第7話 最後の六繋天

第7話 最後の六繋天 Part1

<郊外>


山の中。


運転手つきの高級車で山道を進んでいく。


「どんな所にあるんだろうって思ってたけど…」


「まさか山奥とはな」


「他人が簡単に近寄れる場所じゃ困るからな」


「というか、鞍端ってやっぱり…」


「金持ちじゃねぇか!」


「そんなことないって」


「いやいや、否定するにはこの車、あまりにもデカいし」


議論をしている間に目的地に到着した。


**********


<保管庫>


その建物は思いの外、小さなものだった。


「ここが保管庫か」


「さぁ、中に入ろう…

ん?」


「どうした?」


「何か聞こえないか?」


耳をすませる。


微かな音が聞こえてきた。

それは次第に大きくなる。


「これって、バイクの音?」


「誰か来る!」


走行音が激しくなると、一台のバイクが彼らの前に現れた。


「何だお前!」


その人物が口を開く。


「お前らが持つ六繋天を賭け、この俺と五仕旗で勝負してもらおうか!」


「(こいつ、六繋天の存在を知っている!)

何のことかさっぱりだな」


風増はシラを切った。


「誤魔化しても無駄だ。

俺はお前達が、六繋天を賭けた戦いを制し、2枚のカードを入手したことを知っている」


「たとえそうだったとしても、俺達にお前と戦うメリットはない」


「これを見ても同じことが言えるか?」


男がカードを1枚取り出す。

そのカードが光を放つと、山の一角が轟音とともに崩れた。


「なっ!?」


「まさか、あれは…」


「そう、このカードこそ、お前らの大好きな最後の六繋天だ!」


「!」


「お前はなぜ、六繋天を知っている?」


「驚きだぜ。

各地のショップを荒らしまくっている間に、こんな掘り出し物に出会えるとはな!」


「ショップだと?

まさか、こいつが店長の店を!」


「不可解なこのカードについて調べていくうち、大企業の人間で血眼になってカードを探している奴がいることを知った」


「(瀬山さんのことか)」


「そしてそいつは、六繋天を賭けた勝負を始めた。

俺はそこで思いついた。

勝った方を倒してまとめて奪い取る!

我ながら完璧な手だ!

さぁ、渡してもらおうか」


その男は起動スターターのスイッチを入れる。

ライダースジャケットが起動スターターになっているようだ。


「(だが、ここでこいつを倒せば最後の1枚を回収できる。

ここは…)」


その時、遠くから再び音が聞こえ始めた。


「今度は何だ?」


音のする方を見ると、こちらに向かって一機のヘリコプターが飛んできた。

それはやがて入口近くに降りる。


静まる皆の前に、一人の青年が現れる。


「あっ、お前!」


「よう」


扉を開いて出てきたのは、意識を失っているはずの金貨翼だった。


「お前、意識不明だったんじゃ…」


「ああ。だが少し前に目覚めた」


「何しに来たんだよ!」


「随分な言い方だな。いや、俺がお前らにしたことを考えれば当然か。

俺は六繋天を集めにきたんだよ」


「また俺達の邪魔するのか」


「勘違いすんなよ。

俺はもう、お前達と敵対するつもりはない。

目を覚ました時、俺は自分がいかに愚かなことをしてきたかということに気づいた。

その代償として1年も眠り続けるなんてな。

もう懲りたよ…」


金貨は続ける。


「お前達にも悪いことをしたな。

本当にすまなかった」


「金貨…」


「お前達は六繋天の持つ力を封じるためにカードを回収してるんだろ?

ここからは俺にも協力させてほしい」


待ちかねた男が口を挟む。


「ぐだぐだうるせぇ!

まずはお前からだ」


「ああ」


「おい、ちょっと…」


金貨は自身の起動スターターを立ち上げる。


「五仕旗…」


「3rd Generation!」

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