第9話 武器を購入する

 朝、お会計を済ませて俺たちは外に出た。澄んだ空気に青い空が見える。


 俺たちはさっそく西に向かうことにした。


 この町に着いてから町並みをよく見てなかったから気づかなかったけど、武器屋、防具屋、道具屋などの店もあった。


 せっかくだからちょっとのぞいてみたい気もしたが、俺はラクアピネスを追うために前を向いた。


「シュガさんどうかしたんですか?」


 ミミヌイが不思議そうに俺を尋ねる。


「いやあ、ちょっと武器屋とか気になってさ」

「ああ、そうですよね。入ってみます?」


 ミミヌイは入りたそうに俺に笑顔を向けて来る。


「いや、いいんだ。武器なんて必要ないし、たぶん」


 俺が断るとリジュピッピは歩みを止めて俺に言った。


「シュガルコールさん、あなたの力を信用してないわけではないのですが。このさき何が起こるかわかりませんので、武器の購入をしたほうがよろしいかと。わたくしもシュガルコールさんをすべて守れるかといったらわかりませんので」


「そうですか……」

「わたくしがお支払いしますから」

「じゃあ、お言葉に甘えて」


 俺たちは武器屋に入った。

 剣、斧、槍などの武器が並べてある。


 どれにしようかなぁ。


「何か気にいったものがありましたら、わたくしに言ってください」

「はい」


 俺は傘のようにたくさん立てかけてある剣をひとつつかんだ。


 「いたっ」と俺は声をもらした。


「どうしました?」


 ミミヌイが聞いてくる。


「いやあ、べつに」


 つかんだ剣の柄をよく見てみるとトゲトゲになっている。すると朱色の仮面をつけた店員が話しかけてきた。


「お客さん、大丈夫ですか? いやーすみませんね。それ、もろ刃の剣なんですよ。今表示をしようと看板を作っていたんですがね。間に合わなかったか」


 申し訳なさそうにしながら店員はその脇に看板を置いた。


 俺はほかの剣を手に取ったが、どれもとても重くて持ち上げられなかった。


 ダメだ。


「お客さんどんなのをお求めですか? 特にないのでしたら本日入荷したばかりの新商品があるんですが」


 店員は陽気に話してくる。俺はそれに促されて聞いた。


「新商品? どんな物が入荷したんですか?」

「剣なんですがね……」


 そう言いながら店員は店の奥に行った。それから何かを手に持って来てテーブルに置いた。


 そこに置かれたのは金色に光る腕輪だった。


「えっと、剣じゃないんですか?」

「この中に剣などが入っているんですよ」

「剣など?」


 店員は自分の腕にその腕輪をはめると、腕輪の上に手を持って行き握った。


 すると剣が出現した。


「剣が出た」


 俺が驚きながら言うと、店員はその剣をつかみながら説明を始めた。


「この腕輪の中には武器が入っているんです。片方の手を腕輪の上に持って行き握ると、そこに何かの武器をつかんだ状態になります。その武器は地面に落ちれば消えます。出したかったらまた同じ行動をしてください」


 そうして店員は持っている剣を地面に落として剣を消した。それから再び腕輪からさっきの剣とは違う剣が出て、それをまた地面に落として消して見せる。


「このようにね。武器の中には地面に落ちてもすぐには消えない物もあります。ちなみに自分に腕輪を向けて握ってもの武器は出現しません、危険ですからね」


 ふうん、これならわざわざ重い剣を背負わなくてもいいわけだ。店員は同じ形で少し大きい水色の輪っかを出してきた。


「これは前に発売されたやつなんですが、足専用の物です。腕輪とは違い武器は選ぶ形式です」


 店員が足輪に触れると様々な武器の映像が流れ出た。剣を押すとその映像は消えて、店員が剣を取り出した。それからそれを捨てて次の剣を取り出しす。それを何回か繰り返した。


「このようにね、同じ武器しか出ないんですよ。腕輪のほうはランダムですが、いかがなさいますか?」


 正直、俺にどんな武器が相性いいのかわからないから、俺は腕輪のほうを選んだ。


「では腕輪のほうをください」

「はい、かしこまりました」


 こうして、リジュピッピにお代を支払ってもらい店を後にした。

 

 俺は腕輪を左腕につけた。それから試しに武器を取り出してみた。


 剣の柄が俺の手に収まる。


 重っ!


