第3話 無念を継ぐ者

第3話 無念を継ぐ者 Part1

<教室>


「それで、この人と勝負したいと思ったら日時や場所を提案・申請して、相手からオッケーが出たら勝負できる。

分かった?」


「うん。

だけど、他の参加者が見られるのは分かったけど、どの人と戦えばいいのか分かんないよ」


充快がケータイの画面を見つめ困惑する。

画面には参加者の顔写真や名前が揃っているが、その他の情報はほとんどなかった。


「その辺はやっぱ、あの人だな」


**********


<廃墟>


「え~、今週のメールテーマは"買わなきゃよかった…"。

リスナーの皆さんが、何で買っちゃったんだろうと思ったものを送ってきてもらってます。

RNラジオネーム:What's my color?

私が買わなきゃよかったものは、ゲームのハードです。

学生の頃、すごく流行ったゲーム機があり、クラスのほとんどの人が持っていたのですが、私はブームに流されるのが嫌いだったので、意地でも買うまいと思っていました。

しかし、友達から遊んでいるゲームの話を聞いているうちに段々と興味がわき始め、欲しいと思う気持ちがピークに。

私は意を決して、そのゲーム機を購入。ゲーム自体はとても楽しかったのですが、その1ヶ月後に事件が起こりました。

なんと、そのハードの新規モデルが発売することが決定したのです。価格は私が購入したものとほぼ同額で、従来のものよりバッテリーの持ちがよい、通信速度が高速など、目と耳を疑いたくなるほどのショックでした」


「あ~分かる」


知介が一人、相槌をうつ。


「あるよね。ゲームか。いや、あんのよ。ホントに、こういうこと。

発売直後に買って、たっぷり遊ばせてもらいましたってんならね、まだ、いいんだけど。

こっちは興味なかっただけじゃなくて、おこづかいやらなんやら、色んな事情で買えず、買わず。

そこを乗り越えて、やっと手に入れたって時にこれだもんな。

俺もあったよ、昔、似たようなこと。

いわゆるシリーズもののソフトってあんじゃん。

RPGゲームとか、育成ゲームとか。

それでそういうゲームって、前のシリーズで育てたキャラクターとかを次のシリーズに引き継いだり、送ったりできんのよね。

だから、当時子どもだった俺は、次のシリーズが発売るっていうから、育ててたの、子龍こりゅう

子龍って子どものドラゴンね。その子龍を一生懸命。

来る日も来る日もレベル上げ。

段々強くなって、あのかわいかった子龍が立派なドラゴンになって。あんなちっちゃかったのに、大きくなったねっつって。

で、発売日になって、大事に育てたその子龍をいってらっしゃいしようと思ったら、できねぇの 」


作家が笑う声が聞こえる。


「えっ! ってなったよ、マジで。

もうそこまで来たら、子龍だけじゃなくて、俺にも経験値入ってるからね。俺もLv.レベルMAXですよ、ホント。

完全に新しい冒険の地とともに、Lv.1ですよ。

で、よくパッケージの裏とか、公式サイト見ると、旧シリーズと通信することはできませんって書いてあんだよね。

こっちが勝手に思い込んでただけっていう。前はできてたから。

ありましたよ、そういうことも。

RNラジオネーム:What's my color?には、番組特製の安眠マクラ、"目のクマクラ"をプレゼント」


「知介さん」


充快と風増が入ってきた。

知介は再生を止める。


「おう、どうした?」


「俺たち、金貨visionヴィジョンのお披露目会の参加者選抜に参加してんだけど…」


風増がケータイを見せる。


「ああ、これか。俺も出てるよ」


「そんで、参加者が確認できんだけど、誰と戦ったらいいか分かんないんだよね。

知介さん、その辺詳しいから、何か知らないかなと思って」


「そういうことか…」


知介も自分のケータイで参加者の情報を確認する。


「弱いやつじゃつまんないだろ?」


二人がうなずく。


「それなら、こいつとかどうだ?」


**********


<廃墟の近く>


「この辺だと思うんだけど…」


充快、風増、知介の三人は、廃墟の近くにある空き地に来ていた。


「お前か? 俺の相手は」 


物陰から二十歳前後の男が現れた。

どこか暗い雰囲気がある。


「そうだ」


風増が前に出る。


その男は黙ったまま起動スターターを身につけた。


「五仕旗…」


「3rd Generation!」

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