第4話 奇術の技術 Part3

「俺の勝ちだ」


「そんな、私の完璧な奇術が…」


「でも、あなたから学ぶこともあったよ。

相似を縛る鎖コンペティション・チェーン】を破られた時とかビックリしたもん。

あのタイミングで攻撃状態を変えられるとは思ってなかったし」


「君は私のデッキを面白いと言ってくれるのか?」


「うん。楽しかったよ、対戦してて」


その言葉に気をよくしたのか、リックの気分が高揚しているのが伝わってきた。


「そうだろうな!

さぁ、私のマジックをもっと見せてやろう!…」


風増が充快に耳打ちする。


「巻き込まれると面倒だから帰ろう」


「うん」


「すいません、マジックのリクエストってやってますか?」


「おー! これは積極的でありがたい!」


「瞬間移動ってできます?

人が箱から別の箱に移るとか」


「当然! 私にできないマジックなどない!

今、準備をするから少々お待ちを…」


リックは舞台裏に消えていった。


充快と風増も劇場の外へ消えていった。


**********


<廃墟>


「おぅ、戻ってたか! どうだった?」


知介が二人と合流する。


「勝ったよ!」


「おー! やったな! どうだった? 面白い戦い方する奴だったろ、変な奴だけど」


「うん! 勉強になったよ、変な人だったけど」


「知介さんはどうだった?」


「愚問だなぁ。もちろん勝ったよ!」


二人は嬉しそうな顔をする。


「よし、この調子で勝ち続けて、必ずみんなで本戦に残ろうぜ!」


知介が意気込む。


「まぁ、本戦っつっても、企業のイベントに参加するってだけだけどな」


「それでも、勝ち残ることはいいことだよ。

それだけ強いってことだし」


「そうだよなぁ、充快。お前は向上心があっていいなぁ。

えらいぞー。

それに比べてだぁ、風増は強くなろうって気がないのかなぁ?

それともカッコつけてるのか…」


知介がからかう。


「そんな言い方しなくてもいいだろ」


風増がヘソを曲げる。


「悪かったよ。

なぁ、なんか腹減ったな。今からどっか行かね?」


「行こう行こう!」


「層上、お前ホント飯食いに行くの好きだな」


「だっておいしいじゃん」


「じゃあ行くぞ」


そんな二人を、風増は曇った顔で見ていた。


**********


それから数週間。


彼らの勢いは止まることなく、白星を重ね続けた。


初心者の充快も、風増が口を出さずとも立ち回れるほど、実力をつけてきた。


そして…


<金貨visionのスタジアム>


「ようやくここまで辿り着いたな」


「俺、こんな1ヶ月が長く感じたの初めてだよ」


「あの御曹司もここに来てるのかな?」


「来てるだろ。あんだけ言って来てなかったら、いよいよあいつ何なのって話だし」


「すげぇ、嫌な奴だったもんな。

俺、未だに頭にきてるもん」


「まぁ、充快。そうカッカすんなよ。せっかく勝ち残ってここまで来られたんだから、楽しもうぜ」


「それはそうだけど…」


「知介さん、俺も腹立ってっから、一発…」


「おいおい、暴力はダメだぞ!」


「パンチじゃないよ、キックを…」


「攻撃方法じゃないんだよ!

手を出すのはいけないことだから、蹴りならどうですか?じゃないんだよ!」


「わかった! わかったよ!冗談だから!」


「(だけどあいつ、面白いもの見せてやるって、今日のお披露目会の新作映像のことを言ってるんじゃないだろうし…)」


「層上、大丈夫か? 緊張してんの?」


「え、あぁ。大丈夫だよ」


三人はホールの中にいた。

参加者選抜で勝ち抜いた者たちは、他の招待客とともにこの場に呼ばれているのである。


会場の照明が少しずつ暗くなっていく。


「ご来場の皆様、お待たせいたしました。

ただいまより、金貨visionの新作映像技術発表会を開催いたします」


拍手が起こる。


会社の重役と思しき面々が次々に登場する。


「あ、あいつ…」


充快が風増に話しかける。


「ああ」


皆が目の敵にしている青年が現れた。


続く…


**********


起動スターターってなんで"起動"って書くの?」


「ゲームを始める時に、最初に起動するかららしいよ」


「じゃあ起動スターターってなんであんなにたくさん種類があんの?」


「ファッションとかアクセサリーとしての価値も高いからだと思うけど。

五仕旗をやってない人でも起動スターターのデザイン目当てで買う人もいるとかいないとか」


「ホント起動スターターってなんなの?」


次回 運を司る騎馬兵

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