第17話 武芸大会への参加

「リジュピッピさん」

「はい」

「リッピットラト星人たちのあいだで流行っているものって、やっぱり芸術的なものを見たり武術とかですか?」


「ええ、わたくしたちの星へ来てくださった方が、そういったことを教えて行ったんです」

「じゃあもしかして、こういった建物なんかも最初から」

「はい、ありません。わたくしたちがその方たちに教わり、わたくしたちで建てた物です」


「へぇー、そうなんですか」

「この星にはもともと何もなかったんです。わたくしたちしかいませんでした。そこへほかの星の方たちが来てここまで発展したのです」


 俺はもう少し突っ込んだ質問をしてみた。


「あの、前にミミヌイさんから聞いたことなんですが。ただの俺の興味本位なので嫌な質問だったら断ってください」


 リジュピッピは一度ポワティガと目を合わせてから俺のほうを向いた。


「はい、なんでしょう」

「リッピットラト星人たちは自分たちを自分たちで作っていると聞いたのですが、最初って誰がその……組み立てたんです?」


 リジュピッピとポワティガはお互いの顔を見合わせながら、何かを通じ合っているように頷いたりしている。


 嫌なことを聞いているのかな? 本人たちにとっては。


「最初ですか? その記憶はありますが……」


 リジュピッピは首を傾げているとポワティガが話し出した。


「誰がぼくたちを作ったのか、それは、ぼくたちの中にちゃんと記憶されているんだ。最初のふたりは天使が作ったんだよ。そのあとその作り方を教わったリッピットラト星人が、この星にある材料でぼくたちを作っていったんだ」


「天使が」


 じゃあ、俺が死んだときに出てきたあいつが?


「ぼくたち全員の中にその記憶はあるんだ」

「へぇーそうなんですか」

「一応、リッピットラト星人なら誰でも作れるように設定されているんだ。あとは個人の技術力によるけどね」


「個人の技術力?」


「うん、ぼくたちでも得意や不得意はあるからね。皆それぞれがその得意分野を活かせる仕事に就いているんだよ」

「なるほど」

「ぼくが用心棒をやっているのは、この棒を使った武術が得意だからさ」


 ポワティガは椅子に立てかけてある棒に触れた。


「私たちも一緒よね。それぞれの得意なことを活かすために生きていく。シュガさんもきっと得意なことが見つかりますよ」


 と言いながらミミヌイは俺の肩を叩いた。


「う、うん、そうだね」


 こうして食事が終わり、リジュピッピがお代を払おうとしたがエネルギーが足りないということでポワティガが払うことになった。


 それから宿に帰った。


 次の日、俺たちは宿屋の前に集まりこれからどうするかを話し合った。


「それで、これからどうするんだ?」


 ソルティオルが腕組みをしながら聞いてきた。俺は言った。


「このままウィザティーンのところに行っても昨日みたいにやられる可能性がある。どうにかして彼女に勝てる要素を探さないと」


「勝てる要素かぁ……」


 俺たちが考えているとミミヌイが言った。


「じゃあ修行でもしません?」

「修行?」

「ええ、自分の力を磨くんです。どうですか?」

「修行かぁ」


 俺は修行で何を磨けばいいんだ?


「それならいいモノがあるぞ」


 そう言ってポワティガは人差し指を向けた。そこには噴水があって広告が映し出されている。


 俺たちは近くによって行きそれを眺めた。


 【武芸大会開催。腕に自信のある者の参加を求めます。優勝賞品は耐魔法の指輪。参加者は闘技場まで】


「武芸大会?」


 俺がそうつぶやくとポワティガはそれに続いた。


「そう武芸大会。ぼくも何度か挑戦しているんだ。優勝はしてないけど」

「ほう、面白そうだな」


 とソルティオルが言った。


「この町にその会場があるからやってみない?」


 ポワティガは俺たちに聞いてきた。俺たちは顔を見合わせるとミミヌイが言った。


「ちょうどいいじゃないですか、参加しましょう。このままじゃウィザティーンに勝てそうもありませんから、それに優勝すれば耐魔法の指輪ですよ。それがあれば彼女に勝てるかもしれません」


「わたくしも参加いたします」


 リジュピッピはそう答えた。そして俺にみんなの視線が集まる。


「わ、わかりました。やりましょう」


 ウィザティーンに対抗するため耐魔法の指輪は欲しい。何とか優勝しないと。


 ポワティガの先導で俺たちはそのあとについて行く。町の真ん中にその闘技場があるらしい。


 そう言えば今まで気にしていなかったけど、俺たちは普通に会話をしている。


 ミミヌイはルートゥラスハート星でソルティオルはモラーリスティル星から来たと言っていた。ほかにもリッピットラト星人たちと会話をしている。


 俺の言っていることがわかっている? なんで?


