幕間

ノックスの目指すもの

 ノックス・イングラムにはいつか越えると心に決めた存在がいる。


 現マギノリアス統一国宰相兼騎士団参謀部主幹のリリアナ・バレンシュタインだ。

 ノックスが初めてリリアナと出会ったのは、ノックスが五歳の時に二人の兄を含めた魔導の教育係として顔を見せた時だった。


 その頃のノックスは二人の兄から使える魔導を試すための標的まととなっていた。

両親は二人の兄がノックスを魔導によって痛めつけているのを見て何一つ口を出さなかった。それどころか兄二人に人を攻撃する時の方法を教えてノックスをより痛めつけた。


 兄からも親からも家族として認められずノックスは自分が痛めつけられる無力な人間でしかないと認識していた。

 それまでの無力なノックスの価値観を教育係であるリリアナは一変させたリリアナから魔導師の素質センスではなく魔導師を使う才能を見出され、その技術を磨き続けた。


 正式にリリアナの弟子として認められたノックスは魔導師を使う戦いにおいての戦術と戦略、人の行動を操作する心理学を徹底的に叩き込まれた。

 弟弟子のルークは自分の持つ才能だけでなく自分にない魔導の素質も持ち合わせていた。

 それが目障りでノックスはひたすら魔導師を手玉に取る技術を磨いた。


 自分の才能を見出してくれたリリアナが学生時代に達成したバレンシュタイン魔導学院設立以来二人目の各年次主席成績。そして歴代の学院各年次主席成績で卒業した学生が達成できなかった総合獲得点数の十万点突破。


 この功績を残せば今まで自分を見下した家族、家柄だけの最弱とさげすみ続けた貴族はノックスの存在を認めざるを得ない。そしてマギノリアス統一国の政治を牛耳ぎゅうじる存在の代表である宰相への一番の近道になる。


 今まで見下し蔑んできた人間を自らの知恵ちからで、自らの手を汚さずに駒として使い、捨て駒となるまで使い潰す。

 死ぬまでノックス自身の利益のために動かし、自分に楯突く者は死ぬよりも凄惨な苦痛を味わわせる。


 ノックスの理想とする真の平和な国と国民の正しい秩序を体現するために使えるものは全て使う。

 いつもノックスに突っかかるポラリスと学生時代の間は同じ目標に向かって戦う相棒バディーとして、ポラリスの今まで評価されなかった素質を最大限に生かし目標を達成する。


 一蓮托生の相棒であるポラリスを最大限に生かせるのは自分しかいない自負があるからこの目標を立てられた。

だからこそノックスはこれからの目標のためにこんなところで倒れるわけにはいかない。

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