第7話

そりゃバレる。

荷物を背負って鎧を着た二人組が走り出したのだから。むしろ何事か、と振り返られても仕方ない。

何名かが俺達を追いかけて来はじめた。

持っているものは、手斧やら漁ってきた槍といったところか。近付けたらそのまま俺達を殺す気満々といった感じを受けた。


俺達も必死に走っているが段々疲れてきていた。

それもそうだ。あいつら全力疾走すればいいのだがかれこれずっと走っている俺達では疲れる方が早いに決まっている。


やっぱり俺よりは様々な条件の乗っているリゼはどんどん遅くなっていく。

これでは裸にひんむかれた死体が一つ増えるだろう。


「騎士殿!」

「な、なんだ…っ!」

「とりあえず剣を抜け!」

「そんな余裕は…っ!」

「抜いたら立ち止まっていい!」


リゼは頭をふらふらさせながら剣を鞘から抜くと同時に足を止めた。

俺も同じように剣を抜いて止まると追いかけてくる人間の列に向いた。数人増えている。これはまずい。


「騎士殿!」

「ちょっと待ってくれ、呼吸が」

「なら俺の背中を見ておけ!」


その言葉を聞いてリゼは俺の反対の向きに立った。あくまで俺達は追われているだけで、敵はどこにくるか分からない。見ているだけでも心強いのだ。

俺は荷物を入れている袋からパンを一つ掴むと思いきり投げた。


数名が動く。

しめた、槍を持っているやつが反応した。俺は走り出すと戦闘を走る斧持ちを袈裟斬りにした。


男は悲鳴をあげる。

その姿に怯んだ数名の肌にに俺の刃が通り抜けていき、血を撒き散らした後倒れていった。

所詮はちゃんと訓練を受けていない奴ら。これだけで士気を落とすには十分すぎるだろう。


「たすけ」

やらせん。

足元に転がる死体の手から手斧を取り、思いきり投げつける。槍を持った男の頭はぱっくり二つに割れた。


とりあえず戦闘一つをこなすことが出来た。

しかし次の戦闘は起きていたらしい。


俺が振り返ると剣についた血を払っているリゼの姿があった。

足元には三つの死体が転がっている。恐らく騒ぎを聞き付けた奴らが飛び込んできたのだろう。

声一つあげさせなかったところは流石騎士殿といったところか。


「多少は呼吸が整ったのかい。騎士殿」

「きつくないといえば嘘になる」

「そりゃお互い様さ。さ、行くぞ」


俺はそういって荷物を背負った。

リゼも荷物を背負っているがなんとも言えぬ顔つきをしていた。


「どうした騎士殿。追手はこれだけじゃないんだぜ」

「いや、な」

「なんだよ」

「彼らも元を正せばバイセルンの国民だったと思うと、な」


その表情は苦々しいものだった。

俺はため息をつきながら答えた。


「ほら言っただろう。余計な感傷をいれるなって」



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