第152話 気分転換
「……色々と、衝撃の展開だったな」
女神様の死という、衝撃的な事実をガブリエルが暴露して、しばらくした後。
僕たちは巨塔バベルを降りて、一旦地上に戻ってきていた。
『ちょっと色んなこと、いっぺんに喋りすぎてもうたな。お互い冷静に話し合いあうるためにも、今日の所は一旦お開きにしよか』
そんな提案をしてきたガブリエルこそが、混乱の元凶ではあるけれど……正直、ありがたい提案でもあった。
シアとウリエルさんは明らかに
交渉をするにも、落ち着いて話ができる状態でなければならない。そのためのクールタイムという訳だ。
「……シア、調子はどう?」
「私は大丈夫です……でも、ウリエルさんが」
そう言ってみせるシアだが、まだ顔色は
しかしウリエルの方が具合が悪いのも事実だろう。彼女は真っ青な顔色になって、心ここにあらずといった様子だった。
「……すみません、皆さん。まだ私、ガブリエルの言っていた内容が上手く飲み込めなくて」
「ウリエルさん、今は休んだ方がいいと思います。僕たちですら飲み込めていないんですから、当事者であるウリエルさんにはもっと時間が必要でしょう。続きは明日になりますし、今日はゆっくり休んでください」
「……ありがとうございます、シテンさん。お言葉に甘えさせてもらいます」
そう言うとウリエルさんは用意してもらったバベル内部の寝室へと、ややおぼつかない足取りで向かっていく。
「……私、ウリエルの側に居るわ。流石にあんな状態の彼女を無視できないし。それに私も、あんまり出歩かない方がいい立場だからね」
「ごめん、助かるソフィア」
恐らくこの場で最もウリエルと仲が良いのは、ソフィアだろう。
ウリエルを自分の家に泊めてあげるほどの仲だ。お互い側に居れば心強いだろう。
……ウリエルさんの事はソフィアに任せよう。僕は僕で、この首都バビロンでやるべき事がある。
「今日一日暇になっちゃったし、僕は気分転換がてら外を歩こうと思うんだけど……リリス、シア。二人はどうする?」
「私はシテンさんと一緒に街を出歩いてみたいです! 迷宮の外に出るのは初めてなので、この機会に外の様子をもっと見ておきたいんです!」
「……じゃあ、よければ私もご一緒していいですか? 少し私も、気分転換をしたいので」
「もちろん」
二人とも、僕の外出に同行してくれるようだ。
断る理由もないし、一緒に外出の準備をする。後は師匠がどうするかなんだけど……
「さっきから黙りこんでますけど、どうしたんですか師匠」
『……何でもなイ。少し
「……?」
いつもの余裕そうな師匠の声に、若干の苛立ちが混じっているように聞こえた。気のせいだろうか?
元々特徴的な発音をしているので、声色から感情を読み取るのが難しいのだけれど。
……いや、今は師匠の事を考えても仕方がないか。迷宮都市にいる師匠が何をしているかなんてわかるわけもないし、聞いても教えてくれないだろう。
ここは素直に師匠の指示に従っておこう。
僕と師匠の目的物――【初代勇者の聖骸】を確認するために。
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