岐阜・長野

夏休み開けに、修学旅行で岐阜と長野方面に行くことになった。


中3で沖縄から大阪に転校してきたボクは、まだそんなに仲良しの親友もいなかったので、バスに乗ってても、1人で車窓から、山々の雄大な景色を眺めていた。


「うわーっ!すごいーっ!山って大きいなーっ!地球って不思議だなーっ!宇宙って何なんやろなーっ!」

とかって、いろいろと考えてしもーた。

特に誰かと、しゃべってるわけでもないから、ひとりで勝手に頭の中で、自分だけで考えを広げていた。

中1の松山は梅津寺の海も近くて、きれいな瀬戸内海。

中2の那覇は、沖縄っていう、ひとつの島やから、まわりを海にかこまれている。

今、中3の修学旅行で、山々の連なってる場所をバスで移動している。

「地球には海もあるし山もあるし、いろんな動物も住んでいるな~」


善光寺に着いても、たまたま1人で歩いていた。

そしたら、1人で歩いていて、さびしそうに見えたのか、女子高生のお姉さん3人組に声をかけられた。

「中学生?」

「修学旅行?」

「なんで1人なの?」


「中3で転校して、学校には女の子の友達は普通にいっぱいいるんだけど、まだまだ親友って言える子は、たしかにいないんで...」

って説明する感じになった。

お姉さんたちは

「じゃあ、親友のできる魔法をかけておくわね~」

って言って、3人でボクの回りをくるくる回って

「はいっ、魔法かけといたよ~」

「じゃあね~」

「バイバ~イ」

って笑って歩いて行った。


しばらく1人で、また善光寺を歩いていたら、いきなり、後ろから来たクラスの女子たちに順番にギュッと抱きしめられて

「あやめっち、なに、1人で歩いてるの?いっしょに行くよ~」

って言われた。

それから女子たちといっしょに善光寺を歩いて、おみやげ屋さんで

「牛にひかれて善光寺詣り」

って描かれた湯呑みを買った。


宿舎に着いて、夜は女子とお風呂に入った。

みんな何も気にしてなくて良かった。

普通に、みんなといっしょにお風呂に入っていられる。

ていうか、みんな

「女子みたいで可愛い~」

って言ってくれてる。

その中でも、高梨さんと高津さんは、ボクの側に来て、お風呂の中で、ぴったりボクにくっついている。

高梨さんは

「あやめっちは女子なの?」

って、はっきり聞いてきた。

「えっ?...」

「自分で女子って思うんなら、女子でいいんだよ...きっと」

「あっ...ありがとう」


お風呂からあがって女子の部屋に行った。

「あやめっちは何色好きなん?」

って高梨さんに聞かれた。

「えーとね...好きなんはピンクかな」

「あっ、うちもピンクかな」


「動物だと好きなの、なに?」

「わんちゃんもネコちゃんも好きだし...でも鳥さんの飛んでるとこ見てるのも好きっ」

「あっ、わかる...それな...鳥さん空で列になってたり、2羽で仲良く飛んでたりしてるの見てるの、おもろいよねー」

「そうそう...鳥さんたち、空で1列になって飛んでたり、Vの字になって飛んでたりして、見てて、めっちゃおもろいわ~」

「ほんまに、きれいに飛んではるもんなー」

「あと、2羽とかで飛んでるのも、めっちゃ仲良く見えるでー」

「そやなー、ほんま可愛いなー」

「鳥でもええなーって思ったりするもんなー!鳥の飛んでるのを見てると...」

「ほんま、それなー」


「あやめっちは、どこで生まれたん?」

「生まれたのはロンドン」

「えーっ?ロンドン生まれなん?」

「そうやでー」

「えーっ!すごいなー」

「ロンドンの次にパリに行って、それから広島に行って幼稚園に入った」

「うわっ!パリにも住んでたんや?」

「うんっ!幼稚園に行く前やから、そんなには覚えてないんやけども」

「へぇー、そして広島の幼稚園に行ったんやな?」

「うんっ!で、そのあと福島県郡山市の幼稚園に行って~」

「えーっ、広島と郡山の幼稚園に行ったん?」

