異世界転移して40年

 俺は悪いことなんてしてないはずだ。

 

 それなのに、知らないエルフに囲まれている。


 なんでこうなった!?



 走馬灯のように、昔の光景が流れた。



  ▽


 あれは異世界に来てすぐの頃。

 

 チートスキルはなかったが、言葉だけは理解できた。


 当時学生だった俺は、自分で書いた「もしも異世界に行ったら」と言うタイトルのノートを持っていたので、なんやかんやあって知識無双して、店を作って、大金を手に入れた。


 特にモテる顔でもなく、珍しい黒髪のせいで妖怪扱いされることもあった。

 かなり人間不信になったのもあり、エルフの奴隷を買って童貞を卒業したんだった。

 そういう行為をしてたら、ハーフエルフが4人産まれたんだっけな。

 その子達は、店を手伝ったり、冒険者になったりしてもう巣だった。


 

 なるほど。エルフの奴隷を買ったから囲まれてるのかな。

 でも39年前の話だぜ?


「な、何か用ですか?」


 エルフは魔法使えるから勝てないなぁ。

 死にたくないなぁ。


「とぼけるな!お前が同胞を傷付けたのは分かっているんだ!」

「いえ、傷付けられてなんていません!どっかに行って下さい!」


 そう言うのは、俺に買われた憐れな奴隷ヒカリだ。

 名前がなかったので俺が付けたんだったな。懐かしい。

 魔力が少ないせいか、俺と同じくらい老けている。エルフは長寿な生き物なので、かなり珍しい。


「だいたい、今さら何しに来たんですか!」

「魔力が足りなくなったから、お前みたいなのでも必要になったんだ」

「うーわ」


 ヒカリの親もそうだが、エルフってのはプライドやら伝統やらを重んじて、意思を蔑ろにする連中ばかりだ。


「嫌です!行きたくありません!」

「さては人間!お前が変な命令をしたせいだな!」

「いやしてないけど······」

「うるさい!死ね!」


 そう言って魔法を放とうとする。


 だが、



 バンッ



 耳鳴りするほどの音とともに、エルフの男の頭は弾けとんだ。


「き、キサマァッ!!」


 他のエルフが起こりだした。面倒臭いな。


「大丈夫大丈夫。まだ死んでないから」


 そう言いつつも、気絶した男の首筋にナイフを突きつける。


「なぁ、ヒカリ。これは命令だ。正直に答えろ。お前はこいつらに付いていきたいか?」

「いいえ。ここでのんびりと自由気ままに暮らしていたいです」

「だってさ。コイツを連れて帰るなら生かしておくけど、どうする?」

「くっ、分かった」


 そそくさとエルフ達は帰っていった。


「はあぁ~あ。疲れた」

 

 イレギュラーな事も起きるが、おおむね平和だ。




〈続〉

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