由菜

修学旅行で善光寺に行ってからは、中学でも女子の友達いっぱいできて、学校でもいつも友達といっしょに過ごすようになった。

善光寺の御利益なのでしょうか...

女子高生のお姉さん3人組にかけてもらった、親友のできる魔法も効いてきたからなのか...


ちっちゃい頃から女の子みたいなボクだけど、中3になった今も、体育の着替えも女子といっしょにやって、体育の授業も女子のほうに出てる。


高梨さんと高津さんは美術部やったから、ふたりに誘われてボクも美術部に入った。もう中3で、そろそろ秋なんだけど。

美術の先生も、美術部のみんなも、ボクの描く絵をめっちゃ気に入ってくれている。

学校でも、いちばん好きな教科は美術かも。あとは音楽とか体育とか。

中学生卒業までは美術部にいて絵を描いていくでー!って思ってる。


中学のまわりには古墳もあったり森もあったりして、ボクも放課後、風景画を描いたりもしている。


高梨由菜ちゃんに

「ボクの部屋に霊いるんだよ~」

って言ってみたら

「じゃあ、ちょっと部屋に行ってみる~」

って言ってくれて、学校の帰りにいっしょにボクの部屋に来てくれた。


家に着くなり

「このお家にも、全体に大きな霊を感じるね~」

って由菜ちゃんは言った。

「わかるの~?」

「わかるよ。お家を包みこんでるね。お庭にも玄関にも霊いるね」


それから、玄関を入って、階段を登ったら

「2Fにも、なんかめっちゃ強力な霊を感じる...」

って由菜ちゃんは言う。


階段をかけ登ってボクの部屋に入ったら

「きゃあ、この部屋、めっちゃ霊、感じる。あっ、こんにちは~」

って、ボクのお人形さんにあいさつしている。ハワイのダンサーさんみたいな可愛い女の子のお人形。

「お人形さん、『いらっしゃい』って喜んでくれてる」

「え~、そうなんや...」


「そうやで~。あやめっちにも『ありがとう』って、めっちゃお礼を言ってるよ」

「ほんま?」

「ほんま~!あやめっち、もしかして、このお人形さんのこと、どっかで見つけたんとちゃうの?」

「えっ?そうやけど」

「お人形さんは『あやめっちに見つけてくれて、ありがとう』ってめっちゃ感謝してるみたいやで」

「えーっ?そうなんー?」

「うんっ!もしかして裏庭とかとちゃう?泥んこになってたのを、あやめっち、見つけてくれて、きれいに洗ってくれたから、めっちゃ喜んでるよ」

「うわー!そうやねん。裏庭で泥んこのお人形さん見つけて、お湯で洗ってあげたら、なんか笑ってた」

「そやろ~」

「ほんまに笑ってくれてたんやなー」


「あやめっちの夢に、このお人形さん、あらわれた感じちゃう?」

「うんっ!最初は夢に出てきてたっ」

「そやろ。やっぱりな」

「わかるの?」

「わかるよっ!」

「名前とかも、わかったりする?」

あやめっちに、そう言われて、お人形さんのことをじっと見つめてみた。


「えっとね~、ソラッチかな...」

「えっ?ソラッチ?」

「うんっ!ソラッチって呼ばれてるみたいやで」

「えーっ?ソラッチなんやー!」

あやめっち、めっちゃビックリしてるから

「なんで?ソラッチって知ってたん?」

って、あやめっちに聞いてみた。

「いや、ソラッチっていう名前のアイドルの子をボクは推してるから、同じ名前やーって思って...」

「へぇー、同じ名前なんや?」

「うんっ!たまたま同じなんやろな?」

って、あやめっちに聞かれて、うちも、お人形さんをじっと見つめてみたけど

「まあ、たぶん、そのアイドルの推しの子とは、偶然、同じ名前だったんやと思うけども...」

「そうなんや...」

「あっ、まてよー。もしかしたら、お人形さんの最初の持ち主の子も、そのソラッチのことを推してて、お人形さんをソラッチって呼んでたのかもしれへんな~」

「えーっ?ほんま?」

「うんっ!そんな感じするわ...」

って言って、お人形さんのことを見たけど、なんか、ちょっとちがうような気もしてくる。