 剣が重すぎて落としてしまった。剣は地面に落ちそのまま消えた。


「シュガさん、よかったですね。武器が手に入って」


 ミミヌイはうれしそうに言った。


「ええ、まあ」

「私は足輪のほうを装備しているんですよ」


 そう言いながら、チラリと太ももにつけている足輪を見せた。


「へぇーじゃあ、そこからダーツを?」

「ええ」


 それから俺はリジュピッピにお礼を言った。


「あの、リジュピッピさん。武器をありがとう」

「いえ。では参りましょうか」


 こうして俺たちはスタンメモル美術館に向かった。


 町を出て平原を歩いた。

 どのくらいの距離があるのだろうか。周りは木や草しか見えなく平原が広がっている。


 俺はリジュピッピに聞いた。


「リジュピッピさん」

「はい、何でしょうか?」

「リッピットラト星人はこういったイベントみたいなモノも好むんですか?」

「はい、我々はこうしたモノも好んで参加します」

「じゃあ、争うことを好むってことですか?」


「首飾りを手に入れるためにラクアピネスさんを探しますが、そのとき、お互いが奪い合うために攻撃方法を披露します。たとえば拳法や武術などを」


「戦うってことですか?」

「あくまでも競技としての役割です。殺し合いではありません」

「そうなんですか」


 リッピットラト星人は抑揚なくしゃべる。感情がないというか……。そういえば、武器屋の店員は陽気にしゃべっていたな。


「あのリジュピッピさん」

「はい」

「失礼なことかもしれませんが、リッピットラト星人は感情があるんですか?」

「ええ、ありますよ。シュガルコールさんは我々が無愛想に見えるのですね」

「いやあ、なんとなくそう感じただけで」


「基本的に我々は無愛想な星人なんです。店員さんが陽気でしたのは、そういった訓練を受けているからなのです」


「はあ、訓練ですか」

「決して感情がないわけではないのです。他者から見れば無愛想に見えるでしょうが」


 ミミヌイは俺の袖を軽く引っ張り言った。


「シュガさん、私たちもそんなに変わらないじゃないですか」

「そ、そうだね」


 もう、余計な詮索をするのはやめよう。

 そんなことより、俺はラクアピネスをどうにかして手に入れなければならない。


 それから、ミミヌイとリジュピッピは俺の前に行き会話を始めた。彼女たちは何やら楽しそうに会話をしている。


 彼女たちの会話に男の俺が入る隙はない。


 ラップポロントの広告を見たリッピットラト星人たちは、ラクアピネスを捕まえようと躍起になっているだろう。


 じゃあ、こうしてはいられない。


「あの」


 俺が前のふたりに声を掛けると、ふたりは会話を止めて振り返った。


「シュガさんなに?」


 ミミヌイが聞いてきた。


「ふたりには悪いけど、俺、早くその場所に行きたいんだ。だから」


 ミミヌイとリジュピッピはお互いに顔を見合わせた。それからリジュピッピは言った。


「我々リッピットラト星人たちがラクアピネスさんを探し回っているから、その前に見つけ出したいというわけですね。ですからワープは使えないのかと」


「はい、わがままですみません」


「わたくしも使いたいのですけど、パイナプルの町からこの場所へ来るのは結構な距離でしたので、使えるようになるにはもう少し時間を要します」


「そうですか」

「申しわけありません」

「いえ」


 ミミヌイは元気な声で言った。


「大丈夫ですよ。幸運の女神なんですよ、そんなすぐに誰かの手には渡りませんよ」


 俺は何を焦っているんだ。


 ここに来て裸の俺を救ってくれたのはここにる、ミミヌイとリジュピッピじゃないか。


 ふたりのおかげでこうして幸運の女神に近づけているじゃないか。


 それをありがたいことだと思おう。


「うん、ふたりともありがとう。俺のために」


 俺の言葉に対してミミヌイは微笑み、リジュピッピ頷いた。


 それからひたすら歩いた。


 すると途中に看板が立っていた【この先、スタンメモル美術館】と書かれている。


 そうして、ようやくスタンメモル美術館の前にたどり着いた。


 遠くのほうに白い塀で囲われている建物が見える。

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