとんの中から両手を伸ばしている。

「あっ?起きたん?」

って言ったら、パチッて目を開けて

「あ~!今ふたりでキスしてたやろ?」


「なんで空里はキスしてると、いつもわかるん?」

「あーっ!やっぱりそうなんやー!きゃあああ!わたしもおるのに~」

「空里はずっとスースー寝てたやないのー」


「ええな~、あやめっちはいつもキスしてて...」

「いつもはしてへんよ」


「空里ちゃん、おはよー」

「あっ!由菜ちゃん、おはよー!寝れた?」

「うん!よう寝れたよ」

「よく寝れるなー、あやめっちの部屋で...」


「いちばん寝てたの空里やないの」

「えへへ」

「部屋に来て、もうすぐ寝てたで~」

「部屋に来てすぐは寝てへんよ!ふとんの中に入ったら、すぐ寝てもーた!あやめっちの部屋は甘い雰囲気ただよってるからな~」

「そうなん?」

「そうやで~!あっそうや!部屋に戻って勉強しよっ!ふたりのじゃましててもわるいし...」

そう言って空里は自分の部屋に戻っていった。


と思ったら、ノートとペンを持って、すぐまたボクの部屋に入ってきた。

「あやめっちの部屋で、たまには絵でも描いてみよーっと...」

って言って、ふとんの上に座ってノートを広げていた。

「何を描こうかなー」

って、ボクの部屋を見渡している。

「あれ?」

「どしたん?」

「みきゃんとシーサーの間にあった、ハワイかどっかのダンサーさんの女の子のお人形さん、なくなってる~」

「あーっ、あれな、ソラッチに返してん」

「ソラッチに返した?」

「うん!『マジカルわーるど』のソラッチのお人形さんやったから、持ち主に返したのっ」

「えーっ?なんでー?なんで、あのお人形さん、ソラッチのお人形さんなのー?」

「ソラッチ、ちっちゃい頃、この家で生まれたみたいやねん」

「えーっ?この家でー?」

「うんっ!」

「ソラッチちっちゃい頃この家に住んでたの~?」

「そうやねん」

「えーっ?ほんまにー?」

「あのお人形さん、ユーナちゃんっていうんやけど、この家にいた頃ソラッチはユーナちゃんのこと、どっかでなくして、ずっと探してたみたいで、ユーナちゃんをソラッチのもとに返してあげたんやでー」

「えーっ、そうやったんやー!すごいなー!あやめっちも」

「由菜ちゃんのおかげでなっ」

「えーっ、やっぱり由菜ちゃんやったんや~すごいのはー」

「まあな」

「あやめっちじゃなくて、すごいのは、やっぱり由菜ちゃんなんやなっ」

「ええやろ~どっちでも...」


「あやめっちにそんな能力あるとは思われへんもんなっ」

「ユーナちゃんを見つけたんはボクなんやで」

「それは知ってるよ...」

「見つけたボクもすごいやんかー」

「ってことは、あやめっちと由菜ちゃんとの共同作業やったんやな~」

「まあな」


「ユーナちゃんも良かったなー!前の持ち主のソラッチのもとに帰れて!」

「そうやなー」

「あやめっちのもとじゃなくて...」

「ほっといてくれるー」

「よっぽど、あやめっちのもとじゃなくて、ソラッチのもとに帰りたかったんやろなー」

「ええから、そんなことは、どっちでも...」


「でも、お湯できれいに洗ってくれたあやめっちのことも、きっとユーナちゃん、好きやったと思うで~」

「どっちやねんな」

「ユーナちゃん、みきゃんとシーサーとの間にはさまれて、いつも嬉しそうに笑ってたように見えてたもんなー」

「そうやろー」

「でも、あやめっちじゃなくて、あやめっちの部屋にいる霊の女の子の力なのかもな?」

「結局どっちやねんな?」

「あやめっちの夢の中にユーナちゃんあらわれたのも、霊の女の子のパワーなのかも...」

「探して見つけれたんやから、みんなのおかげなのっ」

「そやな~この部屋にいるみんなのおかげなんやな~」

「空里は何もしてないやんかっ!」

「あはは、そうやったっけ?」

「そうなのーっ!」












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