「え~っとね~。ソラッチっていうのは、このお人形さんの最初の持ち主なのかも...」

「えーっ!お人形さんの最初の持ち主、ソラッチなのー?」

「そんな気してきたっ!お人形さんはユーナちゃんっていうのかも?」

「えーっ、お人形さんはユーナちゃんなの?」

「うんっ!ソラッチっていう子の持ってたお人形さんで、ソラッチっていう子は、このお人形さんのことをユーナちゃんって呼んでたみたいな気するわ...」

そう、あやめっちに説明して、お人形さんを見たら、なんとなくめっちゃ笑ってくれてるように思えた。


「えーっ?由菜ちゃん、そんなことまでわかるなんて、すごいなー」

って、あやめっちに言われて

「なんかな、このユーナちゃんっていうお人形さんの両側にいる、みきゃんとシーサーのぬいぐるみも、わたしに、そう教えてくれてるみたいやねんな~」

「えーっ?みきゃんとシーサーも?」

「そやねん。みきゃんとシーサーも、このユーナちゃんのことを両側で見守ってくれてるような感じやな~」


「なんで、わかるの?」

って、あやめっちに聞かれた。あやめっちは、ずっとめっちゃ不思議そうな感じで、わたしの話を聞いていた。

「霊感めっちゃ強いからかな!」

「へぇー、そうやったんや」

「うんっ!ママも強くて、こないだも、近くを歩いてたら、たまたま、めっちゃ強力な霊の存在を感じる家あったって言ってた...」

「へぇー...って、もしかして、家に来たの、由菜ちゃんのママやったんかな~?」

「えっ?あやめっちの家に、誰か来たん?」

「うんっ!ボクはその時いなかったけど、たまたま家の近くを通りかかった霊感の強い女の人いて、家にまで来てくれて『こんなに強力な霊の存在を感じる家を見たことないですよ~』って、言ってたらしいねん」

「うわー!それ、たぶんママかもしれへんわっ!ママなんやわーっ!きっと」


それから数日後に、大阪でアイドルフェスあって、ボクの推してる「マジカルわーるど」も出演する予定になっていた。

ボクは由菜ちゃんといっしょに「マジカルわーるど」のライブを観に、タイムテーブルに合わせて、ライブ会場に行ってみた。

ピンクのサイリウムを持っていってたから、ライブ始まったら、それを振りまくっていた。ステージ上からも、ソラッチ見て、わかるように。

ソラッチもボクのこと、わかってくれてるみたいだ。

ライブ終わって特典会でソラッチに会いに行った。

「うわー!あやめっち、大阪まで会いに来てくれたのー?」

ソラッチも、めっちゃ喜んでくれている。

「今、大阪に住んでるんやでー」

「えーっ?ほんとー?」

「うんっ!京都にめっちゃ近い大阪!」

「えーっ?わたしも、京都にめっちゃ近い大阪で生まれたんだよー」

「えーっ?ほんまにー?」

ボクは、もしかして!って思って、カバンの中から、持ってきていた、お人形さんを取り出した。

そして、ソラッチに、そのお人形さんを見せてみた。

ソラッチは、ボクの手に持った、お人形さんを見るなり

「うわー!ユーナちゃん?ユーナちゃんなの~?」

って、めっちゃびっくりしながらも、めっちゃ嬉しそうに叫んでいる。

他のメンバーたちも

「なんだなんだ?どうしたソラッチ?」

って感じで見ている。

いっしょに来てた由菜ちゃんも、お人形さんとソラッチとボクとを見守ってくれてる感じだ。

ボクは、ソラッチに

「はいっ!」

って、お人形さんを渡した。

ソラッチはボクからお人形さんを受け取ると、ギュッと抱きしめて

「うわーん!ユーナちゃーん!」


ボクに

「ありがとうー!あやめっちー!」

って言うと、お人形さんを見ながら

「うわー!ユーナちゃん!会いたかったよー!」


特典会に来てた、マジカルわーるどのメンバーもファンもスタッフも、みんな、ソラッチのことをあたたかく見つめていた。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る