第171話 vsリヴァイアサン ⑨窮地と活路
(三人称視点)
(不味い……!)
シテンは己の失策を悟ったが、既に後の祭りであった。
リヴァイアサンは
(【
シテンはこの戦いにおいて、ほぼずっと【
【
只でさえ力の流れを制御し、自傷しないよう細心の注意を払っているという状態。そこに他のスキルを同時発動するとなれば、力の流れに揺らぎが生じてしまう。
つまり今のシテンでは、攻撃時にどうしても隙ができてしまうのだ。
そして。
『奴に補給の隙を与えるな! ――【
『わかっている! ――【激流砲】』
いつの間にか、頭部だけになっていたリヴァイアサンは全身を再生し終えている。
捕食された事で傷口を
幾分か身体は小さくなっていたが、それでも戦闘に支障はないようであった。
そして先ほどの【激流砲】の直撃で集中力を乱したシテンは、自身を守る【
そして自身に酸素を供給する、命綱の
つまり今のシテンを守るものは何もなく、酸素もなく、そしてスキルすらも使えない。
絶体絶命の窮地であった。
(クソッ……やっぱり隙は与えてくれないか!)
シテンは息を止め、濁流の渦を身を丸めてやり過ごす。
しかし激流に流されることまでは防げず、泳げないシテンは最早身動きすら取れない。
『フハハッ、なんと不恰好な泳ぎだ! そら、さっきまでの威勢はどうした!?』
『おい。気を抜くなと言ったであろうが。人間は窮地にこそ活を見出す生物。我らは一度それで敗れたのを忘れたか? こちらの猶予も少ないが、急かず確実に仕留めろ』
『……チッ、わかったよ』
(コイツら、二匹でそれぞれ性格が違う……けど、コンビネーションは抜群だ! 互いの隙を埋めあって、油断もしてくれない!)
相手の隙すら見つけられないシテンは、激流に文字通り翻弄されるしかない。
激流と飛散する鱗、瓦礫がシテンの身体に傷をつけていく。
致命傷こそ避けてはいるが、それも時間の問題だ。そうでなくとも、やがてシテンは酸素不足で意識を失う。
(クソッ、スキルさえ使えれば……! 何か打開策を!!)
『――おいシテン、聞こえているカ!』
そんな絶体絶命の状況で、シテンの聴覚がある音声を捉えた。
(師匠……!)
『状況は大体把握していル! クララをそっちに向かわせるから、それまで
『――させると思うか?
カルキノス。【
リヴァイアサンがそう告げた瞬間。マジックアイテム越しに、ユーリィ達の居る場所から凄まじい衝撃音と金属音が連続して鳴り響く。
ユーリィの声は、たちまち聞こえなくなった。
『カルキノスは不完全な状態で起動した【
……この最終局面に至って、最早制限を掛ける必要もない』
『ハハハ! お仲間の助けは間に合わないぞ? その前に貴様は殺す! ミカエルも粉々に粉砕してやろう!!』
(……クソ。不味い、意識が――)
ユーリィの助け舟すら望めない事実を突きつけられ、ついにシテンに限界が近づいてきていた。
――しかし。それでも。
最後の一片まで諦めようとしない、シテンの生への渇望が、極限まで集中力を研ぎ澄ませる。
――マジックアイテムから、まだ微かにユーリィの声が聞こえていた。
『よく聞けシテン!
しかし。無情にも放たれた【激流砲】が、シテンの身体を再び貫く。
ユーリィとの連絡用のマジックアイテムが、粉々に砕け散った。
『これ以上余計な真似はさせん』
『もう奴は瀕死だ! あと一発ぶち込めば終わる!!』
(――――)
ユーリィからの助言は、最後まで聞くことはできなかった。
しかしそれを聞いたシテンの胸中には、ある
(水中では――スキルを使うことはできない。
活路はある。
それを聞いたシテンは、諦めずに思考する。思い出す。
ミノタウロスとの戦いの時と同じ。極限状態においてフルスロットルに稼働したシテンの頭脳が、これまで見てきた
(全てに共通する弱点――本当にそうなのか?)
『止めを指すぞ。――【
『砕け散れ! ――【激流砲】!!』
しかし。だとすれば。
リヴァイアサン達は、なぜ水中でスキルを発動できているのだろうか?
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