第6話 悪の組織とOJT(世話係)
「……で。拾ってきちゃったんですか? 段ボールの子猫を拾うみたいに? といっても、彼女はにゃんこじゃなくて獅子ですけどねww」
悪の組織、地下基地4階総帥の指令室にて。ソファに横たえた『白金台の百合獅子』の片割れ――
捨て猫だなんてあまりな物言いではあるが、
しかし総帥は、高らかに謳うように笑った。
「うっふふふ……! 最高じゃあないですか!」
「「……は?」」
「ああ、いやぁ……まさかこの手の勧誘活動で万世橋くんが先に成果をあげるとは。正直予想外でした。私はてっきり、泉くんの方が誰かしら先に連れて来るんじゃないかと――」
「なんの話ですか急に……」
「うっふふ。期待していなかっただけに、万世橋くんには話していませんでしたね。我々は悪の組織として魔法少女と対峙、日々資金調達や企業買収などに努めていますが、泉くんには別口で魔法少女の個人的な勧誘をお願いしているんです。要はスカウトですよ。『僕のもとでその力を振るってみる気はないか?』って……」
「え。ナンパ?」
「白雪さんや菫野さんもかな~~りの美少女なので、そういったお誘いに応じてくれる学園の
「あの、総帥……話が見えてこないんですけど……?」
首をかしげる白雪と俺に、「要はグッジョブです」と言って、総帥は両手を組んで楽しそうにこねこねさせる。
「【白百合の魔法少女】については、ドクトルをはじめとする幹部の皆さんにも共有し、こちらで捜索を進めてみます。粛清砲――【ラブ・サテライト】絡みとなると流石に危険なので、くれぐれも私の許可なく単独先行なんて真似はしないように。いいですか? でもってこちらの『白獅子』……
(うっそ……)
その「手取り足取り」って台詞。明らかにやらしい含みしか聞こえない感じだったけど……
俺は思わず反論する。
「俺が!? 無茶ですよ! 同世代の女子の面倒なんて見れるわけが……!」
「そ、そうですよ! どうして万世橋!? 紅乃さんの面倒なら、私も! 私もみますから!」
なぜか隣で焦りだす白雪が思わぬ加勢をしてくれるも、総帥はにこにこと俺にむかって笑みを浮かべたままだ。
「万世橋くん。おバカさんですか? こんなラブの予感がする機会、私が見逃すはずないでしょう?」
「「ら、らぶ……!?」」
「いやいや、だって。紅乃さんと俺はほぼ初対面みたいなもんで、ラブなんて微塵も――」
「シャラップ。総帥命令です。白雪さんはどうかわかってください。これも組織の総戦力をあげる為なのですよ。心配せずとも、あなたのパートナーマスコットは万世橋くん。契約がある以上その事実は変わりません。それに、万世橋くんは少々朴念仁が過ぎるところがある。もう少し女子の扱いに慣れて、気の利いた甘い台詞のひとつでも吐けるようになるべきだとは思いません? ほら、想像して――」
そう言って総帥はおもむろに立ち上がり、妖艶な仕草で長い黒髪を耳にかけると、白雪の耳元で囁いた。
――『白雪。今日は寝かせないぞ……』
「!?!?」
「――とか。言われてみたいと思いませんか?」
「ふぇっ……! ふぇぇっ……!? 万世橋が、そんなこと……!?」
「言う日が来るかもしれません。私の作戦に従うのならね♪」
「はわ……はわわ……」
「え? なに? なんて言われたの?」
総帥のウィスパーボイスが聞こえなかった俺を置き去りにして、なぜか盛り上がるふたり。白雪はちら、と赤面したままこちらを見た。そしてぼそりと……
「…………いいかも」
「だから、何が?」
そんなこんなで、俺は紅乃さんこと『白獅子』のOJTこと指導役に任命されてしまったのだった。
「「どうしよう……」」
まさかの総帥と声がハモって、見つめ合う。
総帥は端正な顔に世にも楽しそうな笑みを浮かべ。
「紅乃さんの闇堕ち衣装はどんなのにしましょうか!! いくら男装女子に一定数の需要があるとはいえ、せっかくの金髪碧眼……美人さんなんだからこのままじゃあもったいないですよねぇ?」
あー……コレ。絶対エッチなやつ着せられるやつじゃん……
俺は心の中で謝った。
ごめん、紅乃。
誘拐してごめん。(色んな意味で)
せめて、『男子オンリー! 新
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます