着物
ボクのパパはアメリカ人と日本人とのハーフ。おじいちゃまはアメリカ人。おばあちゃまは日本人。パパはサンフランシスコ生まれのサンフランシスコ育ち。
サンフランシスコの高校を卒業してから、日本のこと好きすぎて、京都の大学に留学でやって来た。
ちっちゃい頃から日本のアニメや漫画で育ったパパも、まわりのアメリカ人と同様に、日本のことを自然に好きになっていってたみたいだ。
京都に住んでいた時に、大阪にいたママと合コンで出会ったらしい。
パパの一目惚れってやつで、パッとママを見た一瞬で、パパはママのことを好きになってしまったらしい。
パパのほうのおじいちゃまはアメリカでミュージシャンをやっていた。いろんな数多くのミュージシャンたちとセッションしていたらしい。
だからパパも音楽も好きで、家にもいろんな楽器を持っている。ギターもいろんな種類のギターを持ってて、日曜日とかには部屋でよくギターを弾いたりしている。
あと、普段から、よく英語の歌を歌っている。
ロカビリーやロックやジャズなんかの曲を英語で歌ってる。
お風呂に入っている時も、いっしょにみんなでリビングでご飯を食べてる時とかも、よく英語の歌を歌っている。
そんな時には、ママも嬉しそうに、顔をほんのりと紅くして、うっとりとパパの歌っている曲を聴いている。だから、きっと、ふたりの想い出の曲なのかなあ~って思っている。
おばあちゃまはサンフランシスコでアクセサリーのお店をやっている。ケーブルカーの走っている道沿いの良き場所に、お店ある。
ボクは今、大阪の中学の3年生なので、もうすぐ高校受験だ。
親友の由菜ちゃんも土曜日には家に来てくれている。夜ご飯をいっしょに食べて、それから宿題をやったりしている。
「なんだか勉強してても、めっちゃ絵を描きたくなるわ~」
って由菜ちゃん。
「それな!あっ、それでか!由菜ちゃんも美術好きやから、喜んでくれてるのかな?」
「美術好きな霊のように感じるね!部屋中、そういう気持ちに溢れてる...」
ボクの部屋に存在していると思われる、芸術家っぽい女の子も、由菜ちゃんのことは好きみたいなのだ。由菜ちゃん、部屋に来てくれると、その女の子もめっちゃ喜んでいるみたい。
それから由菜ちゃんはノートに絵を描きはじめた。
「着物の女の子?」
「うん。なんか、そんな絵を描きたくなる」
って言って、由菜ちゃんは着物姿の女の子の絵を描いている。
「じゃ、ボクも何か絵を描こう!たしかに、この部屋にいると、勉強してても、めっちゃ絵を描きたくなるんだよねー」
ボクも中学の近くの風景画の続きを描きはじめた。
「着物姿の女の子も、あのハワイのお人形さんの戻って来たことを喜んでるみたい...」
って由菜ちゃんは言った。
「えっ?着物姿の女の子って、ボクの部屋に存在してくれてる、芸術家の女の子のこと?」
「そうやで~。その女の子やで」
「その女の子も、あのハワイのお人形さんのことを知っているのか~?」
「ソラッチといっしょに、ずっと探してたって言ってるよ」
「ふ~ん、そうなのか...」
「その女の子は、あやめっちにお人形探し出してくれて、そしてソラッチに渡してくれて、ありがとうだって...」
「ってことは~、その着物姿の女の子は、ソラッチのいた頃から、この部屋に存在していたのかな?」
「うんっ!そうみたい。ソラッチといっしょに、この部屋にいたみたい...」
しばらくして、大阪で、「マジカルわーるど」の新曲のリリースイベントおこなわることになった。運営からスケジュールの発表あった。
リリースイベントの日に、ソラッチに会いに行ってみた。
新曲のライブのあと、握手会でソラッチに会いに行った。
「あーっ!あやめっち!また来てくれたー!こんにちはー」
ソラッチはボクの顔を見ると、めっちゃ喜んでくれた。
「こんにちはーソラッチ!また来たよー」
そして
「大阪に住んでた頃、ソラッチの部屋に、着物姿の女の子の霊を感じてたりした?」
って聞いてみた。
「うんっ!いつも部屋で見守ってくれてる感じだった...」
「うわっ!やっぱりそうなんや!今も、ボクの部屋にいるみたいなんだよー」
「えーっ?ほんとにー?」
「うんっ!ソラッチ、なんで、その女の子、着物姿やって、わかったの?」
「なんとなくだよー!なんとかく着物を着てる女の子のような感じしてた...」
「えーっ、そうなんやー」
「今も、あやめっちの部屋にいるんだねー」
「そうなんだよー!ボクに、お人形さんのユーナちゃんを見つけてくれて、そしてソラッチに渡してくれて、ありがとう!だって...」
「あーっ!そういえば、いっしょにユーナちゃんを探してくれてたような気していたよ~」
「えーっ、やっぱり~」
「その女の子に、よろしく言っておいてね~」
「うんっ!わかった!」
「あと、いつもありがとう!って、お礼も言っておいてねっ」
「うんっ!言っておくね」
そして次の土曜日に、また由菜ちゃんに部屋に来てもらった。
そして、由菜ちゃんから、霊の女の子に、ソラッチの言葉を伝えてもらった。
霊の女の子も、ひさしぶりにソラッチとも、つながることできて、めちゃめちゃ喜んでいるらしい。
「由菜ちゃん、ありがとねー」
「えっ?いいよー」
「由菜ちゃんのおかげで、いろいろ部屋の女の子のこととかも、わかったし...」
「うんっ!良かったね」
「まさか、ソラッチも、ちっちゃい頃に、この部屋に住んでいたなんて...」
「ねーっ!この家には、何か不思議なパワーあるねっ!」
「昔から、いろんな人と人との集まる場所やったんかもな~」
「そうみたいやな~」
それから、なんとなく、由菜ちゃんとキスしたくなった。
由菜ちゃんも、なんとなく、ボクと同じような気持ちになってるように感じた。
由菜ちゃんに
「キスしてもええ?」
って聞いてみた。
「えっ?ええよ...」
由菜ちゃんにチュッてキスした。
部屋にフワッと甘い香り、ただよってきた。
あっ!もしかして、部屋にいる霊の女の子も、ふたりのことを祝福してくれてるに違いないって思えた。
トントンッ
てドアをたたく音した。
「はーい!たぶん空里やろ?」
「入ってもええ?」
「ええよー」
「ほんまに、ええのー?」
「ええでー」
「ほんまに?...今、すぐ入ってまうでー」
「ええって言ってるやろ」
「だいじょうぶなん?」
「なんで?」
「じゃ入るでー」
「どうぞー」
ドアをガバッと開けて、部屋に空里、入って来た。
「由菜ちゃん、こんにちはー...あっ、こんばんはーやった」
「空里ちゃん、こんにちはー...あっ、こんばんはー」
「ふたりで何してたん?」
「ええから...何してても、ええやろっ!何の用なん?」
「べつに用はないけど、何してんのかな~って思って...」
「ええねんっ!何でも...」
「うわっ!その言い方やと、キスしてたんやな?」
「ええやろ!キスしてても...」
「ええけども...ちょっとあやめっちの部屋にいさせてくれる?」
「どしたん?」
「あやめっちの部屋にいると、なんかめっちゃ落ち着くねんな~」
「なんで?」
「なんか、甘くて優しい香りしてるし...」
「えっ?空里の部屋にいても、わかるん?」
「わかるよー!あやめっちの部屋のほうから、甘くて優し~い香りしてくるんやから...」
「えっ?ほんまに?」
「ほんまほんま...今も、その甘い香りに誘われて、あやめっちの部屋に吸い寄せられるように来たんやから...」
「部屋に存在してる、芸術家のような霊の女の子のせいなんかな~」
「いいな~、あやめっちの部屋は、可愛い女の子で...」
「えっ?空里の部屋は?」
「わたしの部屋?」
「空里の部屋にも、何かしら、誰かしら、いてはるの?」
「いてはるよー」
「えーっ?どんな人なん?」
「えっとね~、勉強したくなるような感じかな?」
「えーっ?なにそれー?」
「だから~...部屋にいると勉強したくなってくるから、それはええんやけど~、今みたいに、あやめっちの部屋から甘く優しい香りしてくると、そっちにも行きたくなるねんな~」
「えーっ!そうなんやーっ!」
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