第2章 六繋天回収編

第1話 舞新星

第1話 舞新星 Part1

<廃墟>


「もうあれから1年経ったのか」


「あの日、金貨に勝ってからか。

層上の【蒼穹の弓獅】、知介さんの【ドランチャー・サブマリンド】。それから金貨の【ケルベクロスブリード】」


「6枚の六繋天の内、半分が集まったと」


充快と風増が金貨と争ってから1年が経過した。


「で、今は何枚だっけ?」


「層上の【蒼穹の弓獅】、知介さんの【ドランチャー・サブマリンド】。それからあの日金貨あいつから勝ちとった【ケルベクロスブリード】。全部で3枚」


「全然集まってないじゃん!」


「仕方ないだろ!

俺だってもう少し順調に回収できるんじゃないかと思ってたよ。なのに…」


六繋天回収は思いの外、進展しなかった。

この1年、有益な情報を得たと思っては落胆し…その繰り返しだった。


「もう俺たち2年だよ。このまま卒業するまで見つかんなかったらどうすんのさ」


「いや、べつに卒業するまでに見つけなくても…」


「じゃあ、鞍端は俺に一生付き合わせるつもり?

こんなことに!」


「こんなことって…。そんな言い方ないだろ。

俺にとっては家業なんだぞ」


「俺は仕事じゃないもん。

っていうか、お金とか全然もらってないじゃん!」


「わかった、わかった。

でもそうだよな。六繋天危険な存在をいつまでも野放しにしておくわけには…」


「二人とも、何もめてんだ?」


「知介さん」


知介が入ってくる。


「鞍端がさぁ、このまま六繋天が見つかんなかったら、俺に一生をかけて探し回れって言うんだよ。酷くない?」


「そんなこと言ってないよ!」


「まぁまぁ、充快。そう言うなよ。

こうやって俺たちが一緒にいられるのだって、六繋天が世に散らばっていてくれるからなんだぞ。

六繋天が全部集まって、もう探すものがなくなっちまったら、俺たちは離れ離れにならなくちゃいけないんだからな」


「うん。確かに知介さんの言う通りだね」


首を縦に振る充快に風増が言う。


「素直だなお前は。

別に離れ離れになる必要ないだろ。元々俺たち、六繋天探すために集まったわけじゃないんだから」


「バレたか。

そうだ。俺たちは元々…」


「鞍端に騙されました!」


二人が風増の方を見る。


「はいはい、どうせ俺は悪者ですよ」


この1年で、こんな冗談を言い合えるようになる程度には、三人の仲は深まっていた。


「だけどな、友情や絆だけじゃ探し物は見つからないぞ」


「あんたが焚きつけたんだろ!」


「そんなに六繋天が欲しいなら、もっと手っ取り早い方法があるがね」


入り口から聞きなれない声がする。


「!?」


三人が声のする方を見ると、30代前半くらいの男がいた。

誠実そうな雰囲気がする。


「(こいついつから?)」


「層上充快、鞍端風増、結益知介。

君達が六繋天を回収していることは知っている」


「あんた六繋天のこと知ってんのか?」


「ああ。私もそのカードを集めているのでね」


そう言うと男は、胸ポケットから2枚のカードを取り出し、三人に見せた。


「!?」


青色の先兵モンスターカードであることからすると、六繋天である可能性は高い。


「本当にそのカード2枚は六繋天なのか?」


「私も手荒なことをしたくはないが、どうしても信じられないというのであれば、このカード達に少し暴れてもらってもよいが…」


「やめろ!」


充快が止める。


「(この男、六繋天の持つ力を知っている!)

で、手っ取り早い方法って何?」


「君達の持つ3枚の六繋天、そして我々の持つ2枚の六繋天。

これらを賭けて五仕旗による勝負を行う。

どうだ?」


「つまり、ここであんたを倒せば、俺たちは一気に2枚のカードを手に入れることが…」


「いや、勝負は全7回の、いわばチーム戦」


「7回?」


「先に4勝した方の勝利。敗北した方はそれまでの勝敗に関係なく、所持する全ての六繋天を相手側に差し出す。

さらに、敗者から勝者への六繋天の移動は、全ての決着がついた後に一括して行う。こちらサイドには六繋天を使用しない者もいるのでね」


「(六繋天は敗者から勝者へ渡る。

だが、互いに了承していれば、六繋天が絡む勝負でもカードは移動しない。このルールは実現できる)」


「もちろん、そちらも六繋天を使用しない者が勝負に出ても構わない。さらに、一度対戦した人間が再度勝負しても構わない」


「なんで7回にも分ける必要があるの?」


充快がたずねる。


「これだけの力を持つカードだ。可能な限り丁寧に取り扱いたい。

たった一戦で勝負がついてしまっては、君達も諦めきれないのではないか?」


「こっちのカードは3枚。だが、そっちには2枚しかないんだろ?

それじゃあ、賭けとしてはフェアじゃないんじゃないか?」


「枚数だけで見れば。

しかし君達は現状、六繋天を見つけ出すことに行き詰まっている。

それに先に話したカードの移動条件も、そちら側に配慮したものなのだが」


「何が言いたい?」


「1戦ずつ六繋天の移動が行われると、たとえば、君達が立て続けに敗北した場合は大幅に戦力が削られることになる。

全ての決着がつくまでは、互いの戦力に差が生じないようにしたい」


「随分と上からだな。俺達が負けること前提ってことじゃねぇか」


「失礼。挑発するつもりはなかった。

気を悪くしたのなら謝罪したい」


その言葉通り、この男からはイヤミな感じがまるでなかった。

金貨とは対称的だ。


「勝利すれば一度に六繋天が手に入る。

そちらにとっては、絶好の機会ではないか?」


図星だった。


「この条件で良ければ、対戦を申し込みたいのだが…」


「いいよ!」


充快が急に承諾するので、風増と知介は驚く。


「お、おい。もう少し考えてからの方が…」


「えー、いいじゃん。この人の言う通りだしさぁ。

話し合いで解決しないんだったら戦うしかないよ」


「それもそうか…」


「それじゃあ、一番手は俺で」


充快が手をあげる。


「それではこちらの一人目は私が」


建物を出て、外に移動する。


男は腕時計型の起動スターターを身につけている。


「五仕旗…」


「3rd Generation!」

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