第55話 「いい加減に終わらせよう」
(?????)
――アークリッチ、クリオプレケスが敗れた後、そしてケルベロスが斃される前。
「あーあ、クリオプレケスの奴負けちゃったよ。ちょっとあっさりやられすぎじゃない?」
闇の中に、童子のように無邪気な声が響く。
「せっかく『蛇の眼』とケルベロスを貸してやったんだから、もう少し頑張ってほしいよね」
声変わりもまだであろう、少年の高い声が、迷宮の奥深くに木霊している。
「……とはいえ、このまま眺めてるわけにもいかないか。彼の研究は僕たちにとっても、それなりに有用だからね。
――少年は嗤う。その透き通る声に、隠し切れない悪意を宿らせて。
「もう少し頑張ってくれよ、クリオプレケス。僕らはこの薄汚い迷宮から、早く外に出たいんだ」
◆
(一人称視点)
「リリス。遅くなってごめん。助けに来たよ」
リリスを襲おうとしていた影の触手を【
「シ……シテンさん!」
涙ぐんだ声で僕を呼ぶ、リリスの声が背後から聞こえる。
……辺りを見渡すと、酷い有様が広がっていた。
激戦が繰り広げられたのだろう、そこら中に地面の抉れたあとや、焦げ跡などが残っている。
調査隊の面々は一人残らず倒れ伏しており、誰も戦闘が出来る状態ではない。
それに、周囲の木々は毒炎で燃え盛っており、辺りには毒霧が漂っている。火災の熱と相まって、ここに居るだけでもかなり危険な状態だ。
……そして、目の前に対峙しているのは、先ほど僕が足を斬り落としたはずのケルベロスだった。
だが、明らかに先ほどと様相が違う。
ケルベロスの三つの頭は、だらんと力なく垂れているし、その瞳には生気が感じられない。
そして頭の付け根の部分に、骨と皮だけの上半身を生やしたアンデッドが鎮座している。
その顔に、僕は見覚えがあった。
「クリオプレケス……! 完全に殺したと思ったんだけどな」
その顔は紛れもなく、僕が古城でバラバラに解体したアークリッチのものだった。
何らかの手段で逃げおおせたとでもいうのか。
頭部を真っ二つにされた、あの状態で?
▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼
【クリオプレケス】 レベル:70
性別:オス 種族:魔物、不死者 (アークリッチ)、悪魔
【スキル】
○影法師……自身の身代わりになってくれる影人形を生み出す。受けたダメージを代わりに引き受けるが、一度攻撃を受けると消滅する。 影は光のある場所では存在できず、また生成数には限度がある。
〇炎の刻印……任意の攻撃に、火属性の魔力を付与する事が出来る。
〇氷の刻印……任意の攻撃に、氷属性の魔力を付与する事が出来る。
〇雷の刻印……任意の攻撃に、雷属性の魔力を付与する事が出来る。
〇自然回復力向上……自然回復力が向上し、傷がすぐに治る。
〇猛毒ブレス……猛毒を含んだブレスを口から放つことが出来る。
〇吸血……他の生き物の血を飲むと、一定時間身体能力と魔力が向上する。
【備考】
融合状態。ゾンビケルベロスの肉体を借りて、融合している。
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僕が奴のステータスを再確認すると同時、胸の中をくすぐられるような感覚がきた。
クリオプレケスも、僕のステータスを確認したのだ。
「……ユニークスキル【解体】じゃと? 先ほど儂を一度殺してみせたのは、このスキルの仕業かァ!」
激昂するクリオプレケス。
それに応じるかのように、ケルベロスの頭がぎこちなく動き、こちらを捉える。
……あのケルベロスは、既に死んでいる。
恐らくソフィアとジェイコスさん達がやったのだろう。
だがケルベロスは死体が消失する前に、アンデッドにされた。
ゾンビケルベロスになり果てた後、どうやったのかクリオプレケスと融合して一つの魔物となったのだ。
現に、クリオプレケスとケルベロス。両方のスキルを併せ持っている。レベルまで上昇したようだ。
「一度は不覚は取ったが、次はそうはいかん! 今度こそそのふざけたスキルと共に、貴様をゴミ虫の様にすり潰してくれるわ!!」
死してなお、咆哮をあげる地獄の番人、ケルベロス。
それを操る悪辣なアークリッチ、クリオプレケス。
恐らく融合したことで、生前よりも格段に強くなっているだろう。
だが僕のやるべきことは変わらない。
「いい加減に終わらせよう」
奴が蘇ったというならば、今度こそ完全に解体してやる。
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