第10話 ここからはそいつ無しで

第10話 ここからはそいつ無しで Part1

<鞍端家>


「充快、お前も子どもじゃないんだから、分かるだろ?

最初から分かってた話なんだし」


「それでも俺は嫌だよ。

【蒼穹の弓獅】無しでどうやって戦えっていうんだよ」


「そんなこといったら俺だってどうしたらいいか分かんないよ!」


瞳彩アイリスとの戦いの後。

充快は【蒼穹の弓獅】との別れを拒んでいた。


「いいよ、知介さん。無理に説得しようとしないで。

元々は俺のせいだし」


「でもよぉ…」


沈黙が訪れる。

やがて風増が口を開いた。


「そうだ。

層上、俺と五仕旗で勝負しないか?

お前が勝ったら、俺は諦める。でも、俺が勝ったら【蒼穹の弓獅】は渡してもらう」


充快はしばらく黙っていたが、考えがまとまったのか風増の方を見た。


「うん。分かった。

その勝負受けるよ」


「俺は家のためにも負けられない。

同情で手を抜くなんてことはないからな」


「分かってる。俺も負ける気はないから」


「(おいおいまさかの展開だな。

いや、この二人からすれば当然なのかな)」


**********


<廃墟>


「知介君」


「おぉ。お前か」


理羽が知介を訪ねてきた。


「六繋天、全部集まったんだってね」


「ああ」


二人は近況を話し合った。


「で、充快が六繋天を渡すのを嫌がってさ。

風増と対決することになったんだよね」


「そっか。充快君、そんなにあのカードのこと好きだったんだ」


「あいつにとっちゃ、初めて勝った時に使ってたカードだからな」


「それは思い出深いね」


「まぁそん時の相手が俺なんだけどよ」


「知介君、初心者相手に負けたんだ」


「やめろ。それじゃまるで俺が弱いみたいだろ」


「違うの?」


「違うよ!

俺は吉田さんとの勝負にも勝ったんだぞ。

知ってる人だからってひるまなかったぞ」


「知介君ラジオ好きだもんね。

私もよく聴くよ。"目のクマ"」


「え? そうなの?」


「うん。たまにノベルティもらうし」


「お前RNラジオネーム何?」


「"What's my color?"」


「あれお前か。うん確かによく考えればお前っぽいな」


「何? なんか文句あんの?」


「いや、べつに」


**********


<カードショップ>


「お店、元に戻ってよかったね」


「まだ完全にってわけじゃないけどな。

お前達のおかげだよ」


風増は店長の下に足を運んでいた。

コレクターが捕まったことで、盗まれたカードも持ち主の手に戻った。


「今日は?

デッキの調整だっけ?」


「うん…」


テーブルにカードを並べる風増。

その様子を見る店長。


「どれどれ…。

ほぅ、随分恐ろしいカードも入れてんだな」


「人聞き悪いこと言うなよ。

今回は負けられないからな」


**********


<廃墟>


「俺はどうしたらいいんだろうな。

充快が勝ったら風増が困るし、風増が勝っても充快がかわいそうだし…」


「見てればいいんじゃない?」


「え?」


「見てあげてればいいじゃん。

二人がどうするのか。見守ってあげれば。

六繋天を封じるも野放しにするも、結局どっちかになるなら、見守るしかないじゃん」


知介が笑う。


「なに?」


「お前の言う通りかもな。

俺が口出しすることでもないもんな。

分かったよ、見てるよ。外野は黙って」


**********


<鞍端家>


数日後。


「そういえば、充快が初めて五仕旗をやった時も、この三人だったな」


「その時は知介さんが相手だったけどね」


「俺が鞍端と最初に戦った時も、この庭だったよね」


「確かに。色々思い出してきたな」


両者が起動スターターのスイッチを入れる。


「どっちが勝っても文句なしだからね」


「ああ」


「五仕旗…」


「3rd Generation!」

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