第3話 無念を継ぐ者 Part2(ゲーム)

鞍端風増 vs 日高陽ひだかよう


TURN1

(風増のターン)


「俺の先攻。【シルフコーン】召喚」


【シルフコーン】

固有ターン1 攻撃力500

通常効果:戦闘する時、手札から異なる2種類のカード(規約カード、伏兵カード、城カード)を捨てることで、相手の攻撃力をこのモンスターと同じにする。

(小柄な一角獣。普段はおとなしく正義感が強い)


手札

風増:5枚

日高:5枚


TURN2

(日高のターン)


「俺のターンだ。【無念を内に秘める骸】を召喚」


【無念を内に秘める骸】

固有ターン1 攻撃力0

通常効果:???

(仲間の裏切りにより命を落とした亡霊。この世に未練を残し留まっては、復讐の機会をうかがっている)


「攻撃力0?」


「(俺の場のモンスターより攻撃力が低いモンスターをわざと召喚したのか…)」


「さらに城カード【執念帯域陣しゅうねんたいいきじん】を発動」


日高の場に魔法陣のような模様が広がる。


執念帯域陣しゅうねんたいいきじん

城カード

効果:???


「城カードってあの黄色のカードだよね?」


充快の問いに知介が答える。


「ああ。発動したら墓地へは行かずに場に留まる。

プレイヤーの場に効果をもたらすカードが多いんだ。

まぁ、"城"っつても、城のカードはほとんど見たことないけどな」


「ターン終了」


「(これで終わり?俺の攻撃を誘っているのか?)」


手札

風増:5枚

日高:4枚


TURN3

(風増のターン)


「(とにかく、やってみないことには始まらない!)

俺のターン。来い!【手刀豹しゅとうひょう】!」


手刀豹しゅとうひょう

固有ターン3 攻撃力900 打撃攻撃力1100

打撃効果:攻撃した時、このモンスターの破壊を無効にして、その相手モンスターの攻撃を1ターン封じ、攻撃力を300下げる。

(素手で闘うタイプの豹。元々は武器で闘っていたが、手入れが面倒だという理由で現在のバトルスタイルになった)


「(ここは攻めるしかない!)

バトルフェイズ!

【打撃攻撃】発動」


【手刀豹】打撃攻撃力1100

      vs

【無念を内に秘める骸】通常攻撃力0


【無念を内に秘める骸】が力なく倒れる。


「あんたには【手刀豹】の攻撃力1100ポイントのダメージを受けてもらうぞ」


「いや…伏兵カード【過負荷】。

俺が受けるダメージを2倍にする」


【過負荷】

伏兵カード

発動条件:自分がダメージを受ける場合。

効果:ダメージを2倍にして、次のターンのドローフェイズで+2枚ドロー。


「自分からダメージを増やすだと!?」


「何考えてんだあいつ!?」


日高の累積ダメージ:2200(0+1100×2倍)


「この効果で次の俺のドローフェイズ、さらに2枚のドローが可能になる」


「(ドロー枚数を増やすためにこんなことを?

そこまでして引きたいカードがあるのか? それとも…)」


「さらに破壊された【無念を内に秘める骸】の効果で、俺はさらに500ダメージを受ける」


「なに!?」


一同は驚愕する。


【無念を内に秘める骸】

固有ターン1 攻撃力0

通常効果:戦闘でこのモンスターが破壊された時、自分に500ダメージを発生させてもよい。

(仲間の裏切りにより命を落とした亡霊。この世に未練を残し留まっては、復讐の機会をうかがっている)


日高の累積ダメージ:2700(2200+500)


手札

風増:4枚

日高:3枚


「(なんなんだこの男は。こんな戦術、今まで見たことないぞ)」


TURN4

(日高のターン)


「俺のターン、ドロー」


日高がドローフェイズで7枚ドローする。

(通常の5枚+【過負荷】による2枚)


「出てこい。固有ターン3【冥界をむさぼる墓荒らし】!」


フードで顔を覆ったモンスターが召喚された。

手に鎌のようなものを握っている。


【冥界を貪る墓荒らし】

固有ターン3 攻撃力0 思念攻撃力0

思念効果:戦闘時、このモンスターの名前と攻撃状態を互いの墓地のモンスター1体の名前と攻撃状態として扱うことができる。

ターン終了時にこれらの情報はリセットされ、【冥界を貪る墓荒らし】に戻る。

(どのような罠が仕掛けられている墓標でも、お構いなく入り込む墓荒らし。自身の腕に絶対的な自信を持っている)


「また攻撃力0だと!?」


「これが俺のエース。

俺は固定概念ってものが嫌いなんだよ。

攻撃力が低いからって必ずしも弱いとは限らない。

固有ターン5のモンスターだけが切り札なのか?

