したいが埋まるトンネル

「今晩はー!今日は深夜のトンネルに来てみました!」


 自撮り棒片手に一人の男が言った。


「なんと!このトンネルは曰く付きで、殺人鬼に強姦されて殺された女性の遺体が埋められているそうなんですよね。だから、出るんですよ。女性の幽霊が」


 何故、死体を埋められている場所が分かるのか。答えは単純だ。


 季節は夏。

 湿度は高く、じめじめしている。

 気温はいやに低く、長袖を着てくれば良かったと後悔しながら、話を続ける。


「と、言うわけで、連れてきました!こちら!殺人鬼君です!イエーイ!」


 反対の手には縄が握られていて、肢体を切り裂かれた男が繋がっている。


「それでは入っていきましょう!」


 歩みを進めると、殺人鬼が暴れ始めた。


「おやおや?どうしたんでしょうね?呪いか何かかな?」


 残念な事に、自撮り棒を持つ男には声も聞こえないし、姿も見えない。

 本当に残念だ。


 そして、トンネルを出た後には、殺人鬼は気絶していた。


「やれやれ。起きろ」


 腹を蹴ると、殺人鬼は目を覚ました。


「ほら、これがお前の両腕と両足だ」


 リュックの中から取り出して、見せつけた。

 それを、近くにいた犬に喰わせた。

 喰い終わった犬は倒れて死んだ。


 殺人鬼の顔色は悪くなっていく。


「犬には効くのか。この毒」

  

 死なない程度の毒でじわじわと苦しめている。

 犬に効くのは想定外だったが。


 そして、もと来たトンネルを戻り始めると。


『あ、りが』


 何か、声が聞こえたような気がした。



 そのあとは、海で窒息死させて、海に流した。



〈終〉

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