第12話 5人での行動
ストーロベリ城に着いてラップポロントは俺たちを招き入れる。
俺はラップポロントに事の経緯を説明した。
「なるほど、そのフード女を探しているというのだな」
「はい」
「わかった、占ってやろう」
リジュピッピはフード女の映像をラップポロントに見せた。
ラップポロントはそれを見るとガラス玉を取り出して魔法陣に撒いた。
適当な位置にガラス玉が転がり止まる。それから空中に球体が出て来てそこに映像が流れた。
だがそれは真っ暗な映像だった。
「……ダメだな」
ラップポロントはぼそりとつぶやいた。
「ダメ?」
俺が聞き返すと彼女はため息をひとつ吐いて言った。
「悪いが見ることができないな。フード女が何か特殊な呪文でも掛けているのだろう」
「呪文?」
「まあフード女の力だろう。占いはこれ以上やっても同じだ。残念だがな」
「……そうですか」
占いで見ることができない。じゃあ、ソルティオルにフード女がよく来ると言われている場所まで案内させるしかないか。
「占いは不発みたいであったな」
ソルティオルは真っ暗な映像を見ながらそう言うと俺たちのほうを向いた。
「どうする。拙者たちを連れて行くのだろう?」
「ああ」
俺はしぶしぶそう答えた。
それからストーロベリの町を出て平野を東に歩いた。ソルティオルを前に歩かせてそのあとを俺たちはついて行く
俺はソルティオルに聞いた。
「これからどういった場所に連れて行くんだ?」
彼は前を見ながら言った。
「今から向かうところは喫茶店だ」
「喫茶店?」
「ああ、その喫茶店はイチジークという町にある。フード女はそこにお茶を飲みに来る」
「何でそこだってわかるんだ?」
「そこで、あやつと何回か取り引きの話をしたからだ。拙者がラクアピネスを連れて来る代わりに、この妖刀をもらい受ける交渉をしたのだ」
「何でラクアピネスを知っているんだ?」
「広告だ」
「占い師の?」
「いや、もっと大きな広告だ。それはこの星全体に広まったものだ」
すると、ソルティオルは懐から透明で長方形な物を取り出した。
「これがバラまかれた」
透明なシートみたいなところから映像が流れた。ラクアピネスが映し出されている。
その下に文字が出てきた。
『この女性はラクアピネス。幸運の女神と呼ばれる彼女は幸運を与えることができる。探し出して見つけた者は、あなたの願いをかなえよう』
『詳しくは、イチジークの町にある喫茶店まで』
その映像は繰り返されていく。
こんなのがこの星全体にバラまかれたのか。だからマドワレやボローボはラクアピネスのことを知っていたのか。
しかし、何かあいまいだな。
ソルティオルはその広告を懐にしまうと話し出した。
「これがあったから、拙者はその場所まで行って、フード女から話を聞いたんだ」
「本当にそこにいるのか?」
俺が聞くとソルティオルは聞き返してきた。
「本当とは?」
「フード女はもうラクアピネスを手に入れている。だからもうその喫茶店には現われないんじゃないかってこと」
「……そうかもな。だが行く価値はある」
「なんでだ?」
「もしかしたら、そこのお茶を飲みに来るかもしれない。フード女はそれを何度も注文していたからな。それに、そこの町にはフード女に親しい人物がいる」
「親しい人物? 誰だそいつは?」
「まあ、会えばわかるさ」
こうしてひたすら歩きようやくイチジークの町に着いた。
外観は今までの町とそれほど変わらない。ただ、町全体の色が茶や黄土色などの色をしている。
町の中に入ると、いつものようにリッピットラト星人たちが行き交っていた。
俺たちはソルティオルの言った喫茶店に入って行った。5人でテーブルを囲みながらフード女が来るのを待つ。
俺、ミミヌイ、リジュピッピが横一列で座り、反対側にはソルティオルとポワティガが座った。
店員が近くに立っているため、俺たちは適当に注文をしてさらに待った。リジュピッピとポワティガは注文していない。
「来なさそうだな」
俺が言うとソルティオルは返してきた。
「当てが外れたか。もう少ししたらフード女の親しい人物を訪ねるとしよう」
ソルティオルはお茶を啜ると俺たちに聞いてきた。
「しかし、お主らはどういった関係だ?」
俺とミミヌイとリジュピッピはお互いに顔を見合わせてから、俺が話した。
「こちらにいるミミヌイさんは俺に服をくれて、それで、こちらにいるリジュピッピさんは探偵で……」
何から説明して良いのかわからず、あいまいに言ってしまった。するとミミヌイが続けた。
「私はシュガさんに貸しがあるからついて来ているんです。私の不注意でケガをさせてしまったから」
それからリジュピッピが話し出した。
「わたくしはシュガルコールさんたちの依頼を受けて、ラクアピネスを一緒に探している者です」
ソルティオルは目を動かして俺たちを見ながら言った。
「ふーん、そうか」
「あんたたちは?」
俺が聞くとソルティオルは答えた。
「ラクアピネスを追うには危険がつきものだと思ったからな、用心棒的なものを近くに置いておきたかったのだ。だから彼女に依頼した。彼女は用心棒の仕事をしている」
「ふうん、ポワティガさんに何を支払って雇ったの?」