そうじゃないことを今からお前たちに教えてやるよ。

バトルだ!

【思念攻撃】!」


【思念攻撃】

攻撃カード

効果:モンスターの思念攻撃状態を解放する。


【冥界を貪る墓荒らし】思念攻撃力0

        vs

【手刀豹】打撃攻撃力1100


「これじゃあ、返り討ちにあうだけじゃん」


「伏兵カード【ステルスモード】。

攻撃力0のモンスター1体は攻撃力0である限り、戦闘で破壊されなくなる!」


【ステルスモード】

伏兵カード

発動条件:攻撃力0のモンスターがいる場合。

効果:攻撃力0のモンスター1体は攻撃力が0である限り、戦闘で破壊されなくなる。


【墓荒らし】の鎌と【手刀豹】の手が衝突する。


「戦闘自体は【墓荒らし】の敗北だが、【ステルスモード】の効果で破壊されねぇ」


「これじゃあ、何のために戦闘したか分かんないよ」


「さらに城カード【執念帯域陣】の効果!

相手にダメージを与えていないターン、俺のモンスターはもう1度攻撃できる」


「もう1度?」


執念帯域陣しゅうねんたいいきじん

城カード

効果:相手にダメージを与えていないターン、自分のモンスターはもう1度攻撃できる。


「でもそれじゃあ、さっきと同じじゃ…」


「違うな。

【冥界を貪る墓荒らし】の思念効果発動!

冥体めいたい召喚!」


墓地から【無念を内に秘める骸】が、青白い幽霊となって現れた。


「こいつはさっき俺が倒したモンスター…」


「そう、【墓荒らし】の思念効果は、戦闘時、互いの墓地からモンスター1体を選び、そのモンスターの名前と攻撃状態を得る効果。

敗れた者の無念を晴らすためのモンスター。

今【冥界を貪る墓荒らし】は【無念を内に秘める骸】となり、通常攻撃状態となった!」


【無念を内に秘める骸(冥界を貪る墓荒らし)】通常攻撃力0


「だが、攻撃力は0のまま。それでは【手刀豹】は倒せない!」


「だといいけどな!」


「!?」


「伏兵カード【未練憑依体】!

これで亡霊を宿したモンスターの攻撃力は、その苦痛の分だけアップする!」


【未練憑依体】

伏兵カード

発動条件:名前が元々のカード名と異なるモンスターが、2回目の攻撃をする場合。

効果:そのモンスターは攻撃力が自分の累積ダメージと同じになる。


【無念を内に秘める骸】通常攻撃力2700(0+2700)


「攻撃力が奴の累積ダメージと同じに!

あいつ、そのためにわざとダメージを増やしていたのか!」


【無念を内に秘める骸】通常攻撃力2700

         vs

【手刀豹】打撃攻撃力1100


【手刀豹】が破壊される。


風増の累積ダメージ:2700(0+2700)


「(くっ…一気に追いつかれた)」


「あの人のデッキ、わざとダメージを受けて攻撃力を上げるなんて型破りだね」


「それだけじゃない」


「え?」


知介が続ける。


「【執念帯域陣】は攻撃をしても相手にダメージが与えられなければ、再度攻撃できる効果を持つ。

ってことはだ。風増が伏兵カードとかのなんらかの方法で、攻撃を防いだとしても、すぐさま二発目の攻撃がふりかかる。

あのデッキは相手の守備も潰す恐ろしいデッキだ」


「鞍端。大丈夫なのか…」


「ターン終了に伴い、【墓荒らし】は元に戻る。」


【冥界を貪る墓荒らし】思念攻撃力2700


「どうだ?俺のデッキは?」


「正直驚いたよ。俺も長く五仕旗をやってるけど、こんなデッキは初めて見た」


「なら未知のデッキに恐れをなして諦めるか?」


「いや、俺も負けるつもりはないんでね」


手札

充快:4枚

日高:4枚


TURN5

(風増のターン)


「俺のターン!来い!固有ターン5【ラピッド・コンバットホース-Eイプシロン】」


【ラピッド・コンバットホース-E】

固有ターン5 攻撃力1500 打撃攻撃力1800

打撃効果 (重発動リリアクト):このモンスターの戦闘で伏兵カードが発動した場合、それに対して発動可能。その伏兵カードを無効にできる。(ただし、1ターンに1度のみ)

(身体が白と黒でカラーリングされた馬の格闘家。武術に長けていて大抵の者は恐ろしくて口出しできないのを本人は気にしている)


「(たしかあのモンスターの効果は…)」


日高が息を呑む。


「バトル!

