第2話

「脱げよ。そんな鎧」


「これは先祖から続くアイフェンシュタット家の証なのだ。捨てるわけにはいかん」


その借金を返す相手もいないのに、と口にしかけたがグッとこらえた。

ただでさえ自分の国を失って意気消沈している女騎士にあーだこーだ言ったら次こそ彼女の剣に自分の血をつけることになる。


俺達は仕方なくバイセルンに戻ることにした。占領後だから敵兵がいる可能性もあったがどっちにしても食うものひとつないのに宛もない旅に出たらどうなるかは考えずとも分かる。


城門を渡ると悲惨たるものだった。

火こそ落ち着きつつあったが完全に消えたわけではないからあちこちから黒煙が上がっている。

そしてあちこちに死骸が転がっている。老若男女問わない。


特に商店街に続く道はひどいものだった。

子供を抱いた母親に槍が刺さっており、子供と共に貫かれている。頭を跳ねられ体だけ椅子に横たわる男。内蔵を引きずり出された女性。

もし地獄というものがあるならきっとこんなところなのだろう、など思いながら俺は歩いていた。


しかしリゼにはとてもではないが耐えられなかったようで何度も吐いていた。


「このような、このような…っ!」


髪を掻き乱しながらうわ言のように口にする。

俺は彼女の姿が理解できなかった。


「フィランツの悪鬼どもめ…っ!」

「うるさいぞ騎士殿」

「貴様…っ!」


耐えられなくなって俺は口答えをしてしまぅた。

青みがかっていたリゼの顔は段々と赤くなっていく。


「顔を青くしたり赤くしたり大変だな」

「貴様はこの有り様をみてなんとも思わないのか!」

「思わんね」


その即答に面食らったのかリゼは思わず退けぞいた。


「騎士殿は知らないのかもしれんがうちの国の兵士だってこれくらいのことはやっていたしお互い様というやつだろ」


その言葉に彼女はまた青ざめた。

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