第75話 面会タイム


 収容所でぐっすり仮眠を取った後、ソフィアとシアが面会に訪ねてきた。


「ごめんね心配かけちゃって」


「シテンさん、体は大丈夫ですか!? 襲われたって聞いて、居てもたってもいられなくて……!」


「わ、私が酔いつぶれてる間にこんな事になってたなんて……我ながら情けないわ」



 ソフィアの家の前で騒ぎを起こしたのにもかかわらず一向に来なかったのは、やはりお酒の効果でぐっすり眠っていたかららしい。朝起きてからギルドに知らされてビックリしたそうだ。

 鉄格子越しに面会するソフィアは、流石に酔いも醒めているようだった。申し訳なさそうに顔を手で覆っている。


 ……あの様子だと、昨夜の抱き枕事件のことは覚えてなさそうかな。

 あれはお酒の勢いで起きた事だ。ここは掘り返さずにお互いのためにも黙っておこう、うん。


「体のほうはもう大丈夫だよ。ちょっとケガしたけどギルドの人が治してくれたし。僕の容疑も晴れてるから、あとはちょっと用事・・を済ませば釈放してもらえる予定」


「そ、そうですか……とにかく、シテンさんが無事で何よりです」


 ホッとした表情で胸元に手を置いて安堵するシア。

 余計な心配を掛けちゃったな。今度何かで埋め合わせをしないと。


 そこである程度落ち着きを取り戻したソフィアが、気になっていたであろう質問を投げかける。


「一体誰が、何の目的でシテンを襲ったの? 犯人は捕まったって聞いたけど、ギルドの本部は何も教えてくれないし」


「うん、そこなんだソフィア。今尋問してくれてるみたいだけど、なかなか口を割らないらしい。未だに奴らの目的や正体が分からないままなんだ」


 ギルドの本部には、『特別隊』と呼ばれる専門家たちが居る。

 犯罪者の拘束、尋問、事件の調査など、迷宮都市の治安を守るために裏で活躍している人達だ。

 僕の容疑を晴らしてくれた鑑定士の人たちもここの所属だが、さすがに鑑定スキルであっても人の心までは読めない。

 なかなか口を割らない襲撃者に苦労しているらしい、情報がつかめるまではもう少し時間が要るだろう。

 ちなみに、僕が生け捕りにした石化事件の犯人、クリオプレケスもここに捕まっているとか。引き渡して以来続報が無いけどどうなってるんだろう?


「そこでソフィアに提案なんだけど、一旦身を隠してもらいたいんだ。もし襲撃者の目的がソフィアだったなら、また同じように襲撃されないとも限らないからね」


「身を隠す……? シテンの言い分は分かるけど、どこに隠れればいいの? 隠れ家のあてなんてないわよ?」


「ギルドが身の安全を保障してくれれば良かったんだけどね……流石にずっと守ってもらえる訳でもないから」


 ……ギルド側が襲撃犯と通じている、って可能性もゼロではないし。


「だからソフィアには、迷宮に向かってほしいんだ。丁度リリスに昨日のお土産を持っていく予定だったし、釈放されたら一緒に行こう。そこで数日、リリスと一緒に迷宮で隠れていてほしい」

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