【打撃攻撃】!」


【ラピッド・コンバットホース-E】打撃攻撃力1800

        vs

【冥界を貪る墓荒らし】思念攻撃力2700


「攻撃力の低いモンスターで向かってくるか」


「規約カード【昇順革命ドミナント・リベリオン】。

このターン、全ての戦闘は攻撃力が低い方が勝利する!」


昇順革命ドミナント・リベリオン

規約カード

効果:このターンの全ての戦闘は、通常の戦闘とは勝敗が逆になる。


「これであのモンスターを倒せるね!」


少し笑う日高。


「そんなことだろうと思ったよ。

伏兵カード【運命の両刃】!

相手モンスターの攻撃力を1000上げる!」


「なっ!」


【運命の両刃】

伏兵カード

発動条件:相手ターンのバトルフェイズ。

効果:相手のモンスターの攻撃力をこのターンの間、1000上げる代わりに、次の自分のターンのバトルフェイズの間、自分モンスターの攻撃力が1000上がる。


「(お前の【ラピッド・コンバットホース】には、戦闘時に発動した伏兵カードを無効にできる効果があるはずだ)」


「風増のモンスターの効果であの伏兵を無効にすれば、【墓荒らし】を破壊して1800のダメージを奴に与え…」


「鞍端の勝ちだ!」


「(だが、それをした瞬間、俺の手札にある【返す刀の引き金ストライクバック・トリガー】が発動する。


返す刀の引き金ストライクバック・トリガー

伏兵カード(重発動リリアクト)

発動条件:効果が無効にされる時、それに対して発動する。

効果:その効果を無効にして相手に1000ダメージを与える。


どの道お前に勝ち目はない!)」


「俺は…【コンバットホース】の効果は使わない!」


「!?」


【ラピッド・コンバットホース-E】打撃攻撃力2800(1800+1000)

          vs

【冥界を貪る墓荒らし】思念攻撃力2700


「馬鹿な! この状況で発動を放棄するのか!?」


「使わずとも勝てる!

規約カード【攻傷調整アジャスト】。

この戦闘でのダメージはモンスター同士の攻撃力の差になる!」


攻傷調整アジャスト

規約カード

効果:この戦闘でのダメージを勝利したモンスターの攻撃力の数値でなく、モンスター同士の攻撃力の差に変更する。


「でもそれじゃあ、100ポイントしか奴のライフを削れないぞ…」


「問題ない!

さらに伏兵カード【弾性力】!」


「さらなるカードだと!」


【弾性力】

伏兵カード

発動条件:場に攻撃力が変化しているモンスターがいる場合。

効果:その変動値の2倍を逆方向に作用させる。


「このカードはモンスターが場に出た時の攻撃力と現時点での攻撃力が異なる場合、その変動値を逆方向に2倍作用させるカード。

【コンバットホース】の最初の攻撃力は1500。

そして今の攻撃力は2800。

つまり、+1300分の攻撃力アップが-2600分の攻撃力ダウンになる。

この効果で【コンバットホース】の攻撃力は…」


【コンバットホース】の打撃攻撃力200(2800-(+1300)×2倍)


「攻撃力200だと!?」


「そしてこのターン俺が使った2枚の規約カード。

まず【昇順革命ドミナント・リベリオン】の効果で攻撃力の低い【コンバットホース】が戦闘に勝利し、【墓荒らし】を破壊。喰らえ! 鉄槌乱気スパイラル・パニッシュ!」


【コンバットホース】の蹴りで破壊される【墓荒らし】。


「そして、【攻傷調整アジャスト】の効果で本来あんたが受ける200のダメージは、互いの攻撃力の差2500になる!」


「(嘘だろ! あの状況からカード効果を重ねて逆転するとは!)」


日高の累積ダメージ:5200(2700+2500)


風増の勝利。

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