第62話 もう一つのエピローグ
(?????)
「クリオプレケスの奴、結局負けてんじゃん! 使えねー!」
大迷宮【魔王の墳墓】。その地下深くに、あどけない少年の声が木霊した。
「わざわざあの状態から蘇らせてやったってのに、ろくな研究成果もあげないままやられてるし! しかも生け捕りにされた!? こっちの情報吐かれたらすげー面倒なことになるんだけど!」
クリオプレケスには余計な情報が伝わらないよう、少年は細心の注意を払っていたつもりだが、それでも情報漏洩のリスクは残る。
当然の対策として、クリオプレケスを運んでいるシテン達を、口封じも兼ねて襲撃しようとした、が。
「は? 全滅? ケルベロス二十匹差し向けたのに?」
報告を受けて、少年は耳を疑った。
撤退中のシテン達に向かっていたケルベロスの群れは、途中で遭遇した
本来の目標だったシテン達は、何ら妨害を受ける事なく地上に脱出してしまった。
こうなるともはや、少年からは手出しが出来ない。
Aランクモンスターのケルベロスの群れを単独で殲滅。
そんな芸当が出来るのは、迷宮都市といえども限られてくる。
「……Sランク冒険者か。普段からどこで何やってるのか分からないくせに、こういう時に限って僕らの邪魔をする……天災みたいな奴らだな」
思わずため息をつく少年。
そんな天災に巻き込まれた哀れなケルベロス達は、魂ごと肉体を破砕されていたという。
少年の力をもってしても、もはや蘇生は不可能だった。
「はぁ~。ケルベロスを失うし、研究成果も大して役に立たなかったし、
愚痴を吐く少年の顔には、左目を覆うように眼帯が付けられている。
「やっぱ外部委託はダメだな。いくら効率が悪くても、今回みたいなトラブルを招くリスクを考えたら僕らだけで内々に進めた方がいいや。時間の問題とはいえ、僕らの存在に気付かれない方が動きやすいもんね。反省反省」
残された右目、エメラルドグリーンに輝く瞳が、何かを考えるように右上を見やる。
「一つ気になるのは、あのユニークスキルか。確かシテンとか言ったっけ?」
少年の脳裏に浮かんだのは、シテンの存在だ。
世にも珍しいユニークスキルの持ち主。最初は珍しいものを見たな、くらいの感想だったが、次第に別の考えが浮かびあがってくる。
「ユニークスキル【解体】。あのスキルで斃されたケルベロスの死体は、消滅することなく未だに残り続けている。明らかに異常だ」
ソフィアとシテンの連携攻撃で爆散したケルベロスだが、完全に肉体が消滅したわけではなかった。
あの後ケルベロスの残骸は回収され、討伐者であるシテンとソフィアの下に届けられていたのだ。
もはや肉片に近い状態であっても、Aランクモンスターのものとなると、貴重な素材には変わりない。
「【魔物は迷宮の外に出ることが出来ない】。その法則は死体であっても適用される。なぜなら
少年の口が、逆三日月の弧を描く。
クリオプレケスの研究は失敗したが、最後に思わぬ情報が手に入った。
シテンという少年の存在は、彼らにとって福音をもたらすものだと、少年は心の中で確信していた。
「あーあ、もっと早くあの少年の存在を知ってたら、全然話が違ってきてたんだけどな。まあ僕ら地下に引き篭もり気味だし、外部の情報に疎いのは仕方がないんだけど。……その点外部の情報に鼻が利くクリオプレケスは重宝してたんだけど、あいつの事はもういいや」
そう言って少年はクリオプレケスへの興味を失った。
彼が興味を抱いているのは、埒外の能力を持つユニークスキル。
「
◆◆◆
これにて第二章完結です!
ここまでお読みいただきありがとうございました!
次回からは三章に突入します。
久々に勇者視点で始まるので、次章以降もお付き合いいただければ幸いです。
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