第3話

「到着しました。選挙カーの屋根に上がってもらえますか」


女性秘書に促され、梯子を上がって屋根に上った。意外と高さがあり、足がすくむ。

拡声器を通じて#秘書#の声が住宅街に響き渡る。


「それでは選挙活動についてご説明します。

先生にはこれから、選挙カーで移動しながら選挙演説していただきます。」

私たちがこれから戦う相手は、日本の変な奴を国会議員にする党です。」


「少数政党ながら、インターネット戦略に非常に戦術に長けた党ですが、

SNSの影響力は我々が一時的に上回っています。素の口撃力でこちらが上回れると思います。」


口撃力とは、演説によって票を集める力を表し、これが相手より上回った分だけ票を集めることができるそうだ。


「戦いの流れとしては、移動と口撃を交互に行います。

移動のターンでは選挙カーでの移動を行います。屋根に乗った状態で移動しますので、しっかりつかまってください。」


「え、うそ!無理無理無理無理!」


かなり荒っぽい運転で住宅街を移動する。

振り落とされないように、どうにかつかまれるところを探す。

移動先ではカードを引くか、集票活動を行うのだが、ここでは集票活動を行うようだ。


「この度、国会議員にさせていただきました、

皆様のさらなる応援をよろしくお願いします。」


票が13,500票ほど私に入ったようだ。信じられない。なんて簡単な連中なんだ。

移動先での活動が終わると、相手に対して口撃を行う。


「SNSでお騒がせしております。国民の皆様のおかげで汚名を着せられたうえ、国会議員にさせられました。

あなたたちのせいです。責任もって応援してください。よろしくお願いします。」


日本の変な奴を国会議員にする党の票が50,000票ほど私に移動したようだ。もうこの国はだめかもしれない。


「相手のターンです。」

「こんな弱小政党狙い撃ちして、なんやねんな、もう。

カードをドロー!応援演説に純国産ロケットを召喚!ロケットで口撃!」


ロケットによる口撃を受けて70,000票失った。というか、危険すぎる。


「ロケットによる攻撃を受けましたが、選挙カーは動かせそうです。

移動しますので、しっかりつかまってください!」


この選挙カーは装甲車かなんかなのだろうか。女性秘書は何事もなかったかのように運転を続ける。

今度の移動先ではカードを引くようである。


「カードをドロー!」


すると、勤めていた会社の同僚がやってきた。


「おう、何やってんだこんなところで。」


こいつがSNSに写真をアップロードしたせいで国会議員にさせられたのにのんきなもんだ。

どうやら私が引いたのはこいつのカードらしい。つくづく運がない。


「そっか、国会議員になったんだっけ。俺の写真のせいで人生左右しちまったみたいで

なんか悪いことしたな。応援演説するよ。」


「おいおい、大丈夫かよ。」


「私は務めていた会社の同僚でして。彼は世間で言われているほどだらしのない人間ではないので

きっときちんと仕事をしてくれると思います。」


60,000票私に入った。一応応援にはなったようだ。


「ちょっと、先生のお友達大したことないんですけど。

このままだと国会議員でいられなくなりますよ。」


いや、彼にしては上出来だったと思う。


「私のターン!カードをドロー!純国産ロケットの効果発動!相手の応援演説を買収する!」


会社の同僚が買収された。


「純国産ロケットさん、実はオンラインサロン入ってまして。いやーずっとファンだったんですよ。」


ああ、そうだ。こういうやつだったわ。


「先生のお友達寝返ったんですけど!どうなっているんですか!」


日本の変な奴を国会議員にする党の口撃はさらに続く。


「さらにカード、暴露砲発動!」


「実はあいつ、同期の女子社員全員にフラれて、そん時に飲んだぐれて路上に寝ていたのを

SNSにアップロードしたんですよ」


会社の同僚に暴露された。


「お前が暴露するのかよ!」


「先生最低です。見損ないました。」


暴露も含めて100,000票失った。


「先生、そろそろ危険水域です。今度こそいいカードを引いてください。」


「いや、もともと人脈も地盤もないし、一時的にSNSで話題になったくらいで

右も左もわからないようなやつがこんなところで戦えるわけがなかったんだよ。

短い間だけど、君と一緒に仕事で来て楽しかった。顎痛いけど。」


カードをドローした。


「先生、いいカードを引きましたね。やはりあなたは選ばれた人だ。」


「このカードは!いいのか!?」


「はい!」


「私は女性秘書を応援演説に召喚!日本の変な奴を国会議員にする党を口撃!」


その瞬間、空が真っ白に光った。目がくらんだ。

しばらくして日本の変な奴を国会議員にする党の議員たちが倒れた。

一体、私は何票取ったのだろうか。


「やはりあなたは、この国を変える運命を持った人です。これからも、よろしくお願いします。」


「こちらこそ。」


感極まって女性秘書の肩を抱き寄せたが、平手打ちを食らった。

疲れもあってか、ライフポイントが0になり、国会に運ばれることになった。

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