第141話 【狂犬】vs【尸解仙】vs【解体師】
狩りをした経験は幾度もあるが、狩られる側に回るのはあまり覚えがない。
猟犬に追い回される獲物とはこんな気分だったのだろうか。
「
ケルベロスの体すら切り裂く、不可視の刃が飛ぶ。
迫るクララさんを牽制するための飛び道具。しかし流石にSランク、僕の攻撃など簡単に避け――ない！？
「おお、なんだかヒリヒリしますね」
「は！？」
嘘でしょ……？
【
しかし食らった本人はそんな
その柔肌には、傷一つ付いていない。
「イカレてる……防具なしでどんな防御力なんだ！？ ミノタウロスでもここまでじゃなかったぞ！」
『奴は肉弾戦に置いては最強と言ってもいイ。その肉体の防御力も、無論攻撃力も最強ダ。まともな攻撃が通ると思うナ』
「そんな人に一撃入れろと！？ 無茶苦茶すぎるでしょ師匠！！」
「うーん、素敵な師弟関係ですね。仲良しのようで何よりです。……さて、次は私の番ですね」
瞬間、クララさんの姿が視界から消えた。
いや違う、僕がぶっ飛ばされたんだ。
「クハッ！？」
肺の中の空気が全て押し出される。ボールのように体が転がっていく。痛い。
だが、
「師匠ッ！」
『そんな声を出さなくてもここに居ル。咄嗟に身を捻ったカ』
今の一瞬、クララさんは僕目掛けて攻撃してきた。いや実際には指でちょっと
だが同時に、師匠の呼び出した骨の盾が攻撃を防いでいた。
盾は一瞬で砕け散ったが、生まれた僅かなタイムラグのお陰で防御が間に合った。
師匠がフォローしてくれなければ多分、僕は昏倒していただろう。
「良い反応ですね。Aランク探索者の域はとっくに超えています。流石にミノタウロスを下しただけの事はある」
『あまりコイツを調子付けるような事を言うナ。ちょっと油断したらすぐ死にかけるからな、昨日の修行で私が何回蘇生したと思っていル』
「師匠は一体どっちの味方なんですか……！」
くそっ、分かってはいたけど強すぎる！
昨日の修行の疲れが抜けてないとはいえ、反応するので精一杯。
これじゃ一発当てるどころか、マジックアイテムのブローチすら守りきれない！
師匠の助力なしで聖国に向かうのはリスキー過ぎる。なんとしても避けなければならない。
……相手は遥か格上。真正面から戦うのはあまりにも無謀だ。
ならば、搦め手。超防御、超高速で動く的にどうすれば攻撃を通せるか、考えろ。
『……さて、そろそろカ』
「ええ、人が居なくなりましたね」
「えっ……」
そういえば……
戦いに集中していて気づかなかったが、気づけば辺りには僕ら以外誰もいなくなっていた。
当然だろう、誰が好き好んでSランク同士の闘争に巻き込まれたがるものか。
……あ。
『
そうだった。この人達さっきからスキルを使っていない。
……にも拘わらず、この力量差。これが人類最強の十二人。
力の底が計り知れない。
「大人しく捕まってくれれば、被害も出ないんですけどねー」
『どの口が言ウ。お前も体を動かしたくてうずうずしている
「……バレてました？ まあ私のボール遊びに付き合ってくれる人なんて滅多にいませんからね。正直嬉しくて尻尾フリフリですよ、私」
「尻尾とか元々ないですよね？ あとさらっと僕のことボール扱いしましたか！？」
冗談じゃない、こんな馬鹿げた遊びに付き合ってられるか！
いくら身があっても保たない。短期決戦で終わらせる！
「【
『――【
「【爪】」
そして各々がスキルを解禁し、街中で始まった乱闘は更なる混迷を深めていく。
◆◆◆
https://kakuyomu.jp/works/16817330667663405674
新作始めました。
現代ダンジョン配信×飯テロ×無双モノです。
こちらは毎日更新を現在行っておりますので、ご興味ありましたら是非！
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