「あのー皆さんて、そのーお互いの言葉って通じてますけど……みんな同じ言語ですか?」


 俺のよくわからない質問にミミヌイが答えた。


「ああ、言語のことですね。ここの星ではみんな同じになるんです」

「おなじ?」

「ええ、例えば私の星の言葉で今は話してます、でも普通に何を言っているのかわかるでしょ?」

「はい」

「そう、そういうことです」


 するとソルティオルが言った。


「拙者たちの話している言語はお互い違うが、声に出すと万人にわかるように変換されているらしい」

「へんかん?」

「わたくしたちにも……」


 今度はリジュピッピが話に割り込んできた。


「わたくしたちの言葉があります。でもこの星では共通語になります。あと文字も同様です」

「へぇ、そうなんですか」


 両脇に点々と木が生えている道をまっすぐ行くと緑の塀で囲まれた闘技場があった。


 会場に来てみると中はロビーになっていて椅子やテーブルなどが置いてある。奥のほうには受付があった。


 俺たちはそこに行き、ポワティガが白黒の仮面をつけた受付の人に声を掛けた。


「ぼくたち武芸大会に参加したいんですが」

「ご参加希望の方たちですね。ではこれに指を触れてください」


 空間に映像が出てきた。そこには事細かに文字が書いてあった。


 ポワティガは俺たちに言った。


「これは利用規約や注意事項が書いてあるんだ。たとえば相手の命を奪わないとか、不慮の事故で命を失ったとしても自己責任とか」


 それからポワティガはそれに指を触れた。みんな次々とそれに指を触れていく。


 俺はそれを注意深く読んでみた。


 ……武器の所持は自由。参ったと言えばその場で終了。場外に出れば負け。相手が命を奪う行為をしようとした場合は強制的に止められる。


 そのほかにも、攻撃されて痛みをともなう傷であっても、それはデータによるもので実際の傷ではない。戦闘終了後の回復は許可しますや戦っている最中は回復禁止など。


 どうするかな、やっぱり止めてみんなに任せようかな。俺が出てもすぐやられそうだし。


 ウィザティーンに対抗するために優勝賞品の耐魔法の指輪は欲しいところだが。


 本当はあまり戦いたくないんだよな。


 今まで何となく戦っていたけど、それは夢中で抵抗していただけで、こうやって改まって誰かと戦うのもな。


「おいっ、次はお主の番だ。早くしろ」


 ソルティオルはそう言って俺の背中を押した。


「あ!」


 その拍子に俺の指がその映像に触れてしまった。

 俺が参加に承諾すると受付は聞いてきた。


「あなた方たちがご参加したいのは5対5のチーム戦ですか? それとも1対1の個人戦ですか? チーム戦ですと5人の中から3人を選んで戦うことになります。要するに3回勝てば2回戦に進めるということです。個人戦ですと勝てば次に進めますが、負ければそれでおしまいになります」


 するとポワティガは俺たちに聞いてきた。


「みんなどうする? チーム戦か個人戦か」


 俺は真っ先にその質問に答えた。


「俺はチーム戦がいいなぁ、だってそっちのほうが優勝できる確率が高い気がするし」


「……なるほど、個人戦だと誰かが決勝まで行ったとしても、そこでやられてしまう可能性があるってわけか。反対にチーム戦だと勝てるチャンスは多くなる」

 

 ポワティガはそう言って腕組みをした。続けてソルティオルが言った。


「確かにな、戦いで負傷が激しく回復が間に合わないとき、ほかのやつを戦わせることができる」

「じゃあ、チーム戦でいいね」


 ポワティガが言うとみんなはそれに頷いた。


「チーム戦でお願いしたい」

「チーム戦ですね……」


 受付はそう言うと映像に指を乗せて何かを手際よく押した。それから俺たちに言った。


「今回のチームのご参加者は全部で8チームになります。トーナメント式になりますので、1回戦2回戦と勝てば、その次は決勝戦となります。対戦するチームはランダムですのでご了承ください」


 空間映像にトーナメント表が出された。そこには様々なチーム名が載せてある。


「ではチーム名をお願いします」

「チーム名だって、どうする?」


 ポワティガは言うと俺たちを見回した。するとソルティオルが提案を出してきた。


「じゃんけんでいいんじゃねーのか? 最後まで勝ったやつの名前を使うで、どうだ?」

「うん、それでいいわ。早く決めちゃいましょ」


 ミミヌイがそう言いながら手を前に出してきた。俺は手を出しながら言った。


「へぇーみんなの世界にもじゃんけんてあるんだね」

「ああそうだ。それがどうかしたか?」


 訝しい顔をしながらソルティオルが聞いてきた。俺は首を横に振って答えた。


「あ、いや。べつに……」


 そうして俺たちはじゃんけんをやった。すると俺とソルティオルが最後まで残る。


 『じゃーん、けーん』の合図で俺たちは同時に手を出した。


「ち、負けたか」


 俺がグーでソルティオルがチョキ。

 こうしてチームの名前は『シュガルコール』に決まった。


「チーム名はシュガルコールで」


 ポワティガは受付に言うとトーナメント表にその名前が載った。


「これは一時的に載せているものです。これから対戦チームをシャッフルさせますので、奥へ行ってお待ちください。そこにトーナメント表が映し出されていますので、そこでご確認ください。優勝すればチームの全員が耐魔法の指輪を得られますので、頑張ってください」

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