ぶっきらぼうなファンタジー

ぬかてぃ、

第1話

あちらこちら、煉瓦の剥がれた城壁を見ながら腰を降ろした。

あちらこちらから上がる黒煙がなんとも物悲しい。俺は頭の冑を投げ捨てた。岩に当たり、こつんと高い音を出し、数回ふらふらと回った。


「まだ、生きているのか」


「まあ、なんとか」


リゼルヴァ=アイフェンシュタットが血を吐きながら言ってくる。血みどろなのでそれが彼女のものなのか、それとも返り血なのかは判断しかねたが、むせながらも返事が返せるだけ大丈夫だということだろう。


「なんということだ。我が国が」


リゼはゆっくりと体を起こすと驚いた顔つきで辺りを見回した。そして咳が止まると入れ替わるように嗚咽に変わっていく。


「ウォール。何故こうなったのだ。教えてくれ」


「俺は分からんよ騎士殿」


リゼは外れかけていた籠手を外すと思いきり地面に叩きつけた。そして騎士の面影もなく腕で涙を押さえ始める。


「泣くなよ騎士殿。俺達は頑張ったじゃないか。でも頑張りだけでは埋められなかったというだけじゃないか」


「よくもぬけぬけと!自分の国が燃えてるのだぞ!」


顔をリゼに向けると涙を溜めた瞳で俺を睨み付けていた。

どうしてここまで泣けるのか。俺には理解しかねた。


「ああ。燃えているな」


「お前には家族や友人がいなかったのか!?そいつらが殺され、燃やされ、犯されているのだぞ!」


「そうだな。騎士殿みたいに階級も交流もありゃあそう思ったかもしれないな」


俺のつっけんどんな返事にリゼは掴みかかりそうになっていた。しかし、そう出来るほど元気だったわけでもなく、すぐに襟元をつかんだ手は離れることになる。


「民の命を、なんだと思っている」


崩れるリゼを見ながら俺は立ち上がった。

体も動けないほどになってきた。このままいても死体漁りに来る盗賊たちに襲われかねないだろう。


「立てますか騎士殿。ここにいたって殺されるだけですよ」

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