『ねこママとライオン』

やましん(テンパー)

『ねこママとライオン』


 ある、昼下がり、ねこママは、やましんちの台所のテーブルの上からせしめた商品券を元手に、買い出しに出ました。


 これは、やましんとの協定で、許される範囲であると、ねこママは解釈しておりました。


 きちんと、しまっていないということは、ねこママの使用を認めた、と、言うわけです。


 ただし、冷蔵庫は、協定で、相互使用とされている、と、ねこママは、解釈しております。


 やましんは、別の解釈をしておりましたが。


 やましんの許可無しには、触るな。と。


 やましんちの地下に、いつのまにやら出来た、『やましん横丁』は、いまや、このあたりでも名高い観光地で、世界中からの、観光ねこ、観光わん、観光ニシキヘビや、観光ぱんだ、観光くま、観光ワニ、………さんたちで、にぎわっておりました。


 直通特急が、パンリや、ロドロン、ニューヨク、ペンギン、などの大都市とつながっていました。


 ただし、人間は、乗れません。


 作ったのは、もちろん、宇宙ごきでしたが。


 地球支配の為の、整備インフラです。


 ただし、トンキョーや、ダイサカなどは、地下が、あまりにもややこしくて、わけがわからず、まだ、工事中です。


          🚧🚧🚧


 ねこママは、なじみのお店で、買おうとは思ったのですが、たまには、違うお店にも寄ってみたい。と、思いました。


 身体の後ろに、カートを引っ張りながらのお買い物です。


 なまものは、そのままだと、くさりやすいので、きちんと、パックされております。


 このあたりは、ごき食品工業の得意分野。


 しかし、このところ、人間たちが、大変に不穏当で、場所によって、かなり大きな戦争になっています。


 巻き込まれる生き物はあとを絶たず、人間は見向きもせず、よって、救援の必要に迫られて、やましんちのごき軍団も、臨戦態勢であるのみならず、非戦闘員や、学生ごき、予備役ごきにも、いよいよ徴兵が掛かってきておりました。


 彼らは、様々な手段で空港や港に向かい、荷物に潜り込むのです。


 やましんが、思うに。


 『さいきん、ごきさん、でないなあ。やれやれ〰️〰️〰️☺️』

 

 と、言っているのには、そうした、理由があるわけでした。


 でも、居ないわけでもなかったのですが。


         🍬


 とはいえ、『やましん横丁』は、なかなかの賑わいでした。


 それで、ねこママが、『とらさんの干物店』を見ていると、なにやら、大声を上げながら乱入してきたものがありました。


 『ら、ライオンさんだあ。』


 誰かが叫びました。


 百獣の王、ライオン。


 誇り高きライオンさんは、支配地を離れて、自分から、ここまで旅をすることは、まず、ありません。


 人間に、追われたらしいです。


 それで、かなり、イライラしておりました。



 『ぐおあ〰️〰️〰️〰️〰️🦁』


 ライオンさんは、目一杯叫びました。


 干物店では、まだ若い従業員の、チータさんが働いていました。


 ちょっと、ぶるぶる、震えながら、ライオンさんの前に立ちました。


 『あの、ライオンさんは、なにをお求めでしょうか?』


 『人間の干物。ぐわあ〰️〰️〰️わ。🦁』


 『この、商店街は、やましんさんちの地下なので、人間は扱いません。』


 『にゃにお〰️〰️〰️〰️〰️〰️〰️。きさまら、人間がいま、なにやってるか分かってるのか。爆弾やミサルイをばかばか撃って、人間同士のみならず、生き物たちを皆殺しにしている。しかも、最終兵器を使うタイミングを狙っているやつもいる。

いまや、人間を喰わずして、なにを、喰うか。まず、やましんを、血祭りに上げライオン。ぐおあ〰️〰️〰️〰️〰️❗』

 

 『うおあ〰️〰️〰️〰️〰️。そうだ。そうだ。そう……だろ。な。』


 と、御付きのピューマさんが叫びましたが、回りが同調しないので、尻すぼみになりました。


 『むむむ。情けない。店主を出せ。社長を出せ。』


 すると、お店の奥から、とらさんが現れました。


 『あらま、ライオンはん。おいでやす。なにか、お気に触りましたんかいな?』


 『きさま、とら。ここで遭ったが百年目、じんじょうに勝負いたせ。』

 

 『あらまあ。ライオンはん。もう、そんな時代と違いますのや。いまや、どこの国がどうのこうのではなくて、地球単位で考えんと、あきませんのやで。人間はんたちも、古い考えのお方と、新しい支配のしかたを考えてるお方が、複雑に絡み合って、争ってますのや。けれど、あたくしは、どちらにも、与しません。その中から、まったく、次元の違う何かが、きっと、現れますのや。』


 『きさま、とら教団か?』


 『いいえ。あたくしは、いっぴきとらどす。あんたはんも、そやろ。なかようしまひょ。ここは、人間も、いろんな生き物も、地球の仲間、なんどす。』


 『てやんでぇ。伝統と、誇りがすべてなのだ。掛かってこい。絨毯にしてやる。』


 『おまち!』


 と、一声発して現れたのが、ねこママだったのです。


 『や、あねごさんだ。』


 『ママだ。ねこママだあ。』


 『商店街会長さんだ。』


 『ぬあんだ。きさまあ。会長だあ? にゃんの、分際で。文句あるかあ?』


 『ここでの騒ぎは、許さないよ。ほら。ごらん。』


 ねこママの背後から、真っ黒な列が、200メートルは続いていました。(ねこ寸法で。)


 それは、あの、恐るべき、人喰いごき軍団だったのです。


 先頭は、どくろマークの旗を掲げています。


 ライオンさんでも、多分、歯が立ちません。


 『出たあ。人喰いごきだあ。』


 とらさんの店の辺りからは、ささっと、誰も居なくなりました。


 みんな、遠巻きにして、成り行きを眺めております。



 すると、前掛けをして、柔らかい物腰だったとらさんが、突如、巨大化しました。


 『くおらあ。ライオンさん。ここは、あんたさんの縄張りとはちがいまっせ。おとなしくお買い物するか、それとも、骨になるか、どちらでも、お好きになされまし。ぐああ〰️〰️〰️〰️〰️🐯』



 『おやぶん。まずいすよ。人喰いごきは、とくに、まずいす。ここは、おやぶん。ひとつ、偉大さを示して、引き上げやしょう。』


 御付きのピューマさんが、ライオンさんのお耳に、ささやきました。


 『偉大さを示すか。』


 『あい。まさしく、百獣の王として。』


 『ふん。そうか。』


 ライオンさんは、気に入りました。


 『よかろう。我ら偉大なるライオンは、ささいな争いには、拘らぬ。とらさん。この、あじの干物、全部、くれ。』


 『おわ。さすがは、ライオンさんですなあ。へえ、まいどおおきに。』


 とらさんは、手もみしながら、言いました。


 離れていた買い物客も、また、集まってきて、ねこママを筆頭にして、三三七拍子が始まりました。


 『にゃ、にゃ、にゃ、にゃ、にゃ、にゃ、にゃ、にゃ、にゃ、にゃ、にゃ、にゃん。おめでとうございますにゃあ。』


 『わあ〰️〰️〰️〰️〰️〰️〰️🐯🦁😹』



     大歓声のうちに、幕。


 

        


 


 

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『ねこママとライオン』 やましん(テンパー) @yamashin-2

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