「いや、まだ払ってない。期限すぎたら払う仕組みだ。そのときはこの拙者の刀で払うことにする。妖刀を手入れからな、もうこの刀は必要ない」
「そうか、もしここにフード女が現れなかったら、そいつの親しい人物を訪ねるんだろ?」
「ああ、そうだが」
「何でその人を知っているんだ?」
「フード女に自分が美術館にいなかったら、そこにラクアピネスを連れていけと言われていてな」
「そうか」
それからしばらく待った。しかし、フード女は顔を出さなかったので俺たちは店を後にした。
ソルティオルは少し前に出て俺たちに言った。
「現れないから仕方ないな。それじゃあ、フード女の親しい人物に当たるとするか。ついてこい」
俺たちはソルティオルの後について行く。
橋の架かっている道を通り階段を上がると、その先には家が建っていた。俺たちはその家の玄関前で止まった。
「ここがフード女の親しい人物がいる家だ」
「誰なんだ? 親しい人物って」
俺が聞くとソルティオルは玄関のドアを見つめながら答えた。
「フード女は妹がいると言っていた」
「いもうと?」
それからソルティオルは玄関のドアを叩いた。
しばらくするとドアが開いた。そこから出てきたのは紫色の長い髪の女性。彼女は眼鏡を掛けて、緑色のパジャマを着て眠そうにしている。
「どちらさま?」
と言いながら彼女は気だるそうにあくびをしている。
ソルティオルは言った。
「拙者たちはお主の姉と取り引きをした者だ」
彼女は髪の毛を掻きむしりながら言った。
「ああ、あいつの相手か。それで、だれがラクアピネスだ?」
眼鏡のフレームを摘まみながらのぞくように俺たちを見つめる。
「実はここにはいない。急用があってお主の姉に会いたいんだが。どこにいるか、お主わからぬか?」
「あいつの居場所ね。うーん。この町にある喫茶店は行ったか?」
「ああ、行って待っていたが現れなかった」
「そうか、じゃあ、そうだなぁ……アボカドレスの町の近くに塔がある。そこにいるかもしれないなぁ」
「アボカドレス?」
「そうだ、ここから東に行くとその町がある、そこに塔があるから、たぶんいると思う。あいつはそこの一番上でお茶を飲むのが好きだからな」
「そうか」
「聞きたいことはそれだけか?」
「そうだ」
「ふうん、じゃああいつに会えなかったらまた来な」
そう言い終えると勢いよくドアを閉めた。
ソルティオルは振り返って俺たちに言った。
「ということだ。だからまずは、ここから東にあるアボカドレスの町まで向かうぞ」
「アボカドレスですか……」
リジュピッピはそうつぶやいてから話し出した。
「あの町はここから結構離れています。歩いて行くのは少々時間が掛かってしまいます」
「少々ってどのくらいですか?」
俺が聞くとリジュピッピはその町のほうに顔を向けた。
「はい、5日ほどかかります」
「いつか? そんなにですか?」
「はい。ですから、この町で乗り物を借りましょう」
「乗り物?」
「ええ、そうすれば今日中に着くことができますが」
「そうですか、わかりました。それに乗っていきましょう」
それから乗り物を借りにその店に向かった。
「リッピットラトレンタル」
俺がその店の看板を読み上げるとリジュピッピは答えた。
「ここで乗り物を借りることができます。入って見ましょう」
中はガランとした広いホールだった。
受付にリッピットラト星人がいた。顔にはメッシュのような白い仮面をしている。
「いらっしゃいませ」
店員が言うとリジュピッピがそれに対応した。
「乗り物をお借りしたいのですが」
「では、どれになさいますか」
と言って、店員は自分の手のひらを押した。
するとホールに様々な乗り物の映像が立体で浮かび上がった。どれも見たこのもない乗り物だった。それは何かの動物を模ったものばかり。
イルカやクジラ、オオカミやコウモリなど。
「どれになさいますか? もし決められていないのでしたら、ここに5人いらっしゃいますので、こちらでおすすめをご用意いたしますが」
リジュピッピは振り向いて俺たちに聞いていきた。
「皆さんどれがいいかご希望はありますか?」
皆それぞれが店員のお任せでいいということでその場は決まった。
それを聞き入れてリジュピッピは店員に言った。
「お任せします」
「かしこまりました」
すると店員は自分の手を指で押した。
「乗り物の名前はピヨロンです。この町の外にその乗り物が停まっています。ほかにもそこに違う誰かの乗り物が停まっているかもしれませんが、乗り物に近づくと音が鳴って反応しますので間違えることはありません」
「そうですか」
「あと、期限はありませんので返却したかったら、内蔵されている返却ボタンを押してください。お支払いのほうは、中にあるお皿の上にお願いします。燃料やメンテナンスもそれで賄われていますので」
「わかりました」
「それから途中で故障してしまった場合は、直ぐに新たな飛行船をお送りしますのでお待ちください。それはあなた方が歩いて移動していても、そこに到着するようになっています」
一通りの説明を受けてから「どうもありがとうございました」と店員の元気な挨拶で送られ、俺たちは店を後にする。
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