「そやで。それから郡山の小学校に入って、小3まで郡山に住んでて、小4で愛媛県松山市の小学校に転校になってん...」

「へぇー、いろいろ行ってるんやなー」

「中2で沖縄にも行ったしなー」

「いいなー沖縄も」

「うんっ!沖縄も、めっちゃ良かった」

「ええなー、沖縄に住んでみたいわ」

「あははは...愛媛もミカン美味しくて、ええとこやったでー」

「あーっ、愛媛のミカンねー」

「郡山にいる時は、お正月にスパリゾートハワイアンズに行って泊まったし」

「うわっ!ええなーっ!ハワイアンズ」

「うんっ!あと広島も、宮島とか瀬戸内海の景色めっちゃきれいやでー」

「いいなー広島!宮島とかも行ってみたいー!海の中の鳥居」

「なんとなくモン・サン・ミッシェルっぽい」

「モン・サン・ミッシェル?」

「うんっ!フランスにあんねん!そういうところ...」

「えーっ!フランスにも行きたいー」

「フランスには美術館も多いし、いいとこやでー」

「ええなー!あとロンドンにも行ってみたいわー」

「ロンドンも結構エキサイティングな街やでー」

「そうなんやー」


それから女子の部屋で寝た。

高梨さんと高津さんとの間にはさまれて寝た。

ふたりは、ずっとボクのことを見つめてくれていた。

ふたりと手をつなぎながら寝た。


帰りは電車の中で、女子の友達みんなとしゃべりながら、大阪の中学に戻った。

「あやめっちって、ずっと女の子みたいやったん?」

「そうやな~」

「ちっちゃい頃から?」

「そうやで」

「幼稚園の時も?」

「幼稚園の時なんて、ぜったい女の子みたいやったで~」

「ほんま?」

「リカちゃん人形とかバービー人形を集めてて、お人形で遊んでいたからな~」

「へぇー」

「友達も女の子ばっかりで、幼稚園でも家でも、いつも女の子といっしょに遊んでいたもん」


「小学生の頃も?」

「小学生の頃も、可愛いお人形を集めていて、学校にも持って行ってて、小学校でも、やっぱりいつも女の子といっしょに行動していたからねー」

「そうなんや」

「小4からは少年少女合唱団に入って歌を歌ってた」

「えーっ、あやめっち、合唱団に入ってたの?」

「うんっ!あと走るの速くてリレーの選手やった」

「おーっ!いいねー」

「ダンスも好きやったし、楽器を弾くのも好きやったなー」

「うわー!ええなー」


「でも小学校で妹の友達に会っても、みんなボクのことをお姉ちゃんやと思ってて、妹はそれをめっちゃ不思議がっていた...」

「へぇー」

「不思議がってたっていうか、妹もボクのことは女の子みたいやって思っていたから、やっぱりみんなも女の子やと思うんやな~って感じで...」

「みんなからもお姉ちゃんって見えてるんやな~って思ってたんやろな」


「妹は、走る速さではボクに勝たれへんから、小2の夏休みに水泳教室に通っていて、それからは、めっちゃ泳げるようになってて、水泳ではボクは妹に勝たれへんようになったからな~」

「あははは、可愛いなー」

「そうかな~?」

「うんっ!可愛い~。たぶん、そんな女の子みたいな、あやめっちのことも妹さんは、きっと好きなんやと思うでー」

「そうなん?」

「たぶん、女の子みたいなあやめっちで良いって、思ってはるで」

「うん!まあ、そんな感じはするけども...中学生になって中2の時に沖縄に行っても、沖縄の妹の友達もみんなボクを女の子やと思ってたから、全国的にボクは女の子に見えるんやな~って思ってたみたい...」

「あははは、全国的にって笑える」


「妹はパリ生まれやから、その時もボクは女の子みたいやから、全国的にっていうよりも世界的にって思ってるのかもね」

「あはは、きっと、そうなんやろなー。めっちゃ可愛いやんっ」

「まあな。ボクもちっちゃい頃から家では、いつもずっと妹と遊んでいたからなー」

「仲良しなんやな」

「そやなー」

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